法律コラム

2012.11.21

「成年後見の検討」:第3回目

暑い夏も終わり、徐々に秋も深まりゆく今日この頃ですが、皆様、如何お過ごしでしょうか。
さて、今回は「成年後見の検討」の第3回目になります。過去2回につきましては、成年後見人等の選任手続きの概略と個別案件につき若干述べて参りました(バックナンバーを見ることができますので、是非ご一読下さい。)。
今回は、「成年後見人の仕事は何か」ということにスポットを当ててQ&Aへと進めて参りたいと思います。

私は、先日家庭裁判所で父親の成年後見人に選任されましたが、食事の世話や介護等もする必要がありますか? Q1:私は、先日家庭裁判所で父親の成年後見人に選任されましたが、食事の世話や介護等もする必要がありますか?

A1:成年後見人の仕事は多岐に亘りますが、家庭裁判所に選任されてからの仕事を順追って記してみますと、具体的には下記のようなものとなります。

①財産目録を作成する
家庭裁判所で成年後見人に選任されてから、1か月以内に本人の財産状況等を明らかにした財産目録を提出しなければなりません。

②今後の予定を立てる
本人の意思に従い、今までの生活状況、経済状況に応じた暮らしができるように、財産管理、介護、入院契約の要否等につき今後の計画を立て、それに必要な収支に関する予定を立てます。

③本人の財産を管理する
本人の預貯金を管理し、収支を記録します。

④本人に代わり種々の契約を締結する
介護サービスの利用に関する契約や施設への入所契約をはじめ、医療契約の締結、財産の処分契約等、種々の契約を本人に代わって締結します。
しかし、本人の財産の保護の観点から、事前に家庭裁判所の許可を必要とする場合がありますので、注意が必要です。

⑤一定の時期に家庭裁判所に業務状況を報告する
家庭裁判所の求めに応じ、成年後見人として行った仕事の報告をしなければなりません。

このように、成年後見人の仕事は、本人の財産管理や契約等の法律行為に関するものに限られており、ご質問のような食事の世話や介護等の仕事は、成年後見人の仕事ではありません。

ただ、あなたはご本人の子供さんですから、親族として食事の世話等をされる場合もあるでしょうが、それは成年後見人としての職務ではありません。

成年後見人の職務に期限や任期等はあるのでしょうか?また、自由に辞任はできるのでしょうか? Q2:成年後見人の職務に期限や任期等はあるのでしょうか?また、自由に辞任はできるのでしょうか?

A2:成年後見人には、任期や期限はありません。しかし、本人が病気等から回復し判断能力を取り戻した場合や、本人が死亡した場合には、成年後見人の仕事は終了することになります。
また、一旦成年後見人に選任されますと、自由に辞任することはできませんが、正当な事由がある場合には、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます。

正当な事由がある場合とは、例えば成年後見人が遠隔地に転勤になったとか、成年後見人自身が大病を患った、といったような場合です。このような場合には成年後見人としての職責を果たすことができなくなりますので、家庭裁判所の許可を得たうえで辞任することができます。

今後認知症が進行して成年後見人選任という事態に及んだ時のために、今のうちにしておくべきことはありますか?Q3:私は永らく心臓病を患っており、更に近頃は認知症のため、物忘れがひどくなっています。そこで、今後認知症が進行して成年後見人選任という事態に及んだ時のために、今のうちにしておくべきことはありますか?ちなみに私は独り者で、兄弟は皆高齢です。

A3:あなたの認知症が進行し、成年後見人が選任されれば、あなたに関する医療契約やそれに伴う医療費・入院費の支払い等は、成年後見人がその職務として行うこととなります。

しかし、心臓手術等の必要が生じた場合に、親族でない成年後見人に医療行為の同意権はない、とするのが実務の取扱いです。

A1.でも述べましたが、成年後見人の仕事は、本人の財産管理や契約等の法律行為に関するものに限られますので、本人の身体に強制を伴う様な事項に同意を与える権限は、成年後見人には基本的にありません。

あなたにご家族がいらっしゃるのであれば、その人達に利益相反等があり、家族による代理判断が不適切とみなされない限りは、家族の同意で手術を進めるのが一般的です。

しかし、あなたのような、身寄りのない方に手術の同意が必要な場合には、同意を与える人がおらず、医療現場は混乱することも考えられます。

一言で医療行為といっても、危険性の少ない軽微なもの(インフルエンザの予防接種、一般的な投薬、骨折の治療など)から生命を左右するような手術(今回のあなたの心臓の手術など)もあります。

前者の場合には、仮に成年後見人が同意を与えたとしても、ほとんど問題にはならないでしょう。しかし、後者のような場合には、成年後見人に同意権はありませんので、結果的に家庭裁判所の判断を仰ぐことになるでしょう。 そこで、現在の実務においては、本人(成年被後見人)の「事前指示」が有効であるといわれています。

すなわち、本人が判断能力を有しているときに、医療行為に関して、文書で医療の内容の指示や手術の同意をしておき、更には手術の同意をする代理判断者を指名しておくのです。このような事前指示をしておけば、緊急を要する医療現場の事務も成年後見事務もスムーズにゆくのではないかと思います。

司法書士
渡辺 拓郎
渡辺拓郎事務所 代表
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