税金・保険コラム

2011.09.07

東日本大震災に関する生命保険の特例

東日本大震災の被災者の方、また心を痛めているそのご親戚、ご友人に心から哀悼の意を表します。

今回の災害による被災者の方について、生命保険業界が契約者のために行った主な取り組みをご紹介します。生命保険協会は、次のような取り決めを発表しました。

  1. 免責条項の適用除外
  2. 災害地域生保契約照会制度
  3. 保険料の払い込みについて(災害救助法適用地域の特別取り扱い)
  4. 迅速な保険金の支払い
  5. 未成者生保支援ネットワーク

1.免責条項の適用除外

免責条項とは、保険約款(保険の契約)のうち、「ある一定の条件のもとでは、生命保険会社は保険金を支払うことを免れる」という意味の内容が書かれた部分のことです。つまり、ある契約を生命保険会社と契約者が結んでいても、生命保険会社が保険金を受取人に払わなくても良いという例外規定の部分です。

一般的に、地震等の天災や戦争が起こった場合を、保険金支払いの例外としたり、保険金額を減額したりする場合があるという規定なのですが、今回の災害に関しては、日本で金融庁に登録しているすべての生命保険会社(親会社が外国の生命保険会社でも、日本国内で営業するためには金融庁から免許をもらうことが必要)が、この規定を適用せず、災害関係保険金・給付金を全額支払うことを決定しました。

詳細については、皆さんが契約されている生命保険会社の相談窓口にお尋ねになって下さい。このコラムの下部「参考」の社団法人生命保険協会Webサイトには、各社の相談窓口の電話番号一覧が掲載されています。

電話を掛ける前に、もしあればの話ですが、まず生命保険の契約書、保険約款、重要事項説明書(約款の中で特に大事な事柄を抽出して説明してある書類)、契約説明の時にもらったパンフレットとメモ用紙を用意することをお勧め致します。パンフレットをお勧めするのは、最初の説明はパンフレットの図解を見ながら受けることが多いので、自分がどういう部分に魅力を感じて契約したのか(どういう部分が自分にとって価値があると判断したのか)を思い出しやすく、質問すべき事柄を整理しやすいからです。

契約者が保険証券を紛失していても、生命保険会社には記録があります。証券がなくても本人確認ができれば、生命保険会社は保険金を支払うとしています。

2.災害地域生保契約照会制度

しかし、契約書やパンフレット以前の問題として、ご家族が契約していた生命保険会社がどこなのか分からないという場合もあろうかと思います。そういう場合も、いちいち47社すべてに問い合わせる必要はありません。そういう人のために、生命保険協会が生命保険各社に照会依頼をしてくれます。照会依頼のお申し込みは以下の窓口です。

生命保険協会「災害地域生保契約照会センター」
  • フリーダイヤル 0120-001731
  • 受付時間 月~金曜日(祝日を除く)9:00~17:00

ここに申し込むと、生命保険協会から生命保険各社に照会が行きます。その結果、どの生命保険会社にも契約がなかった場合は、その旨が生命保険協会から照会を依頼した人に連絡が行き、契約が見つかった場合は、契約がある生命保険会社から直接連絡が行きます。
ただし、契約があると確認できた場合でも、照会した人が生命保険金の受取人ではなく他に受取人に指定されている人がいるなどの場合は、プライバシー保護の観点から、照会した人に契約の内容について教えてもらえないことがあります。

同じく、プライバシー保護の観点から、照会を依頼できるのは、原則として、照会対象者(被災した人)の家族・遺族(配偶者、親、子、兄弟姉妹)に限られます。また、この照会対象は個人の生命保険契約です。

生命保険協会の他にも、生命保険協会地方事務室や生命保険各社でも、この制度について教えてもらえます。

3.保険料の払い込みについて(災害救助法適用地域の特別取り扱い)

