法律コラム

2012.04.26

贈与・財産分与手続 死因贈与や財産分与が認められるケースについての具体的考察

読者の皆様、こんにちは。
ゴールデンウィークも間近に迫り、家族旅行等の計画に余念のない方も多いのではないでしょうか。
さて、第8回目の「暮らしに役立つ法律コラム」では、「贈与・財産分与手続」について、3項目のQ&Aをアップさせて頂きたいと思います。

贈与・財産分与手続 死因贈与や財産分与が認められるケースについての具体的考察Q1:私は、自分には借金はないのですが、商売をしている親友に頼まれて借金の連帯保証人になっています。その親友が、長引く不況でどうも商売がうまくいっていないらしく、最近は連絡も取れなくなりました。妻とは、結婚して25年になるのですが、この際万一に備えて、自宅の土地・建物を妻に贈与しておこうかと思っているのですが・・・。

A1:婚姻期間が20年以上となる配偶者から、居住用不動産の贈与を受けてその人の居住の用に供した場合は、贈与税の申告を条件として最高2,000万円の税控除が受けられます。あなたの場合は、これにあてはまりますので、通常は問題ないわけですが、他人の連帯保証人になっている場合は、慎重に行動する必要があります。連帯保証人であるあなたが、債権者の利益を害することを知って財産を処分(妻への贈与)した場合には、その債権者から詐害行為として取り消されることがあるからです。
ところで、普通の贈与ではなく、離婚した配偶者への財産分与として財産処分がなされた場合には、最高裁の判例では、債権者がその処分を取り消すことができないことになっていますが、離婚する意思もないのに離婚して財産分与した場合には、今度はその離婚が「偽装だ」として争われることになります。従って、やむを得ず保証人になる場合にはくれぐれも慎重を期すことが必要です。

贈与・財産分与手続 死因贈与や財産分与が認められるケースについての具体的考察Q2:私は、夫と結婚して30年。夫には不満だらけでしたが、専業主婦として会社を経営する夫を支えてきました。子どもたちもそれぞれ結婚して独立したので、この際、夫と離婚しようかと思うのですが、夫名義の財産はほとんどなく、夫が経営する会社の名義になっています。
(1)この場合、私は夫から財産分与を受けることができないのでしょうか?
(2)また、私がこつこつ貯めてきたヘソクリがもし夫に見つかった場合、その貯めたお金はどうなりますか?

A2:(1)あなたの夫と、その経営する会社とは、法律的には別人格であり、あなたの夫が経営する会社は、あなた方夫婦から見れば第三者ということになりますので、その第三者名義の財産を離婚による財産分与でもらうことはできません。
しかし、たとえ財産が夫の会社名義になっていても、その財産が夫婦で永年協力して築き上げられたものであり、会社の株式の保有状態や経営状態から見て、経営者の個人経営であるならば、財産の管理方法や税金対策のために会社名義にしてあるだけで、会社の財産イコール夫の財産とみなされる場合があります。この場合、実質的には夫名義の財産といえますので、財産分与は受けられると考えられます。たとえば、会社名義ではあるが事業用としては一切使用されていない不動産を売却してその代金をもらうことが可能なケースもありますので、あきらめることなく一度、弁護士・司法書士・税理士等に相談されてみてはいかがでしょうか。

(2)ちなみにヘソクリも夫婦で協力して貯めたものと解されますので、財産分与の際にはその額も協議の対象になると考えられます。

贈与・財産分与手続 死因贈与や財産分与が認められるケースについての具体的考察Q3:死因贈与とはどういうものですか? 遺贈や普通の贈与とはどう違うのでしょうか?

A3:死因贈与とは、「自分が死んだら○○をあげる」という内容の贈与契約で、あげる側の人の死亡により効力が生じる点で、遺贈(あげる側の人が遺言によって単独でする財産の贈与)とよく似ていますが、死因贈与は、普通の贈与と同じく、あげる側の人(贈与者)ともらう側の人(受贈者)との間の契約である点や、遺贈のように、法律に定められた方式に従わなくてもよい点で遺贈とは異なっています。とはいえ、死因贈与は遺贈と似ているため、その性質に反しない限り遺贈と同じ扱いになっています。
たとえば、普通の贈与では、口約束だけして契約を書面にしておかなかった場合、一方的に撤回できます(ただし、すでにあげてしまった場合はダメですが・・・)が、契約を書面にしてあれば一方的に撤回することはできません。これに対し、死因贈与では、たとえ契約書があっても遺贈と同様、贈与者はいつでもこれを撤回したり内容を変更できるとされています。また、遺贈の場合の遺言執行者にあたる履行執行者(死因贈与執行者)の指定もできるとされています。
これに対して、死因贈与が遺贈と異なるところは、遺贈のように厳格な方式に従わなくてもよい点があげられます。遺贈は自筆証書遺言にしろ公正証書遺言にしろ、民法に定められている方式に従ってしないと無効になってしまいますが、死因贈与は、普通に契約する場合はもちろん、契約を公正証書にしておく場合でも、贈与及びその撤回・変更とも証人の立会が要らないことをはじめ、遺言のような厳格性、要式性にもとづく方式を取る必要はなく、一般の契約にもとづく公正証書作成の要領(当事者のみが公証人役場に出頭することで足りる)によればよいわけです。
あげる側が、勝手に贈与を撤回したり変更したりすることがなく、もらう側も決してその権利を勝手に放棄したりすることのないような信頼のおける者同士の間であれば、死因贈与契約を公正証書にしておき、その文面の中で、もらう側の人を死因贈与執行者に指定しておくのも後々の手続を簡便にする一方法かも知れません。

用語を含め複雑で難解ですので、一度、弁護士・司法書士・税理士等に相談されることをおすすめいたします。

司法書士
渡辺 拓郎
渡辺拓郎事務所 代表
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