年金コラム

2013.02.20

障害年金の請求手続きについて

みなさんこんにちは社会保険労務士の土屋です。
今回は障害年金の請求手続きについてお話しさせていただきます。最近年金相談の現場では障害年金の請求についてのご相談が増えています。特に最近では、うつ病等精神疾患によるご相談が増えています。障害年金のご相談の約半数が精神疾患(うつ病以外の知的障害や発達障害も含めて)によるものという数字もでているようです。不幸にして怪我や疾病により障害を負ってしまったとき、生まれながらにして障害をもっている方等々、障害の種類や程度は一人一人違います。ただし、障害を負ってしまったから、障害をもって生まれたから、それだけで障害年金が受給できるわけではありません。障害年金を支給する財源は皆様から納めていただいた保険料と国庫負担という税金です。当然のごとく受給する為には一定のルールがあります。すでに請求をされている方、相談をされようとする方、また、ないに越したことはないのですが、もし自分や自分の家族が障害をおってしまったときに困らないようルールを把握しておくことは大切なことではないかと思います。

請求するには初診日を確定することが大事

障害年金を請求する際には障害の原因となった傷病で初めて医者にかかった日(初診日といいます)を確定することが必要です。なぜなら、初診日に保険料納付要件を満たしていなければ請求することができません。具体的には下記の要件に該当するかしないかです。

  1. 初診日の前日において初診日の属する月の前々月以前の全被保険者期間に3分の1以上の未納期間がないこと(つまりは3分2以上が保険料納付済期間か保険料免除期間であること)
    学生特例納付の期間・若年者猶予特例期間は障害年金の受給要件をみる場合は資格期間とみなす。
  2. 1の要件を満たしていなくても初診日の前日において初診日の属する月の前々月以前1年間に未納期間がないこと。(65歳未満の人が対象、平成28年3月31日までの特例)

  ※1の要件で最初からみるのではなく、まず2の要件を満たしているかどうかをみる

昨年から国民年金の後納制度がスタートして3年間の時限措置として10年前までの保険料を遡って納付することができるようになりましたが、障害年金を請求する場合には初診日の前日までに保険料を納付していなければ対象になりません。したがって後納制度で保険料を納付しても初診日の前日までに納付していなければ障害年金は請求できません。医者から「あなたは障害年金の等級に該当する程度の障害ではないか。」といわれた後で納付して請求するという逆選択を防ぐという主旨でこのような仕組みになっています。

障害年金の受給金額について

障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金(※共済組合の方は障害共済年金)がありますが、国民年金に加入している。または20歳前障害の場合は国民年金から障害基礎年金を受給します。障害の程度によって1級と2級があります。金額は定額です。厚生年金に加入している場合は障害基礎年金に加えて障害厚生年金が受給できます。年金額は被保険者期間の標準報酬で決まります。等級は1級・2級・3級(3級に該当する場合には障害基礎年金は支給されません。ただし、最低保障額589,900円あり。)があります。また、障害等級の3級に該当しない場合でも障害手当金(一時金)に該当する場合があります。

なお、障害年金を請求する方のなかには在職中(厚生年金加入中)で老齢年金の資格期間である25年の資格期間を満たしていない方もいますので、厚生年金の場合だけですが300月(25年)以上の被保険者期間のない人については、被保険者期間が300月に満たない場合には300月みなしで年金額を計算してくれます。そのままの被保険者期間で年金額を計算してしまうと非常に低額な障害厚生年金額になってしまいますので、特例的に計算し支給することになっています。当然ですが、300月以上ある場合には実期間で計算されます。

障害基礎年金支給額

  • 1級:年金額983,100円(2級の1.25倍)
  • 2級:年金額786,500円
    受給者に18歳未満の子(障害のある場合は20歳未満)がいる場合、子一人につき第1子と第2子は226,300円、第3子以降は75,400円の加算。

障害厚生年金の計算式

基本額=(前期(~平成15年3月)+後期(平成15年4月~))×1.031×0.978
(前期)平均標準報酬月額×7.5/1000×加入月数(~平成15年3月)
(後記)平均標準報酬額×5.769/1000×加入月数(平成15年4月~)
※加入月数が300月に満たないときは300月みなしで基本額を算出

  • 1級:基本額×1.25倍(+加給年金(配偶者がいる場合)226,300円)
  • 2級:基本額(加給年金226,300円)
  • 3級:基本額(最低保障額589,900円)

障害の程度は障害認定日で決定される

障害年金の金額を決める等級は初診日から1年6ケ月経過した認定日で判断されます。具体的には初診日から1年6ケ月経過した日の認定日の症状を記載した医師の診断書等の必要書類を日本年金機構(以降機構と呼ぶ)に提出し、機構側で審査し等級を決定することになります。

