税金・保険コラム

2015.12.16

保険の話

忘年会のシーズンですね。筆者が参加している自治会でも、毎年この時期に役員の忘年会があり、毎回様々な話題が飛び交います。数十年前、自治会が発足した頃は、その話の中心は住宅ローンや子育てでした。その後子供の受験、就職と話題が変化し、さらには子供に恋人がいないことを嘆き、ここ数年は孫自慢、自身の体の不調や健康に関する話題が増えてきました。
つまり、年代によって関心ごとや大切なものの優先順位が変わるということです。

保険につきましても、年を重ねるごとに何に対して保障を求めるかということが変わっていきますので、数年ごとに内容の見直しが必要になります。ですが、若い頃に保険を契約した方で、見直しの必要性をはっきりと意識している方はあまり多くないようです。

会社員の場合、保険の保障額が一番大きくなければならないのは、小さな子供がいて、配偶者が存分に働くことができない期間ではないでしょうか。

勤務中に病気に罹って働けなくなった労働者のために、会社が休職制度を設けている場合があります。休職制度とは、雇用契約している労働者からの労働の提供が無いにもかかわらず、会社に在籍することが許され、その間社会保険料の半額を会社が負担してくれるというものです。たいていの場合、勤務年数に応じた休職期間を定めています。

休職制度は法律で義務づけられているわけではないので、よほどの大企業でない限り、無給にしている会社がほとんどだと思われます。ノーワーク、ノーペイの原則です。しかし、無給でも、健康保険制度から傷病手当金が支給されるので、生活費の一部は補填される仕組みとなっています。この間治療に専念して、職場に復帰できるのがベストの流れです。

しかし、近年増えているメンタルヘルス不調の場合は、混乱が生じる場合があります。それは、本人には病識が無い場合が多いからです。(病識=自分で自分が病気であると自覚すること)

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例えば、会社側からメンタルヘルス不調を理由に休職を命じられた本人は、「復職可能という主治医の診断書があるから、会社は自分を復職させるべきだ」と主張するのですが、会社としては、その人のこれまでの勤務状態や態度がどのようであったのか、実態を知らない主治医の診断を鵜呑みにすることはできないでしょう。

また、元気が出たり落ち込んだりという気分の変調が激しいのもこの病気の特徴のひとつです。主治医の前では元気でも、職場復帰した後もその元気が続くとは限らないので、会社側が復職に懸念を抱くのも無理はありません。実際に、1ヶ月休職したのち、症状がまだ回復していないのにもかかわらず職場復帰した人が3ヶ月後再びダウンしてしまい、今度は半年休職して・・・という具合に、立て続けに3回休職した例があります。最初の段階で十分な休息を取らず、職場復帰を急いだため、かえって重症化してしまったのです。

労働者の健康については、労働安全衛生法によって、会社は産業医の勧告を尊重するよう義務づけられていますので、当然会社はその人に産業医との面談を要求します。さらには、就業規則において、会社の指定する医師を受診するように義務づけている例も多くなっています。会社はその人が本当に病気なのか見極めなければなりませんが、本人は病気ではないと確信しているので、主治医以外の診察を受け付けようとはしません。

さきほど、休職中は無給の場合がほとんどだということ、代わりに、公的保険制度である健康保険制度から、傷病手当金が支給されることも説明しました。しかし、本人が健康であると主張する以上、傷病手当金の受給どころか申請すら出来ません。名前の通り、病気やケガ等の治療のために働けない人のための制度だからです。民間の保険でも全く同じ事になります。

その結果、産業医や会社の指定する医師の受診は拒否し続けながら(服務規程違反を犯し続けながら生活費を得るために)、復職の要求はし続けるという不毛の行動パターンに陥ってしまうのです。

このように、せっかく労働者を救済するための制度があっても、利用できない場合があるのです。

ところで、ゴミ屋敷という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。ゴミを捨てることが出来ず、家屋の中のみならず、敷地いっぱいに積み上げて悪臭を放つため、近隣からの苦情が行政に寄せられるというのが、報道される典型的なパターンです。家屋の中がゴミでいっぱいというのは誇張ではなく、ゴミが床から山のように積み上がっているため、玄関ドアから中に入る際、ゴミの壁をよじ登るしかないほどなのです。

今どきは通販が発達していますので、家から一歩も出なくても買い物ができますし、買った品物は、いくらでも配達してもらうことが出来ます。しかし、容器や使い残しなどのゴミ出しは、自分でしなければなりません。ゴミ屋敷の場合、老齢、身体的病気等で決まった曜日や時間にゴミ出しが出来ないという事情がある場合もありますが、近所からごみをわざわざ集めてくるという場合もあります。(アメリカでも同じような問題が起きていて、このような人たちはホーダーと呼ばれています。)

後者はあきらかに精神に変調を来していることが疑われる状態ですので、苦情を言いに来た近所の人との話し合いも進みません。また、敷地内にある限り、法律的には住民の私有物ということになるので、保健所等の行政でも、簡単には撤去できないのです。

こういう問題の解決例として報道されたのは、NPO法人やボランティアの人が、繰り返しゴミ屋敷に通って、その住人と徐々に人間関係を築いてから、ゴミの撤去の許可を得たというものでした。同じ事を行政に期待しても、人的資源や予算の面等の事由により出来ないのが現状です。

非合理的に復職を求め続ける人とゴミ屋敷の住人には、ある共通点があります。それは、この人達が社会的に孤独な状況であることが多いということです。同居家族がいないだけではなく、友人関係も希薄、もしくはないことがあるようです。本人のことを心配して積極的に関わり、助けてくれる人がいないのです。

復職を求めて弁護士等の専門家を依頼するにしても、会社との雇用契約と同様、金銭を媒介とする契約関係ですので、やはり限界があります。家族や友人のように、その人の生活や人生全体を包括的に支援し続けてもらうわけにはいきません。

保険は公的なものも民間のものも大変役に立つ制度であり、準備しておくことは無駄にはなりません。それらは一種の資産ではありますが、モノに過ぎません。モノを使うには、ヒトが必要です。特に家族のいない場合は、温かい人間関係という最高の資産をいかに築き上げるかということが重要になってきます。

定年退職後は、会社での人間関係から切り離されます。何に対しての保障を求めるかを考え、保険の見直しをすることも必要ですが、会社以外の場でこれから築き上げる、人間関係という資産の見直しも、検討してみてはいかがでしょうか。

社会保険労務士
小野 路子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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