税金・保険コラム

2019.07.23

50歳・独身・子どもがいない場合の生命保険の考え方

知っていた筈のことが、自分の全くあずかり知らないうちに変わっていて、驚くことがあります。歴史の教科書で足利尊氏の肖像だと習った絵が、「伝尊氏像」になっていた時がそうでした。逆に、変わっていても、さもありなんと思うこともあります。「生涯未婚率」という言葉もその一つです。

生涯未婚率というのは、人口統計学で使われることばです。50歳の時点で、それまで一度も結婚したことが無い(いったんは結婚したが、離婚や死別で現在は独身という人は含まない)人口の割合を指し、計算で導き出します。正確を期すならば、構成員全員が死亡した後で生涯一度も結婚しなかった人の数を数えるべきでしょうが、婚姻、出生、人口推移等の分析に使うには、それでは遅すぎてあまり役に立ちません。そこで、45歳~49歳の未婚率と50~54歳未婚率との平均を使うのが一般的です。

(なぜ1歳刻みではないのかというと、データを取る国勢調査が5年に1度だからです。また、なぜ50歳なのかというと、WHOが再生産年齢(女性が出産可能な年齢)を15歳 ~49歳としているところに基づいていると思われます。)

ですが、「生涯未婚率」という言葉は、「50歳を過ぎたら結婚することは無いと断定するような表現はおかしいのではないか」という意見を受けて、政府が使う言葉としては、今後「五十歳時未婚率」という言葉に統一していくのだそうです。(統計学の用語として定着しているので、当面は併記する場合もあります。)

これは、定年制度がほとんどの企業にあるのにもかかわらず、日本的雇用システムの特徴の一つであるとして使われてきた「終身雇用」という言葉と似ています。

実は、定年制は、奈良時代に制定された「養老律令」にもあるそうです。(757年施行)律は現代の刑法に当たり、13編目しかありませんが、令は30編目あります。そのひとつ、「選叙令〔せんじょりょう〕」(位階・官職の類別、叙位・任用の諸原則を定めた部分、全38条)の第21条にあたります。

第21条 官人致仕条 凡そ官人年七十以上にして、致仕聴す
(官人は年齢70歳以上になれば、致仕(=定年退職)を許可する。)

しかし、法令としては定年制があっても、実体としてはほぼ終身雇用と言っても良かったのではないかと思います。70歳の坂を越えられる人は、大勢はいなかったのではないでしょうか。

もちろん、1,200年も前の日本では、役人になるような家柄の人とただの農民とでは、きっと寿命は非常に違ったでしょう。

しかし、当時とは栄養や衛生状態が全く異なる現代でも、厚生労働省のデータでは、戦後の混乱期である1950年(昭和25年)に男性の平均寿命は58.0歳です。「もはや戦後ではない」と経済白書に謳われた1956年を経た1960年でも65.32歳、70歳を超えたのは1975年(昭和50年71.73歳)になってからです。(以上はすべて男性の場合)

話は元に戻って生涯未婚率ですが、1920年(大正9年)には男性2.17%、女性1.80%でしたが、2015年(平成27年)には男性23.37%、女性14.06%となっていて、2000年(平成12年)からずっと上昇し続けています。

では、50歳時点で独身、子どももいないという場合、生命保険はどのように考えれば良いのでしょうか。

生命保険には、大きく分けて3種類があります。養老保険、定期保険、終身保険です。

養老保険は保障期間が決まっていて、満期が来ます。満期には満期の保険金が出ます。(被保険者が生存していても保険金が支払われます。)他の保険よりも貯蓄性が高いので、保険料も一番高くなります。また、途中解約した場合も、満期保険金のために貯めていた分があるので、解約返戻金(戻ってくるお金)があります。

定期保険も、名前の通り一定期間だけが保障の対象になります。養老保険とは何が違うのかというと、満期の保険金というものはありません。満期が来たらそこでおしまいです。貯蓄性が無いので、保険料は一番安くなります。途中解約した場合は、まず解約返戻金はありません。

終身保険は、名前の通り保障期間は一生涯です。満期はありませんので、満期の保険金というものもありません。しかし、保険料は一生涯払うわけではなく、保険料払い込み期間が決められています。途中解約した場合、解約返戻金があるかどうかは、解約した時期によります。解約時期が遅いほど、解約返戻金がある可能性が高まります。

貯蓄性が高ければ保険料が高くなり、貯蓄性が低ければ保険料も低くなるという関係です。

家族のいる方は、これらが組み合わされたものに加入されていることが多いでしょう。子どもが幼くて配偶者の働き方に制限が出るであろうとか、進学のために学資が必要であろうという期間だけ、定期保険を終身保険に上乗せするという組合せが多いかと思われます。

逆に考えると、50歳の時点で独身で子どもがいないのであれば、終身保険単体に加入していれば十分だと考えられます。葬儀費用や家財の処理に使ってもらおうという考え方です。

あるいは、保険料払込期間の満了時に、年金(生きているうちに受け取る)に変えてもらう年金支払移行特約をつけて、老後資金として使うということもできます。この場合は、年金原資がいくらになるかは、契約日ではなく、年金に移行する日の基礎率を元に計算されます。そのため、移行日が近づいたら受取額を試算してもらうのが良いと思います。

(基礎率というのは、保険料を決める計算に使う三つの予定率、予定死亡率、予定利率、予定事業費率のことです。予定利率というのは、保険料は、保険会社が集めた保険料を運用して得られる予定の分を予め割り引いているので、その割引率のことです。予定事業費率というのは、予め見込んだ、事業運営に必要な諸経費のことです。)

独身の場合、死亡保険金の受取人を誰にしておくかが問題になります。特に残して上げたい人がいる場合や、諸手続をしてもらう人に残さなければならないと考える場合があるでしょう。

しかし、保険金の受取人は、一般的には配偶者や二親等以内の親族など、保険会社や保険の種類によって変わってきますので、確認する必要があります。

(親等は、家系図を描いてみて、本人からいったんその親に戻ってからいくつ離れているかを数えます。親なら一親等、兄弟ならいったん親に上ってから一つ下るので、二親等です。祖父母もやはり二親等です。甥姪なら、親に上って一親等、兄弟姉妹に下って二親等、さらにその子である甥姪に下って三親等となります。いとこなら、同様に数えて四親等になります。)

最後に、受取人を決めたらその方にその旨を伝えておくか、重要書類としてすぐ分かるようにしておくことも忘れてはなりません。

筆者の父親は物が捨てられない世代で、古い書類を大量に残していましたが、最重要の書類だけはすぐ分かるようにしてありました。オフィス用の書類整理棚(薄い引き出しがたくさんある)の引き出し部分に文字通り、「最重要」と書いた紙が貼り付けてあったのです。

社会保険労務士
小野 路子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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