初診日にかかった医療機関と認定日の診断書を書いてもらう医療機関が同じであれば、認定日の医療機関の診断書だけを提出すれば問題ありませんが、初診日にかかった医療機関と認定日の医療機関が違う場合や認定日から請求する日との間が1年以上あいている場合は両方の診断書が必要になることになります。また、疾病によっては1年6ケ月経過前に症状固定と医師に判断された場合には症状固定日が認定日となります。

【主な障害認定日の特例】

  • 人工透析療法を行っている場合は、透析を受け始めてから3ケ月を経過した日
  • 人工骨頭または人工関節を挿入置換した場合は、挿入置換した日
  • 心臓ペースメーカー、植込型除細動器(ICD)または人工弁を装着した場合は、装着した日(診断書は装着後2~3ケ月後の現症のものが必要)
  • 人工肛門または新膀胱の造設、尿路変更術を施術した場合は、造設または手術施行の日
  • 切断または離断による肢体の障害は、原則として切断または離断した日(障害手当金の場合は創面が治癒した日)
  • 脳血管疾患による肢体障害等であって、初診日から6ケ月経過後の症状固定日(初診日から6ケ月経過で一律障害認定となるわけではなく、診断書等に「症状固定」や「回復見込みなし」等の記載があれば、例外的に障害認定の診査が受けられるもの)

20歳前に初診日がある場合には20歳到達以降に20歳前障害を受給

国民年金への加入は20歳からですので、障害の原因となった傷病や疾病の初診日(健康診断等も含む)が20歳前にあると診断された場合には納付要件は必要ありません。20歳に到達して障害等級に該当する程度と判断されれば20歳前障害の障害基礎年金を受給します。

また、20歳前に就職し厚生年金加入中に不幸にして障害を負ってしまった場合、1年以上の加入期間がなくとも障害基礎年金と障害厚生年金が受給できます。


※納付要件は問われないが初診日は確定する必要がある。20歳前障害の場合は医証(医師の証明のある受診状況等証明書)が取れない場合でも複数の第3者の証明で初診日を特定して請求することも可能。

認定日請求ではなく事後重症請求となる場合

傷病や疾病の症状は人それぞれです。自分やご家族が障害年金を受給できる程度の重篤な状態になっているということがよくわからない場合や疾病の状態は徐々に悪化する場合がありますので自分は大丈夫だと思ってしまうケースがあるかと思います。そうしたケースの場合初診の時の診断書が取れないということもありえるかと思います。また、初診の時には障害年金の等級に該当するほどの重篤な症状ではなかったが、その後、症状が悪化して現在は障害等級に該当する状態になっているとなれば、障害年金の事後重症請求をすることになります。文字の通り事後重症請求ですから請求時から障害年金を受給します。認定日請求とどこが違うかというと認定日請求の場合には初診日が1年以上あいている場合、前項でも説明した通り認定日と請求時点での二つの診断書を提出し、疾病の状態がかわらずに障害等級に該当すると判断されれば、認定日の属する月の翌月から障害年金が受給できます(5年の時効があるので遡れるのは5年まで)。一方、事後重症の場合はあくまで請求時からしか年金は支給されません。

年金事務所で障害年金請求の相談をしたケースで初診日から請求時までの期間がかなりあいているケースの場合、初診日の診断書を提出できない場合がありますが、診断書を提出できないかわりに初診の医療機関で医証(受診状況私証明書等)をとってもらい提出します。こうしたケースの場合、初診日は医証で確定できますが、認定日での請求者の症状が判断できないので、請求時から支給する事後重症請求になることが多くなります。

障害の等級の判断基準は

障害年金の等級(1級・2級、厚生年金の場合は3級まであり)を決める判断基準は医師が書いた診断書と請求者が提出する受診状況申立書等の書類によって国(機構)が決定しますが、一番重要視されるのは医師の診断書です。特に重視されるのが請求書が日常生活を行う上でどの程度の制限を受けているかです。認定基準については個々の障害によって違いますが一般的な基準は下記の内容とされています。

等級 等級の具体的な程度

1級

身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度。「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」とは、他人の介助を受けなければほとんど身の回りのことができない。またはやってはいけない程度を意味します。

2級

身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度。つまりは必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度。

3級

労働が著しい制限を受けるかまたは著しい制限を加えることを必要とする程度。

最後に

障害年金の手続きは診断書が重要ですが診断書を医師に書いてもらう場合、保険給付の対象外ですので実費(5,000円から10,000円)を請求されます。また事後重症請求や初診日が特定できない場合には初診日を特定する医証が必要です。医療機関では昔のカルテは保存期間が過ぎれば廃棄されている場合やかかった医療機関がない、または廃院している場合もあります。そうしたことがあると年金事務所に何度も足を運ばなければなりません。障害者自身やご家族の方にとっては大変な負担です。そうした場合専門である社会保険労務士にご相談ください。実際の手続きを行う場合には費用がかかることになりますが、肉体的・精神的負担がその分なくなるわけですから、その分自分の病状の回復や安静を保つことができるのではないかと思います。また、下記のような全国組織での社会保険労務士による電話相談(無料)もありますのでぜひご利用くださればと思います。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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