年金コラム

2016.02.17

障害年金について

みなさんこんにちは、社会保険労務士の土屋です。今回もみなさんにとって大変関心の高い年金についてお話をさせていただきます。

今回は障害年金についてです。障害年金は病気やけがで働けなくなったり、日常生活を人の手を借りなければ、通常通り行うことができなくなった場合、その病状の程度が一定の基準(認定基準)に該当したとき障害年金が支給される制度です。

病状が認定基準に該当するかどうかは、認定日時点での病状の程度で判断されます。また、障害年金の年金額はその病状の程度に応じて1級から3級(3級に該当しない程度の傷病には障害手当金が支給される場合があります。)までの年金が支給されます。

●障害基礎年金(初診日が国民年金加入中または20歳前の場合等)

1級年金額 975,100円(平成27年度、2級年金額×1.25倍)

2級年金額 780,100円(平成27年度)

※18歳未満の子(障害のある場合は20歳未満)がいる場合、子一人につき224,500円(第2子まで、第3子以降は74,900円)が加算される。

●障害厚生年金(初診日が厚生年金加入中の場合)

1級・2級の場合、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が支給。障害厚生年金は認定月までの厚生年金の被保険者期間中の標準報酬によって計算。被保険者期間が300月に満たない場合には300月で計算。

※受給者に配偶者がいる場合には加給年金(224,500円)が加算される。

3級の場合、障害基礎年金はなく障害厚生年金のみ。(585,100円の最低保障額あり)

 

認定日は初診日から1年6ケ月経過した日(また症状が固定した日)

認定日とは初診日(障害年金を請求する原因となった傷病で初めて医療機関を受診した日等)から1年6ケ月経過した日か、またはその傷病が治った日(傷病が固定したと判断できる日)です。

病状の程度が障害年金支給の認定基準に該当するかどうかは、障害年金を請求する傷病の専門医である主治医に書いてもらう診断書と本人(または家族等)が書く申立書等で日本年金機構が総合的に判断します。

認定基準については以前このコラムでも書かせていただきましたので、詳細は以前のコラム(2013.2.20「障害年金の請求手続きについて」)も参照していただければと思います。

《注》傷病によっては1年6ケ月経過後ではなく下記の要件に該当した日が認定日となります。

例:(一部です。詳細は日本年金機構のHP等で確認ください。)
●人工骨頭または人工関節を挿入置換した場合は挿入した日が認定日となります。

●心臓ペースメーカー、ICD(植込型除細動機)または人工弁を装着した場合は装着した日が認定日となります。(診断書は装着後2~3ケ月後の現症のものが必要)

●人工透析を行っている場合は、透析を受け始めてから3月経過した日が認定日となります。

(初診日から1年6ケ月以内の場合です。既に初診日から1年6ケ月経過している場合は透析開始で即事後重症請求が可能になります。)等々

※個々の傷病の認定基準については、日本年金機構のHP等で確認してください。

http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html
 

障害年金の請求では初診日が大事

以前のコラムでも書きましたが、障害年金を請求する際には初診日が大事です。なぜなら、障害年金請求をする条件として、初診日時点での保険料納付要件が問われます。納付要件を満たしていなければ、年金受給はできません。また、初診日に加入していた制度によって受給できる年金が国民年金なのか厚生年金(または共済年金)なのかが決定されることになります。したがって、初診日が厚生年金加入中ではなく、国民年金加入中(または20歳前)ということになれば、病状の程度が2級以上に該当しない限り、障害年金が受給できないということになります。

障害年金請求の為の納付要件とは、初診日の前日において初診日の属する月の前々月から遡って前1年間に未納がないこと、つまり前1年間保険料を納付しているか、または免除の手続きをしていることが必要です。ただし、この条件は請求する障害年金の初診日が65歳前でかつ平成38年3月31日まであることが前提です。もし、この要件に該当しない場合には初診日時点で初診日の属する月の前々月までの全被保険者期間に3分1を超える未納期間がないこと、つまりは全被保険者期間の3分の2以上が保険料納付済期間か免除期間であることが必要です。

初診日が比較的最近でまた初診の医療機関も現在の医療機関と同じであるというケースであれば、初診日の確定も比較的容易ですが、初診の医療機関と現在の医療機関が違う場合や、初診日が数年以上前等になると初診日を確定することがなかなか大変な作業になります。

なぜならば、医療法上はカルテの保存期間は5年までとされていますので、5年以上前に初診日がある請求手続きの場合、初診の医療機関にカルテが残っておらず、初診日の証明(受診状況証明書)を書けないと医療機関からいわれる場合もありますし、そもそも初診の医療機関が廃院している場合もあります。

カルテが残っていない、または医療機関が廃院しているといった理由の為、初診の証明が取得できない場合は、次に受診した医療機関の証明を取得することによって請求は可能です。もし、2番目の医療機関でも証明が取得できない場合には、3番目に受診した医療機関の証明を取得するというように一番古い医療機関の証明を取得しなければなりません。ただ、初診の医療機関の証明が取得できず、2番目、3番目の医療機関の証明というようになる程、初診日の証明が不確定なものとなる為、結果として初診日が確定できないという理由で不支給になる可能性が高くなります。

特に精神障害の請求の場合、初診が20年以上遡る場合や20歳前という場合もありますので、自分でこうした手続きの準備をして請求するということはかなり大変な作業になります。

☆障害年金の相談をされる場合は社会保険労務士に相談ください。社会保険労務士は都道府県の社会保険労務士会等でも紹介してくれます。また、インターネット等でも検索をして探すこともできますし、下記の対面相談や電話相談も利用できます。

※東京都社会保険労務士会年金相談センター https://www.tokyosr.jp/entrance/consulting/annuity/

※NPO法人障害年金支援ネットワーク http://www.syougai-nenkin.or.jp/

 

