税金・保険コラム

2011.03.02

ライフステージと生命保険(1)

人の一生には、誕生、入学、入社等のいろいろな節目(イベント)があります。イベントを細かく分ければ、誕生、お七夜(命名式)、お宮参り、お食い初め等々という儀式になります。ごく一般的なざっくりした区切り方だと、誕生から幼児時代、学生時代、職業人として働く期間、無事定年退職となったらその後の自由時間というものが考えられます。節目と節目をつないだ期間が階段状に進むイメージです。

ライフステージイメージ

女性の場合だと、ここに結婚、妊娠、出産、子育てが加わります。植物のつるがらせん状に絡まるようなイメージでしょうか。どの段階でも起こりえますので、大学卒業後最初に就職した会社の新入社員研修の途中で、出産祝いをもらった男性を知っています。学生結婚していたのです。

ライフステージイメージ(女性)

今時は、キャリア教育と言って、一生涯の職業生活というものについて考える授業が大学のカリキュラムに取り入れられています。しかし、昭和の時代は、一般にサラリーマン家庭では、お金のことについて家庭内で話す習慣がありませんでした。お金から見たライフステージというものも教わってきませんでした。背景には、就職というよりも就社であり、一部技術職を除いて、会社の中での配置転換に従って全国を転勤して回り、専門職ではなくゼネラリストになり、管理部門に到達すると直に定年退職になるというイメージが一般的だったからだと思われます。

生命保険はお金の出入りと密接に関係しています。アメリカの例ですが、ライフステージとお金の関係について、ある意見をご紹介しましょう。ただし、これは少し古い時代のアメリカ人の中産階級の感覚なので、消費と貯蓄の感覚、不動産、車に関する感覚が日本とは異なっています。

  • 20歳から30歳まで
    クレジットカードを作って家具や家電製品を買い、自動車ローンを組む(公共交通機関が発達していないアメリカでは、自分の車が無いと不便のみならず、社会生活に非常に支障を来す)。理想だが、銀行や会社の年金口座にわずかながらも貯蓄をしているかもしれない。この時期の終盤には結婚し、子供を持ち、家を建てる(親に頭金を出してもらう)。
  • 31歳から45歳まで
    お金がどこへ消えていくのか、分からない時期。理想的には、学資金口座を作って子どもの学費を他とは別にして貯めているかも知れないし、会社が給与から天引きしてくれていればだが、年金口座を続けているかも知れない。生活が苦しくなると、家を担保にして住宅ローンの貸付枠を利用して借金する。
  • 46歳から55歳まで
    お金の使い途が把握できる時期。つまり、子どもの大学の費用に使われている。ようやく貯蓄を始める。
  • 56歳から65歳まで
    豊かに暮らせる時期。収入が最も多い時期で、子どもは独立している。いずれ子どもが家を買うときの頭金を払うために、給与の20%を別にしておく。
  • 66歳から75歳まで
    バラ色の時期。企業(個人)年金と公的年金と貯蓄から収入が入るので、生活は退職金と年金でまかなえる。
  • 76歳から先
    貯金を止めて、お金を使いまくる時期。子どもに残そうなどと考える必要は無い。自分の分は自分で蓄えさせよう。貯金の元本を引き出して好きなように暮らそう!

これはエッセーなので、住宅ローンがいつ終わるのかとか、子どもを育て上げることしか人生が無いように見えるとか、子どものいない場合はどうなのだとか、いろいろと疑問が湧くかも知れません。特に76歳から先の部分などは、「子孫に美田を残さず」とわざわざ言う必要があるほど、子どもに何かしてやりたいと思いがちな日本の親にとっては、受け入れがたい価値観かも知れません。

しかし、ポイントは、このアメリカ人著者のように一般論をひやかすのではなく、自分の場合はどうしたいのかということをある程度は絞り込まないと生命保険のことも決められない、ということです。

そんなことを言っても、先のことなどは分からないという方も多いかと思われます。しかし、筆者の知人で、学生時代から7年つきあったボーイフレンドと結婚した女性は、中学生くらいの頃から、何歳で結婚して、子どもは何歳の時と何歳の時に持つと計画し、そのとおりになってきたと言っていました。その通りになるかどうかはともかく、「こういう風になりたい」「こういう風にしたい」が無いと、節目節目にどういう選択をするべきかが分かりません。

70歳代前半の知人には、子どもが独立して、健康でお金の心配もなく、請われて月に数日複数の会社に相談役として出勤するという人もいます。こういう人には、多額の生命保険金は必要ないでしょう。保険料にお金を費やすよりも、現在の健康を維持するための活動にお金をかけた方が良いかも知れません。

同じく、両親が健在で、自分は自分の人生を切り開くことだけに集中していられるという立場の社会人一年生と、最初に述べた学生結婚をして子どももいる社会人一年生とでは、生命保険金の必要額が違ってきます。

新年度を迎えるに当たって、ご自分のライフステージについて考えてみてはいかがでしょうか。きっちりした数字でなくても、階段状の絵の下に、どんな出費が考えられるか、項目を並べてみることをお勧めいたします。

社会保険労務士
小野 路子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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