欧先生の診察室

会員誌『カラフル』にて連載のコラム。
日々の暮らしの中で気になる症状や、季節の変わり目のお悩みに
佐々木欧先生がやさしくアドバイスしてくれます。

2023.12.05

脳卒中ってなあに?

  • 高血圧と糖尿病で通院中のBさん(70歳、女性)。お友達が脳梗塞(のうこうそく)で入院になったとのこと。いつもの診察のついでに、どういったことに気をつければよいのかと相談がありました。

  • Q.脳梗塞は、脳卒中とは違うのですか?

    Dr. 脳梗塞と、脳出血(くも膜下出血など)をあわせて脳卒中と呼んでいます

    脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破裂して脳内に出血する脳出血とを合わせて、脳卒中と呼びます。どちらも脳の血行が急に悪くなり、酸素や栄養を届けられなくなることで脳の機能に問題が起こります。脳出血の場合は、出血によって周囲の脳が圧迫されてダメージを受けてしまう場合があります。

  • Q.どうして脳梗塞は起こるのでしょうか?

    Dr. 動脈硬化や特定の不整脈などを背景に生じた血栓が引き起こします

    過剰なコレステロールが血液中にあふれて全身の動脈に付着して塊を形成します。すると、その周囲に炎症を起こすため動脈は硬く狭くなり、徐々に血行が悪くなります。塊の一部が千切れて血液中に流れ込むと血栓ができますが、これが脳内で起こると脳梗塞を起こします。
    心房細動という不整脈があると、心臓内に血栓が作られます。また、抜歯後に口の中の細菌が心臓に感染し、血栓が生じる場合もあります。これらの心臓内の血栓がはるばる脳まで運ばれて、脳血管が詰まり脳梗塞を起こす場合もあります。

  • Q.どうして脳出血は起こるのでしょうか?

    Dr. 動脈瘤(どうみゃくりゅう)が破裂して出血する場合が大部分です

    動脈瘤は動脈硬化を背景に生じます。古くなったゴムホースのように、血管のしなやかさが失われてもろくなった箇所が血圧に耐えきれずに膨らんでできる場合が多いといわれています。また、生まれつきの血管の異常によってできる場合もあります。
    これらの動脈瘤は、通常の血管に比べて血管の壁が薄くて弱いため、長期間にわたって血流や血圧による負担がかかると徐々に破れやすくなります。

  • Q.脳卒中になる人は多いですか?

    Dr. 男女ともに、70代以上に多くみられます(右図)

    令和2年の調査では、日本の脳卒中の患者数は146.2 万人でやや男性に多く、70代以上が男性の約7割、女性では約8割を占めました。日本人の脳卒中の死亡率は、かつては世界でも群を抜いて高く、日本人の死因の第1位でした。高度経済成長期以降、予防や治療の発達で減少し、近年では死因の第4位です。一方で、後遺症で介護が必要となる原因として、認知症に次いで第2位を占めています。

  • Q.どういったことが脳卒中のリスクとなりますか?

    Dr. 生活習慣病や喫煙などです。低栄養は脳出血のリスクとなります

    脳卒中は、数十年来の動脈硬化を経て起こることが多いため、動脈硬化のリスクが脳卒中のリスクにもなります。高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、過体重、習慣的な飲酒などがリスクとしてあげられます。
    一方で、栄養不足から血液中のタンパクやコレステロールが不足していると、脳出血のリスクとなります。これは、血管の健康を保つには、材料となるタンパク質や脂質が欠かせないためです。コレステロールは悪い側面ばかり強調されがちですが、少なすぎても病気につながりますので、適度に保つことが大切です。

  • Q.脳卒中にはどういった症状がありますか?

    Dr. 急に起こった激しい頭痛や、しゃべりにくさ、顔や手足の麻痺(まひ)などがあります

    顔や手足などの、片側だけが急に動かしにくくなったり、痺(しび)れを伴う場合もあります。歩いていても片方に寄っていってしまったり、座っていてもバランスがとれずに傾いてしまったりといった症状が見られます。呂律(ろれつ)が回らなくなったり、むせてしまうこともあります。
    くも膜下出血の場合には、突然殴られたような激しい頭痛が出現したり、意識状態が悪化することがあります。舌やのどの筋肉が麻痺すると舌がのどの奥に落ちてしまい、大きないびきをかいて眠っていて、揺り起こしても昏睡(こんすい)状態で反応が見られない場合もあります。

  • Q.脳卒中を疑う場合には、どうすればよいですか?

    Dr. 救急車を呼んで、すぐに大きな病院を受診しましょう

    脳卒中の初期には、死にかけている脳の領域が見られ、早期に治療することで復活できる可能性があります。治療は、時間との勝負になりますので、いち早く適切な病院を受診することが大切です。神経内科や脳外科があってCT やMRI といった検査のできる大きな病院を目指しましょう。意識がない、片側の手足が動かない、しゃべることができないなど、明らかに様子がおかしいときは、迷わず救急車を呼びましょう。

  • Q.脳卒中の予防のために、生活で心がけるとよいことはありますか?

    Dr. バランスのよい食事や、適度な運動、睡眠です

    小松菜やブロッコリーといった緑黄色野菜には、カリウムやカルシウム、マグネシウムといったミネラルや、食物繊維が豊富に含まれており、血管の健康に役立ちます。特に朝食のタンパク質が不足しがちですので、卵や豆腐、かつお節や納豆、牛乳やチーズ、ヨーグルトなど、手軽に取れるタンパク質を常備しておいて、一緒にとりましょう。
    減塩や禁煙を心がけて、ストレスをためないことも重要です。納豆は、 血液をサラサラにするお薬の「ワーファリン」を飲んでいる場合は食べてはいけませんのでご注意ください。

  • Q.脳梗塞後は、リハビリが大切でしょうか?

    Dr. 状態が落ち着き次第、リハビリに主軸を移すことが大切です

    回復期・リハビリテーション病院のほうがリハビリの内容が充実しているので、病状が落ち着き次第、転院をする場合が多く見受けられます。
    日常生活での動作が一番のリハビリとなります。麻痺や言葉の出にくさがみられても、日常生活を問題なく送れるまで回復できる場合も少なくありません。使うことで機能回復しますので、退院後もあきらめずに続けることが大切です。
    主治医の先生にも相談して介護保険の申請や、見直し申請の相談をしましょう。自宅のバリアフリー化も欠かせません。費用の補助を受けられる場合もあります。担当のケアマネージャーさんや、地域包括支援センター、市区町村の福祉課にご相談ください。

  • Q.家族として、どういったことに気をつければよいですか?

    Dr. 退院後にはご自分が杖になった気持ちで寄り添ってください

    退院後も、日常生活のなかでのリハビリで少しずつ機能の回復は続きます。使わないと失われますので、ご家族は助けすぎないことも大切です。リハビリは、できなくなった自分と向き合う辛い時間です。根気強くお声がけしながら、回復の道のりを少しずつ歩んでゆくのをそばで見守ってあげてください。

  • 高血圧や糖尿病の治療が、脳卒中の予防にもつながっているのですねと納得したBさん。
    だんだん足腰も弱ってきているので、今のうちから自宅のバリアフリー化についても考えてみますといって、処方箋を受け取って帰ってゆきました。

佐々木欧(ささき・おう)

医師。東大病院で長年アレルギーやリウマチ(膠原病)の診療に従事した。
現在は秋葉原駅クリニックで内科全般の診療を手がけている。
生活のなかで実践できるセルフケアの開拓や患者さんの不安を軽くできる、やさしい医療を目指している。

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