平成27年10月から、20歳前障害請求以外の請求についても第三者証明のみで請求可能に

先にお話しした通りカルテの保存期間が医療法上は5年と定められているにも関わらず、障害年金の請求者(特に精神障害)に5年以上前の初診証明を求めるのは合理的ではないのではないかという議論もあり、平成27年10月からは20歳前障害以外の障害年金の請求についても初診の証明(受診状況証明書)が添付できなくとも、複数の第三者証明を添付することによって、請求することを認めることになりました。なお、平成27年10月前に改正前の条件で請求をされた方で、結果的に初診証明が確定できない為、不支給となった方についても、今回の改正により複数の第三者証明を添付することによって再度請求することができます。

なお、第三者の証明は親族ではない方でなければなりません。また、複数の第三者の証明の他に初診日について参考となる書類(診察券等)を添付することによって提出することが認められます。なお初診日に受診していた病院の医師や看護士などが第三者証明を行った場合には参考資料(診察券等)を添付する必要はありません。

※1 第三者証明は学校の担任・友人・近隣の方・医師・看護士等の医療関係者等といった第三者が初診日頃に直接請求者の病状をみて認識するか、また家族から初診時の受診状況を伝え聞く等によって証明します。(伝聞した時期が請求から5年以上前にあることが条件。5年未満は原則として証明にはならない。)

※2 20歳前障害年金の請求に限っては、従来から受診状況証明書を添付できない場合でも複数の第3者証明のみで請求することができました。

 

平成27年10月から初診日が一定期間にあると認定できる場合は本人申立日を認定可能に

また、初診日が一定の期間内にあると確認できる場合で、当該期間について、継続して障害年金を受けるための保険料納付要件を満たしているときは、審査の上本人申し立ての初診日が認められることとなりました。

●一定期間の始期に関する参考資料の例

・就職時に事業主に提出した診断書、人間ドッグの結果(発病していないことが確認できる資料)

・職場の人間関係が起因となった精神疾患であることを明らかにする医学的資料及び就職の時期を証明する資料・交通事故の場合は事故時の診断書

●一定の期間の終期に関する参考資料の例

・2番目以降に受診した医療機関による証明

・障害者手帳の交付時期に関する資料

 

裁定請求後の手続きについて

障害年金の請求書を提出後、その結果がでるまで早くても3ケ月程度(ケースによっては半年近くかかる場合もあります。)かかります。結果的に認定をされれば障害年金が支給となりますが、不支給となる場合も当然あります。その場合不服申し立て(審査請求)を行うことができます。不服申し立ての手続きは決定を受けた日から60日以内に管轄の厚生局(また請求手続き行った年金事務所等を経由)宛て文書(審査請求書)にて行います。(最初の申し立ては口頭でも受け付けされますので、事前に審査官等に不服申し立ての旨を伝え、後日文書を送付することができます。)厚生局は申し立てに対して審査官が審査を行い、容認・棄却・却下等の判断をくだします。もし、その決定に対して不服がある場合には、決定を受けてから60日以内に社会保険審査会(厚生労働大臣が任命した学識経験者等で構成)に対して不服申し立て(再審査請求)ができます。

障害年金が支給された場合、永久固定と認定されない限り、2~5年後に障害状態確認届を提出することになります。診断書を提出し病状が軽快していると判断されれば等級落ちまたは不支給となるケースもありますし、重篤になったと判断されれば上位等級に認定されることになります。この決定に不服があれば当然審査請求をすることができます。

また、不支給となった場合には再度裁定請求することも可能です。ただし、前回提出した診断書等の内容等に大きな違い等がない限り認定されるのはなかなか厳しい判断かと思います。決定された等級に不服がある場合(障害厚生年金請求で2級相当と思われるのに3級という裁定結果だった場合等)は原則として審査請求を行うか、決定後1年経過後でないと再度請求手続きをすることはできません。この手続きを額改定請求手続きといいます。ただし、1年を待たなくても、病状が明らかに上位等級と判断できる場合には1年を待つことなく額改定請求をすることができますが、それぞれの病状の程度によって請求できる場合が違います。詳細は日本年金機構のHPを参照ください。(精神疾患の場合はこの特例は該当しません。)

※障害状態確認届の提出で等級が同じだった場合はいつでも額改定請求は可能です。等級が下位等級に落ちた場合(または額改定請求を同時に行った場合)は1年経過でなければ額改定請求はできません。

 

最後に

障害年金(特に精神障害・知的障害)の決定に地域格差があるということが新聞等で話題になりました。全国の年金事務所で受け付けた障害厚生年金の請求についての審査は日本年金機構本部で審査を行っていますが、障害基礎年金の年金請求については事務センター単位で都道府県毎に審査を行っています。都道府県毎に請求を受理した請求数と支給決定数との割合をみると支給決定の多い都道府県と支給決定の少ない都道府県の格差がかなりあるという実情が問題になりました。

地域の違いによる社会生活状況や職員の対応の違い(請求受理数の違い等)等もありますが、障害認定の基準は全国共通ですから、都道府県によって支給決定数に格差があるということは確かに問題があります。こうした、問題に対して国は現在検討を行い精神障害・知的障害の認定基準のガイドラインを設定しようとしています。具体的には診断書の日常生活上の記載内容を数値化して一定の基準を満たした場合には等級該当にするということを検討しています。確かに数値を設定することはわかりやすくはなるのかもしれませんが、障害者の病状は個々によって違いますし、その方の生活状況もおかれた環境によって違います。診断書の記載内容に応じて一定の基準を決めればいいという方向だけで、見直しを進めることはしてほしくないと筆者は考えますが、皆様はどうお考えでしょうか。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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