法律コラム

2021.04.20

配偶者居住権について②

新型コロナウイルスの感染拡大は下げ止まりが感じられる上に、変異株の感染も拡大の気配が感じられ、さらには花粉症のシーズンとなり、例年以上に体調管理に非常に気を遣われているのではないかと存じますが、皆様は如何お過ごしでしょうか。
さて、本コラムにおきましては、約40年ぶりに大きく改正された民法の相続に関する規定、及びこれと関連する新しい制度について、前回までお話しして参りました。今回のコラムで扱うテーマは、この民法の改正によって新しく設けられ、令和2年4月1日から施行されている「配偶者居住権」についてです。昨年10月20日に掲載しましたコラム(配偶者居住権について①)の事例のQ&A1~4に引き続いて、同様の形式でお話ししたいと思います。

1.「配偶者居住権」について

(事例)

私の夫(X)が亡くなりました。
相続人は、妻の私(Y)と長男(Z)の2名です。
相続財産は、Xと今まで住んでおりました自宅の他は、預貯金があります。
自宅の評価額は2000万円、預貯金は2000万円です。
なお、Zは結婚して独立して生活しています。
(前回(2020.10.20)に引き続き同じ事案をご紹介します。)

配偶者居住権について②

Q5.配偶者居住権が認められるのは、どの程度の期間ですか。

A5.民法では、原則として、配偶者の終身の間と定められています。つまり、原則は、配偶者が亡くなるときまでとなります。
しかし、「遺言」や「遺産分割協議」、「家庭裁判所の審判」によって、これより短い期間を定めることもできるとされています。

Q6.配偶者居住権の注意点・問題点は、どの様なものがありますか。

A6.まず、配偶者居住権は、相続開始時に、被相続人名義の建物に居住していることが要件となります。従って、相続開始時に別居していた場合は認められませんので、注意して下さい。
次に、配偶者居住権は、法律上の婚姻をしていることが要件です。従って、内縁関係にとどまる場合には適用されませんので、注意して下さい。
さらに、配偶者居住権は、登記をしなければ、第三者に対抗することができませんので、この点にも注意が必要です。

問題点としては、配偶者居住権が、配偶者のためにのみ認められた特殊な権利であることから、売却したり、他人に賃貸したりすることができない、ということが挙げられます。つまり、一度配偶者居住権が設定されると、配偶者は自宅に住み続けなければならなくなります。高齢となって老人ホームへの入居を検討しようとしても、配偶者居住権のみを売却して入居費用を捻出することはできないことになりますので、注意が必要です。
但し、その場合には、設定された配偶者居住権の登記を抹消してから自宅を売却することができます。その売却代金は、このケースでは自宅の所有者となっていた長男のZが取得することになりますから、配偶者のYは、Zから売却代金の一部(居住権の価値の部分)の譲渡を受けて、老人ホームの入居費用を確保することになると考えられます。この点については、2020年10月20日掲載コラム(配偶者居住権について①)のQ2.A2.の部分を参考にして下さい。

2.「配偶者短期居住権」について

Q1.配偶者短期居住権は、配偶者居住権と何が違うのですか。

A1.配偶者居住権は、前述の様に、「遺言」、「遺産分割協議」、「家庭裁判所の審判」のいずれかによって設定され、取得する権利です。
これに対して、配偶者短期居住権は、相続開始時に、配偶者が被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には、次の期間、その建物(居住建物)を無償で使用する権利が発生する、というものです。

(1)配偶者が居住建物の遺産分割に関与するときは、
①相続開始の日から6か月経過する日
②居住建物の帰属が確定する日

のいずれか遅い日までの間

(2)居住建物が第三者に遺贈された場合に、その第三者から配偶者短期居住権の消滅の申し入れがされた日から6か月間

Q2.なぜ配偶者居住権とは別に配偶者短期居住権が認められることになったのですか。

A2.従来から、最高裁判所の判例において、「配偶者が、相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合には、原則として、相続開始後も、遺産分割までは配偶者に無償で使用させるという被相続人の同意があったものと推認する」とされていました。
しかし、被相続人が第三者にこの居住建物を遺贈していた場合には、この推認がされないことになります。遺贈を受けた第三者から明渡しを請求されると配偶者は直ちに出て行かなければならず、配偶者の保護に欠けます。
そこで、配偶者が被相続人所有の建物に居住していれば、この様な場合であっても、最低6か月間は配偶者の居住権を認めることとして、配偶者の保護を図ることとしたのが、配偶者短期居住権の制度なのです。

Q3.配偶者短期居住権を主張するときの注意点は、どの様なものですか。

A3.まず、被相続人所有の建物に相続開始時に居住していたこと、法律上の婚姻をしていたことが必要である点は、配偶者居住権と同じです。
次に、配偶者居住権と異なり、登記して対抗要件を備える必要はないとされています。配偶者居住権と比べると、認められる期間が短いためです。
さらに、配偶者が配偶者居住権を取得できた場合には配偶者短期居住権は消滅する、ということです。明らかに配偶者居住権の方が強力な権利だからです。

相続の規定の改正については、今回までとさせて頂き、次回からは、別のテーマでお話しさせて頂きたいと思いますので、お楽しみに。

皆様、どうぞくれぐれもご自愛下さい。

司法書士
渡辺 拓郎
渡辺拓郎事務所 代表
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