2025.10.21
相続土地国庫帰属制度について
今夏の暑さは格別でございましたが、彼岸を過ぎてからは、日中はまだ暑さを感じる日もありますが、朝晩は過ごしやすくなりました。
さて、皆様方におかれましては、いかがお過ごしでございましょうか。
本編を持ちまして、15年近く執筆させていただきました私の「法律コラム」も、無事最終回を迎えることができました。長い間のご愛読、感謝申し上げます。
私の拙文が、皆様方に少しでもお役に立てれば、という思いで執筆して参りましたが、いかがでしたでしょうか。
さて、相続土地国庫帰属制度につきましては、3年程前に、所有者不明土地の問題を解決するための制度を本コラムでお話しさせて頂きました際に、一度触れましたが、当時はこの制度がまだ施行されていませんでした。しかし、令和5年の4月に施行されて以降、この制度が多く利用されていると聞いておりますので、事例形式にして再度お話ししたいと思います。
Q1.私は、現在都市に住んでおりますが、亡くなった父から相続した土地と古い建物が、地方の農村部に
あります。しかし、空き家になっている上、土地も荒れており、近隣から苦情が出ております。
そこで、「相続土地の国庫帰属制度」というものがあると、友人から聞いたのですが、この土地と
建物を国に買い取ってもらうことは可能でしょうか。
A1.相続土地の国庫帰属制度というのは、令和5年4月27日より開始された制度で、国に管理負担金を支払うことによって、相続した土地の所有権を国に引き取ってもらうことが認められました。
それまでは、相続物件が相続人の住所地から離れていて、相続人が利用することがないような場合であっても、相続した土地の所有権を国に引き取ってもらえる制度は全くありませんでした。最近は、昨年4月1日から相続登記が義務化されたことと相まって、この制度に関する相談件数が急激に増加しており、国庫帰属が承認されるケースも増加しているようです。
但し、「相続土地」という様に、建物は含まれていないので、この制度を利用する為には、建物を取り壊し、滅失登記も完了して、初めてこの制度を利用できるということになります。
ただ、以上の手続を経るには、結構な金額の出費が伴いますので、現実的ではないかと思います。また、隣地との境界の争いがあるような場合には、尚更国庫帰属は困難ではないかと思われます。
Q2.それでは、Q1の様なケースでは、どの様に対処したら良いのでしょうか。
A2.国庫帰属が難しい場合でも、全く方法がないとは言えません。
例えば、自治体に寄付する、あるいは、民間人や不動産会社に土地・建物を買い取ってもらうことが可能な場合もあるかも知れません。
建物を取り壊すには、費用がかかりますが、古い建物であってもリフォームして使いたいという人が出てくる可能性もありますので、取り壊す以外の方法がないかどうか検討されるのも良いのではないでしょうか。
Q3.私の相続した土地・建物は、近隣との境界に関しては問題ないのですが、建物はかなり老朽化して
おり、リフォームはほぼ不可能ではないかと思います。
そこで、建物を取り壊して、滅失登記も完了させたとして、その後の手続はどうしたら良いので
しょうか。
A3.確かに、空き家状態が長期化しますと治安上の問題も発生しますし、雑草等が生い茂ると近隣の苦情も予想されます。斜面の土地であれば、災害等の発生による責任問題に発展する可能性もあります。また、固定資産税を払い続ける必要もあります。
そこで、紙幅の関係で簡略とはなりますが、手続の方法を記したいと思います。
(1)まず、相続土地の国庫帰属の承認申請書を、その不動産を管轄する法務局の本局に提出します。(支局や出張所では扱っていません)
(2)申請書が受理されますと、法務局の担当者による書面審査および実地調査が行われます。
(3)申請が承認されますと、法務大臣・管轄法務局の長による承認がなされます。
(4)承認通知および負担金通知が送付されます。30日以内にその負担金を納付しますと、土地は国庫に帰属するという経過をたどります。
以上、駆け足となりましたが、お分かりいただけましたでしょうか。
不明な点がございましたら、まずは、お近くの法務局の本局にお問い合わせをされたら宜しいかと思います。
お体くれぐれもご自愛下さい。
