年金コラム

2015.01.21

「年金WEB相談室」(8)「マクロ経済スライド」が新年度にいよいよ発動される?

新しい年がスタートして、早くもひと月が経とうとしています。
お正月と言えば、気になっている方々からの年賀状は届きましたか?
年賀状を書くタイミングは、年末の忙しさと重なり、なかなか大変だな~と思うのですが、元旦の朝に届いた年賀状を見るのは、やはりお正月ならではの楽しいひとときです。

仕事でお世話になった方々や縁あって出会った大切な方々とも、時間的、距離的あるいは経費的な制約などで親交を深める機会を持つことはなかなか難しいですね。
そんな隙間を埋めてキューピッド役をしてくれるのが年賀状かなと思います。
年賀状だけのやり取りで疎遠になってしまった方も、元気で過ごしていることがわかると、心に温もりを感じます。

旧交を温めるチャンスへの期待を抱きつつ、一枚ずつ丁寧に読み重ねていきます。  
はがきの文化は、メールやラインが普及しても格別です。
送って下さった方の温もりをそのままメッセージとして保存してくれますね。

さて、今回は、年金額の改定についてお話しましょう。

まだ、現在の段階で年金額そのものがいくらになるのかをお知らせすることはできません。
しかし、厚生労働省は、いよいよ年金水準を自動的に調整してゆく、「マクロ経済スライド」が発動されるであろうと予想しています。 
マクロ経済スライドとはどのようなものでしょうか?
将来の年金は、現在と比較すると約20%減となる見通しです。
実はこの年金水準の低下は「マクロ経済スライド」によって調整される結果です。
是非、この機会に年金額の調整の仕組みを知って、将来の生活に備えていただきたいと思います。

 

【質問1】
年金は、毎年度、金額が改定されるようですが、なぜでしょうか?
また、どのような仕組みになっているのでしょうか?

【回答1】

公的年金は、若い頃から保険料を納め、現役を引退する時から受給が始まり、終身受給することができるお金です。
老齢の年金の場合、受給期間は20年から30年という長い年月に及びます。
その間に起こる様々な経済や生活水準の変動に対応して、毎年度、年金額の改定が行なわれます。
この仕組みにより、年金は実質的な価値を保つことができるのです。
これは、公的年金にしかない機能です。

改定の指標は、毎年度の賃金や物価の変動率で、これらに応じて額が改定されることになっています。
賃金の変動に応じて改定されることを「賃金スライド」、物価の変動に応じて改定されることを「物価スライド」と言います。

新たに受給する年金額(新規裁定される年金)の改定は、「賃金スライド」によって行われます。
賃金には経済成長が反映されていますので、現役世代の生活水準の向上または低下分が、賃金スライドにより年金に反映されることになります。

また、既に受給している年金額の改定は、「物価スライド」によって行なわれます。
物価が上がれば年金額も上がる、下がれば年金額も下がるという仕組みによって、大きな経済変動があっても、年金の実質的な価値つまり購買力が維持されます。

なお、スライドがあるのは年金だけです。
死亡一時金等の一時金については、一回限りの単発の給付なので、物価スライドはしません。

ちなみに国民年金の付加年金は年金ではありますが、スライドの仕組みはありません。
その理由は、付加年金は、国民年金の第一号被保険者の独自給付であり、第一号被保険者の中で付加保険料を納付した人が、その期間に応じて受け取ることができるものです。
つまり、任意加入となっているため、強制加入の老齢基礎年金と異なり財政が積立方式になっているのです。積立方式は、保険料を積み立てて、運用し将来受け取るというものですので、経済変動に合わせたスライドの仕組みで年金額を改定することができないのです。

 

【質問2】
既に受給している年金、つまり今の受給者の年金は、物価の変動に応じて改定されるとのことですが、2014年度を振り返ると年金の改定率が+0.3%だったのに、実際には、年金額は減額改定されました。これは、なぜですか?

【回答2】

物価が上昇したにもかかわらず、年金が減額改定になったのは、「特例水準の解消」が行われたからです。

「特例水準」というのは、平成12年度から平成14年度までの間に、物価が下落したにもかかわらず、年金額をそのまま据え置いたために、法律通り減額改定をしていた場合の水準(本来水準)よりも、2.5%高い年金となっていた状態を言います。
金額にすると、なんと毎年1兆円の払い過ぎが生じていました。

この2.5%分は、「物価が上がる局面で年金を上げないという方法で解消すればよい」と、国は考えていました。
しかし、それ以後、日本はデフレ状態が続き、解消されないまま長い年月が経過しました。

平成24年になって、特例水準が続くことは、若い世代に負担を押し付けてゆくことに他ならず、このままではいけないということで、やっと解消の方向に動き出し、平成25年10月と平成26年4月で、各1%ずつ計2%を引き下げました。
そして、平成27年4月には、最後のー0.5%の調整が行われる予定で、これで特例水準が完全に解消されることになります。

ということで、平成26年度は、
0.7%(改定率)ー1%(特例水準解消のための減額率)=ー0.3%(実際の年金の変動率)
となり、年金は、減額改定されたのです。

この仕組みは、今年4月からの改定にも同様に適用されます。
物価は上昇しそうですが、同じ率で年金も上昇ということにはなりません。
特例水準のー0.5%の調整が行われるからです。

そして、特例水準が解消されると同時に、「マクロ経済スライド」が発動され、年金はさらにマイナスの調整が行われることになります。

 

【質問3】
特例水準の解消が完了したら、今度は「マクロ経済スライド」ですか!
言葉からして、難しそうですね。
年金はさらにマイナスの調整って、一体どういうことですか?

