法律コラム

2021.08.24

所有者不明土地について①

新型コロナウイルスの感染拡大は、下げ止まりどころかリバウンドが顕著となっている中、ワクチン接種も次第に進んでおりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
さて、これまで4回にわたって民法の相続に関する規定の改正点についてお話して参りましたが、今回は、最近問題となっております「所有者不明土地」の問題についてお話ししたいと思います。

所有者不明土地について

Q1.所有者不明土地とは、どの様な土地ですか。

A1.所有者不明土地は、法務省ホームページにおいては、

① 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
② 所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地

と定義付けられています。
近年、この様な土地が増えており、その総面積は、2016年の時点で九州全体の面積に匹敵する程のものになっています。

Q2.そこまで所有者不明土地が増えてしまった原因は、どの様なものでしょうか。

A2.この様な土地ができてしまう原因としては、次の点が挙げられます。

(1)まず、これまでは、「相続が発生すれば必ず相続登記を申請しなければならない」という義務付けがされておらず、相続登記を申請しないと罰金等のペナルティを課せられるということはありませんでした。
ところが、その結果、遺産分割協議を行おうにも相続人全員が集まるのが難しい、相続人の間で遺産分割協議をまとめるのが面倒、さらには相続登記の費用がかかるのが煩わしい、等といった理由から、結局相続登記が申請されずに放置されてしまい、気が付けば何世代も経過してしまっている、という事態が生じることになるのです。
例えば、先祖代々の旧家に両親のBさんCさん夫婦と同居しているAさんが、父のBさんが亡くなったので相続登記を申請しようと思って登記簿謄本を取り寄せると、自宅不動産の名義人はBさんではなく、Aさんの祖父のDさんでもなく、Aさんの曽祖父のEさんのままになっていた、という様なことがあり得るのです。
そうなりますと、相続人の数がねずみ算式に増えることになりますから、もはや誰が所有者なのか分からなくなってしまいます。

(2)次に、近年の都市部への人口移動と、それに伴う地方の人口減少・高齢化が挙げられます。
都市部への人口流入は、地方の人口減少と過疎化・高齢化を招きます。その結果、地方を中心に、土地の所有意識や土地の利用のニーズが低下することになり、そのことが、相続が発生しても相続登記が申請されずに放置されるという事態を助長することにつながっているのです。

家系図

Q3.所有者不明土地が増えると、どの様な問題が生じるのですか。

A3.問題点として挙げられるのは、次の様な点です。

(1)まず、所有者の探索・特定に膨大な時間と費用と労力が必要となることが挙げられます。
先程のA2.(1)の例で申しますと、Aさんの曽祖父のEさんの出生まで戸籍を遡って特定した後に、Eさんの配偶者と子(Aさんの祖父のDさんも含まれます)の戸籍を調べて、Eさんの相続人を特定することになります。そして、Dさんの様に既に亡くなっている人が居る場合には、その配偶者や子(Aさんの父のBさんの代となります)の戸籍をたどって、相続人を特定していくことになります。
しかし、Aさんの祖父のDさんが何人兄弟だったのか、Dさんの兄弟に各々何人の子(Aさんの父のBさんの代ということになります)が居るのか、さらにはDさんの兄弟の子の中にも既に亡くなっている人がいて、その子の代(Aさんの代ということになります)になっている人が何人居るのか、ということを考えますと、相続人が最終的に相当な人数になることは容易に想像できます。
さらに、就職や結婚により、郷里を離れて生活している相続人も多いと考えられます。
その結果、誰が所有者となるのか、相続人を探索して全員を特定するためには、膨大な時間と費用と労力を要することになってしまうのです。

(2)次に、土地の管理や利用に必要な合意形成が難しくなることが挙げられます。
上記の例で申しますと、Eさんの名義となっている不動産はAさんを含めて相当な人数が共有することになると考えられます。
しかし、共有者が多数の場合は、共有土地の管理や利用についての意見がまとまらず、合意形成が難しくなる可能性が高く、特に上記の例の様なケースでは、相続人相互間での面識がほとんどないという人も居るかも知れませんから、合意形成は一層難しくなるでしょう。
さらに、共有者の人数以外にも、問題点があります。と言いますのは、共有者の中の1人が住民票上の住所に住んでおらず、所在不明となっている場合には、その1人の所在不明者の同意がないと、共有土地全体を売却することができないとされているからです。
この様な所在不明者が居ると、管理や利用に必要な合意形成は非常に難しくなってしまいます。

(3)さらに、これらの問題点が生じますと、所有者不明土地は、管理もされないまま放置されてしまうことが多いと言えます。
ところが、その結果、土地が荒れ放題となり、台風等の災害の際にこの様な土地から土砂崩れ等の二次災害が発生する危険があり得ます。
また、所有者不明土地が放置されますと、高速道路の建設等の公共事業や、災害からの復旧・復興事業をスムーズに進めることができなくなります。
その上、その様な土地を購入したいと考える人は居ないでしょうから、民間での不動産取引も成立しないことになります。
こうして、所有者不明土地は、有効利用できないまま放置されることが多くなるのです。

Q4.所有者不明土地の問題は非常に深刻であることは、以上の説明で分かりましたが、その解消に向けての対策はあるのでしょうか。

A4.既に発生している所有者不明土地の円滑な利用と、所有者不明土地の新たな発生を防ぐという観点から、民法や不動産登記法の改正に加えて、相続土地国庫帰属法が制定され、令和3年4月28日にこれらが公布されました。今後、2年から5年を目途に、順次施行されていくことになっています。 大まかに言いますと、次の3点が柱となります。

(1)不動産登記制度の見直し
これは、次の様な変更を行うものです。

① 相続登記の義務化
(A2.(1)でもご説明致しましたが、現時点では義務とされておりません。)
② 所有権登記名義人の住所変更登記の義務化
(これも、①と同様に、現時点では義務とされておりません。)
③ 相続登記の簡素化・合理化

(2)相続土地国庫帰属制度の創設
相続によって土地の所有権を取得した人が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させ、「土地を手放す」制度を認める、というものです。

(3)民法の規定の見直し
新たに民法に次の様な制度を盛り込むものです。

① 所有者不明土地・建物の管理制度の創設
② 共有不動産の利用の円滑化を図る制度の創設
③ 相続の開始から長期間経過した後の遺産分割の見直し

各々の制度の詳細については、次回から数回に分けてお話していきたいと思います。
皆様、くれぐれもご自愛ください。

司法書士
渡辺 拓郎
渡辺拓郎事務所 代表
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