「災害救助法適用地域の特別取り扱い」について

保険料払込猶予期間の延長

【1】保険料払込猶予期間の再延長 保険料の払い込みについて、災害救助法適用地域の方が生命保険会社に申し出れば、払い込みを猶予する期間を延長(最長6ヶ月間)されるという措置が3月にとられましたが、猶予する期間が更に3ヶ月間延長されました。実施済みの6ヶ月と合わせ、最長で平成23年12月末までの延長となります。

【2】期日までに猶予期間分の保険料全額払い込みが困難な場合 上記期日(12月末日)までに猶予期間(2月~11月)分の保険料全額の払い込みが困難な場合には、平成24年1月から継続して保険料を払い込むことにより、【1】の猶予期間分の保険料の払込期日は平成24年10月末日までとされました。

つまり、保険料の払い込みそのものが免除になるのではなく、払い込みの遅れによって保険契約が失効してしまうまでの期間が延びたということです。ちなみに、【1】の猶予期間分の保険料については、分割して払い込むことも可能です。

【1】保険料払込猶予期間の再延長について

(1)通常の保険料払込猶予期間
月払いの場合、翌月末までに支払いがないと保険契約が失効してしまいます。猶予は1ヶ月しかありません。


※画像をクリックすると拡大できます。

(2)最長6ヶ月の保険料払込猶予(3月に決定された現在実施中の特別取り扱い)
現在実施中の特別取り扱いでは、(1)と違い、保険契約が失効するまでに6ヶ月の猶予期間がもうけられました。


※画像をクリックすると拡大できます。

【2】期日までに猶予期間分の保険料全額払い込みが困難な場合について

(3)今回の措置(最長9ヶ月の払い込み猶予+猶予した保険料の払い込みに関する特別取り扱い)
2月分~11月分の保険料の支払いが12月まで猶予される【2】の特別取り扱いを利用しても、12月末までに払うことが難しい場合、来年1月から継続的に保険料を支払えば、さらに来年10月末まで猶予期間を延ばしてもらえます(今年12月分の保険料の猶予期間は、原則通り来年1月末日)。
分割払込が可能なので、来年1月に1月分の保険料+本年2月分の保険料を払い込むという具合にすれば、猶予されている今年2月分~11月分、計10ヶ月分の保険料を来年10月までに払い込むことができて、保険契約を失効させずに済みます。


※画像をクリックすると拡大できます。

災害救助法適用地域がどこかということについては、このコラムの下部「参考」の厚生労働省Webサイトで調べることができます。

4 .迅速な保険金の支払いについて

保険金だけでなく、各種給付金、契約者貸付金についても簡易迅速な支払いをすると生命保険協会が述べています。具体的には、受取人の申し出により、必要書類を一部省略する等、手続きを簡易化します。

5.「未成年者生保支援ネットワーク」について

「未成年者生保支援ネットワーク」は、保険金の受取人が未成年者で、東日本大震災により親やその他親権を有する者の全員を亡くしている(以下、震災孤児)場合に、生命保険金を適切に支払うことや未成年後見人選任申立手続、未成年者の財産管理、親族里親の認定手続等の法律的問題や震災孤児の養育について相談にのることを目的として、関係者による情報連携や支援のためのネットワークとして組織されました。震災孤児またはその後見人等が生命保険に関して相談すれば、生命保険金の支払いに必要な手続きの相談先やその他の震災孤児への支援事項等に関する相談先等の紹介をしてもらえます。

平成23年7月1日現在の未成年者生保支援ネットワーク参加者は以下の通りです。

  • 福島県中央児童相談所
  • 岩手弁護士会
  • 仙台弁護士会(仙台弁護士会は、仙台市内だけではなく、宮城県内に事務所を持つ弁護士が所属する弁護士会)
  • 岩手県保健福祉部児童家庭課
  • 生命保険協会
  • 生命保険協会加盟生命保険会社47社
参考
社会保険労務士
小野 路子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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