法律コラム

2021.10.19

所有者不明土地について②

ようやく新型コロナウイルスの感染拡大「第5波」が収束した様に感じられ、新たな生活様式の模索も始まっていますが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。
さて、前回は、最近問題となっている「所有者不明土地の問題」解決の対策として、幾つかの制度の見直しや創設が行われることとなったこと等をお話ししましたが、今回は、その中の不動産登記制度の見直しについて、お話ししたいと思います。

所有者不明土地について

Q1.不動産登記制度の見直しにより、相続登記の申請が義務化されると、罰則が設けられるのですか。

A1.不動産登記法の改正により、相続登記が義務化されることになりました。この改正法は、令和3年4月28日の公布から3年以内の施行が予定されています。
この改正により、不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならなくなりました。
例えば、遺言によって不動産を相続した場合、遺言者(被相続人)が亡くなり、かつ、遺言によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
また、遺産分割協議によって不動産を取得した場合は、その協議の日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
そして、正当な理由なしに、この相続登記の申請を怠った場合には、10万円以下の過料を支払わなければならない、という罰則が設けられています。

Q2.相続登記を怠ったことによる罰則が設けられるとのことですが、相続登記の手続の負担を軽減してもらえる制度はあるのでしょうか。

A2.今回の不動産登記法の改正では、「相続人申告登記」という制度が新設されました。
これは、遺産分割協議がまとまらず、すぐに相続登記ができない場合に、相続人が、登記官に対して、登記名義人の法定相続人であることを申告する制度です。
この申告により、A1.の相続登記の申請義務を履行したものとみなされ、登記官は職権で申告者の住所や氏名を登記することになります。
但し、これは「相続登記そのもの」ではなく、あくまでもその不動産の登記名義人が死亡したことを公示するだけのものですので、通常の相続登記の様に、相続人の持分割合(誰が何分の1取得したか、という割合です)は記載されません。
そして、この申告の後に遺産分割協議が成立すれば、遺産分割協議によって不動産を取得した相続人は、協議の日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

Q3.その他に、登記手続を簡素化してもらえる制度はあるのでしょうか。

A3.「遺贈」(遺言によって相続財産を無償で贈与するものです)がなされた場合、遺贈による所有権移転登記は、これまでは、被相続人(遺言者)の相続人全員(遺言執行者がいるときは遺言執行者)と、受遺者(遺贈を受ける人)が共同して申請することとなっていました。
しかし、これでは相続人が多数いるが遺言執行者がいないという場合に、非常に手続が煩雑になります。
そこで、「相続人に対する遺贈」の場合に限り、受遺者が遺贈による所有権移転登記を単独で申請できることとなり、登記手続の簡素化が図られています。

Q4.登記簿から登記名義人の死亡が確認できれば、相続登記の必要があるか否かが非常に分かりやすくなると思いますが、その様な制度は設けられたのでしょうか。

A4.今回の不動産登記法の改正により、以下の制度が認められることとなりました。
登記官は、住基ネット等の公的機関から、登記名義人の死亡等の情報を職権で取得して登記に表示することができることとなりました。
これにより、登記簿から登記名義人の死亡の有無が確認できることになります。
但し、相続登記の義務が免除されることにはなりませんので、注意して下さい。

Q5.Q&Aの4までの相続登記とは別に、所有権登記名義人の住所変更登記も義務化されるとのことですが、これにも罰則があるのですか。

A5.所有権登記名義人の住所変更登記も、今までは申請義務はありませんでした。
そのため、不動産を売却することになって所有権移転登記を申請する場合や、金融機関から融資を受けることになって抵当権や根抵当権の設定登記を申請する場合に、所有権登記名義人が転居していて、現在の住所が登記簿上の住所と違っている場合に、その「前提」として申請するのが一般的となっていました。従って、住所変更登記だけ単独で申請するということは、これまでは殆どなかったのです。
しかし、この改正により、所有権登記名義人が住所(会社の場合は本店住所)を変更した場合には、その変更の日から2年以内に所有権登記名義人住所変更の登記を申請しなければならなくなりました。
そして、正当な理由なしに、この登記申請を怠った場合には、5万円以下の過料を支払わなければならない、という罰則が設けられています。
なお、この改正については、相続登記の場合と異なり、令和3年4月28日の公布から5年以内の施行が予定されております。

Q6.相続登記と同様に、住所変更登記についても、より簡素化された手続でできる様になるのでしょうか。

A6.個人と会社等の法人の各々について、新たな制度が設けられました。
(1)個人の場合
① 今後、個人が新たに不動産登記を申請する際には、氏名・住所の他に、生年月日等の「検索用情報」を申し出ることが義務化されます。但し、この申し出がなされても、生年月日が登記簿に載ることはなく、以後は法務局に検索データとして保管されることとなります。
② 登記官は、この検索用情報を使って住基ネットに照会を行い、所有権の登記名義人の氏名・住所の異動の有無を調べることができます。
③ そして、登記官は、②で取得した情報に基づいて、登記名義人の意向確認と承諾を得て、職権で住所変更の登記を行うことができることになりました。

(2)法人の場合
① 各法人に割り振られている会社法人等番号は、これまでは法人名義の不動産についての登記事項ではありませんでしたが、今回の法改正により、登記事項に追加されました。
② 登記官は、法務局の法人・商業登記システムから、不動産登記システムに、名称や本店を変更した法人の情報の通知を行い、この情報に基づいて、職権で変更登記を行うことができることになりました。

以上についてはまだ施行されていませんので、現時点(令和3年10月)では不明確・曖昧な点もございますが、方向性としては、ここに申し上げた様に変更されることと思われます。

次回も、引き続き所有者不明土地の問題の解決の対策についてお話ししたいと思います。
皆様、くれぐれもご自愛下さい。

司法書士
渡辺 拓郎
渡辺拓郎事務所 代表
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