未病ケアで健やかに

会員誌『カラフル』にて連載のコラム。
健やかな日々のために知っておきたい知識を、
「未病学」の権威、福生吉裕先生が教えてくれます。

2018.12.11

ごっくん不全

  •  朝の外来が始まりました。最初に診察室に入っていらしたのは、山本佐知子さん(仮名・62歳)でした。
     「咳が止まらないのです。それに熱も37度2分あるようで。いつもは35度なのですが、風邪ですね」と一方的に病名を告げられてつらそうでした。
     「では、胸を出して」。条件反射的に聴診器を当てたのですが、どうも音が変なのです。早速、レントゲンを撮りますと、左胸に白い枝のような影が見えます。
     「いつから調子が悪いのですか?」すると一昨日、温泉旅行に行かれてからの長い物語を話された後、お水を飲んだ後におかしくなったことを聞き出しました。どうやら、山本さんは水を飲む機会が多く、むせて気道に水が入ったことがあったとわかりました。「ごっくん不全」です。

    ごっくん不全
  • 誤嚥性肺炎が増えている

     “ごっくん”――、食べ物を飲み込むという行為は当たり前のようで、実はけっこう複雑なメカニズムがかみ合って成り立っているのです。
     ノドという食道と気管に通じている狭い空間の中で、流動性の水、非定型性固形物の食物、それに鼻から入る空気の峻別を瞬時に正確に行わなければなりません。最新の進んだAIもお手上げの超メカニズムがノドにはあるのです。考えてみればスムーズにゆくのが不思議です。
     この部分の総合調節は脳が司っており、そこからの神経で7つの筋肉をコントロールしているのですが、残念なことに高齢になるに従って筋力が落ち、この飲み込みに関与する7つの筋肉も萎縮して協調作用に乱れが生じてくるのです。また、脳卒中で脳神経機能に障害があると、時には夜寝ている間に唾液が自然と気管支に入ってしまう場合もあります。この脳神経と7つの筋肉の連係に不具合が生じたことで起こる誤嚥が原因の肺炎を、誤嚥性肺炎といいます。
     現在、日本人の死亡原因の第3位は肺炎です。高齢患者の肺炎を種類別に調べたデータによると、なんと80歳代の約8割、90歳以上では9.5割以上が誤嚥性肺炎と報告されています。つまり、後期高齢者の肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎だと言えます。

  • ツバメのように

     誤嚥の「嚥」の字は口偏に“燕”という字を書きます。ツバメは口をぱくぱくと顔一杯に広げ、虫などもするりと飲み込みます。このツバメにあやかって「嚥」という漢字がつくられたのでしょうか。ツバメが誤嚥したとは聞いたことがありませんね。

    ごっくん診断
  • ごっくんリハビリ

     ノドの筋肉は鍛えることができます。それが「ごっくんリハビリ」です。
     首を前後にゆっくりと振る、回す。口を開き、舌を思いきり前、左右に突き出す。寝てヘソを見ながら唾液を飲み込む。各5~10回ぐらいを1セットとして、毎日朝夕に行ってください。根気よく続ければ、ちりも積もれば山となる、です。
     また、気道の反射力を高めるために、とっておきの“福生式誤嚥防止運動”をご披露しましょう。「ノック式胸骨叩打法」といいます。食事前に胸骨をポンポンポンと軽く10回ほど叩くだけです。咳が出るぐらいで止めます。胸骨の下にある気道の粘膜に刺激を与え、反射でむせる力を鍛えさせるのです。お待たせしました。それでは美味しい食事をゆっくりお召し上がりください。

福生吉裕(ふくお・よしひろ)

日本未病システム学会理事長。(一財)博慈会老人病研究所所長。
少子高齢社会における未病ケアシステムの構築を提唱している。専門は「高脂血症」「動脈硬化」「認知症」。
現在は『未病と抗老化』(博慈会老人病研究所)編集長。
著書に『見た目で病気が分かる』、共著に『セルフ・メディカ』『未病息災』など多数。

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