法律コラム

2010.10.28

成年後見制度等の利用の検討

皆様こんにちは。本格的な秋となりましたが、その後お変わりございませんか。第1回目の「暮らしに役立つ法律コラム」はご参考にしていただけましたでしょうか。
さて、今回は第2回目ということで、第1回目の「1.成年後見制度等の利用の検討」のつづきをQ&Aの形式でやってまいりたいと思います。

Q1:成年後見制度を利用できるのはどのような人ですか?
また、体が不自由であれば成年後見制度を利用できますか?

A1:成年後見制度は、加齢等の理由により、判断能力が不十分となった人を保護するためのもので、判断能力の衰えの程度によって、

  1. 成年後見(判断能力を欠く)
  2. 保佐(判断能力が著しく不十分)
  3. 補助(判断能力が不十分)

の3類型があり、最終的には家庭裁判所が本人の状況に応じて決定します。
判断能力がまったく衰えていない高齢者や身体障害者は、この制度を利用することはできません。しかし、判断能力に問題がなくても高齢や身体の障害のため、自分で財産管理をするのが困難であったり、不安に思ったりするのはよくあることです。この場合は、信頼できる人(弁護士等)と私的に委任契約を結んで財産を管理してもらうことになります(「任意の財産管理」といいます)。

Q2:今のところ、心身ともに元気ですが、もう高齢なので将来の財産管理に不安があります。何か良い方法はないでしょうか?

A2:前回及び今回Q1の前段で取りあげました成年後見制度は、認知症などで判断能力が衰えた後に利用する法定後見制度で、家庭裁判所が法定後見人(成年後見人・保佐人・補助人)を選任しますが、「今はまだ元気」という方のためにふさわしい制度として「任意後見」という制度があります。
この制度は、心身ともに元気なうちに信頼のおける人に任意後見人候補者(「任意後見受任者」といいます)になってもらい、将来自分の判断能力が衰えたときに家庭裁判所に申し立ててもらうと、任意後見監督人(※1)が家庭裁判所により選任され、自分が依頼した人がこの任意後見監督人の監督を受けつつ正式な後見人となる制度です。即ち、誰にどのようなことを頼むのか自分で決めることができるのです。この任意後見契約は、公証人(※2)の作成する公正証書により締結しなければなりません。

●任意後見監督人について(※1)
任意後見監督人は、家庭裁判所で選任される者で、任意後見人が契約どおりに後見事務をしているか否かを定期的にチェックする人です。
一般的には、弁護士や司法書士が選任されます。任意後見監督人は、家庭裁判所の監督を受けます。

●公証人について(※2)
公証人とは、民事に関する公正証書を作成し、私署した証書に認証を与える権限を持つ公務員のことで、公証人が執務する場所を公証人役場と言います。業務としては、遺言証書の作成の他、種々の契約についての公正証書の作成、会社等の定款の認証等が主なものです。この役場は、日本全国で300箇所くらいあります。日本公証人連合会のホームページをこのコラムの最後に記載しておきますので、ご参考にしていただければと思います。また、司法書士事務所にお問い合わせいただいても、最寄りの公証人役場を紹介してもらえると思います。

Q3:法定後見人や任意後見人になれば本人の財産を自由に管理・処分できるのでしょうか?

A3:法定後見人(成年後見人・保佐人・補助人)も任意後見人も本人の意思を尊重し、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない(「身上配慮義務」と呼ばれています)と定められており、本人の財産を管理・処分する場合においても極力本人の利益になるように努めなければなりません。
成年後見人等に就任すれば自分の思うがままに本人の財産を処分できると誤解されている向きがあるようですが、家庭裁判所は、何時でも法定後見人に対し事務の報告や財産目録の提出を求め、その事務や本人の財産の状況を調査することができ、また、法定後見人は、定期的に事務の報告書を家庭裁判所に提出しなければなりません。任意後見監督人も(家庭裁判所の監督のもと)何時でも任意後見人の事務の報告を求め、その事務や本人の財産の状況を調査することができます。もし法定後見人や任意後見人に不正行為や任務に適さない事情がある場合は、家庭裁判所によって解任されることもあります。
このように法定後見制度も任意後見制度も徹底して本人の保護を図って作られています。

司法書士
渡辺 拓郎
渡辺拓郎事務所 代表
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