【回答3】

まず「マクロ経済スライド」の趣旨について説明しましょう。
公的年金は、賦課方式で運営されています。つまり、今の現役の人が納める保険料や税で、今の受給者の年金給付の費用を賄っているという仕組みなのです。保険料が積立てられ、年金の受給開始まで運用され、その金額を受け取るということではありません。

そのため、急速に進む「少子高齢化」が、大きな問題となります。
「少子」とは、保険料を負担する世代の人数が減ってゆくことで、保険料の徴収額が減少することになります。
また、「高齢」ということは、長生きする人が増えて、年金受給期間が長くなり、トータルの給付額が増えることになります。
このように収入が減り支出が増えるのでは、今までと同様の給付水準を保つことができなくなります。
そこで、賃金や物価の上昇局面では、「現役世代の人数の減少率+平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」を調整率として定め、賃金・物価等の上昇による年金額の伸びから、調整率を差し引いて年金額を改定します。
このようにして、給付水準を引き下げ、財政の均衡を保つことにしたのです。

この仕組みが「マクロ経済スライド」といわれるのは、改定率の考え方が「平均賃金に連動する仕組み」から「現役人口の減少分を含んだマクロの賃金総額に連動する仕組み」となったためです。

ところで、「マクロ経済スライド」の導入は、平成16年の財政検証で、このままでは、年金財政の均衡が保てないと見込まれたため行われました。つまり、ずいぶん前から、法律上では既に定められていたということです。

ではなぜ、今まで実施されなかったのかというと、理由は2つです。
1つ目は「マクロ経済スライド」による調整は、「特例水準が解消されない間は発動しない」となっていたこと、2つ目は、「デフレの時は、発動しない」となっていたため、現在まで一度も実施されていませんでした。

平成27年4月には、特例水準が完全解消され、物価もプラスの変動となる見込みとなったため、いよいよ、「マクロ経済スライド」調整の発動条件が整うことになります。

 

【質問4】
「マクロ経済スライド」ですが、もしも物価の変動率等が調整率より低かった場合は、年金額は、減額改定されるのですか?

【回答4】

具体的なケースで説明しましょう。

◆ 賃金・物価の伸びがスライド調整率よりも小さいケース

例えば、賃金(物価)上昇率が1%で、スライド調整率が1.2%だった場合は、年金額の改定はしないということになります。
というのも、物価上昇率1%-スライド調整率1.2%=ー0.2%となるので、スライドの自動調整をそのまま適用すると名目額がマイナスになってしまいます。
「マクロ経済スライドによる調整は、前年の年金額を下回らない範囲内で行う」という名目下限が設定されているので、年金額の改定はしないということになります。
このようなケースでは、スライド調整の効果も限定的になります。

◆ 賃金・物価が下落したケース

例えば、賃金・物価等の伸びがー1%で、スライド調整率が1.2%だった場合は、年金額の改定は、賃金・物価の下落分にとどまり、改定率はー1%になります。

このようにマクロ経済スライドに関しては、名目下限が設定してあること、デフレ下では発生しないことになっているため、その効果が十分に発揮できないという問題が生じています。
これでは、調整期間が長引き、次の世代へ負担が先送りされることになってしまいます。そこで、今後のマクロ経済スライドの発動要件について、名目下限の設定を撤廃することやデフレ下でもマクロ経済スライドによる調整を行うことが、検討されています。
常にマクロ経済スライドによる調整が行われることになると、年金は、賃金・物価等の上昇下落分の調整とは別に、必ずスライド調整率分をマイナスするという措置が取られることになります。

 

【質問5】
マクロ経済スライドの調整が行われると、将来年金はどのようになるのでしょうか?

【回答5】

マクロ経済スライドによる調整により、将来年金は、所得代替率が下がってきます。 
所得代替率とは、「現役男性の平均賃金の何%を年金世帯に支給するかという率」で、現在は62.7%です。

現在、現役世代の平均給料額(34万8,000円)の6割強(21万8,000円)が年金世代に渡されているということになります。

モデルとされる年金世帯は、夫が40年厚生年金に加入、妻は40年国民年金に加入していて、65歳から「夫の老齢厚生年金(9万円)+夫・妻の老齢基礎年金(12万8,000円)」を受け取る場合の額です(カッコ内の金額は、平成26年財政検証による額)。

所得代替率は、マクロ経済スライドによって調整されて、平成55年度には50%程度まで低下します。
つまり、今のモデル年金の額でいえば、17万4,000円に減額されるということになり、現在の年金額と比較すると約20%減ということになります。
これらのことを踏まえて、老後の生活についての備えをしてゆく必要があります。

注) 所得代替率の見通し等については、「年金WEB相談室」(6)公的年金の定期健康診断<年金の健康診断の結果が発表されました>問3問4をご参照ください。



社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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