税金・保険コラム

2010.06.02

保険法-保険契約者等を保護する新しい法律

生命保険について気になることはいろいろあるでしょうが、その中でも、真っ先に気になるのは、保険金はいくらなのか? 自分は加入できるのか? ではないでしょうか。

この生命保険の加入という入り口と、保険金の受け取りという出口に関して、重要な法律"保険法"が、平成22年4月1日から施行されました。似たような名前の法律に"保険業法"というものがありますが、別の法律です。
保険業法は、「保険会社の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図る」ものです。保険の3つの構成要因(保険契約者、被保険者、保険者=保険会社等)のうち、保険会社等を行政が監督するための法律であると考えられています。

これに対し保険法は、保険契約について定めた法律です。実は、これまでは保険契約について独立した法律はありませんでした。商法の一部に保険について定めがあったのですが、明治時代に定められてから、約100年間も実質的な改正は行われなかったのです。

世の中が明治時代とは様変わりしていること、保険金の不払いが社会問題化したことなどで、独立した法律ができました。その大きな特徴は次の通りです。

ここでは、保険法の「3.保険契約者等の保護」について解説します。

保険契約者等の保護

保険の契約者や保険金の受取人をよりいっそう保護するために、次のような規定がされました。

  1. 保険契約締結時の告知(健康状態や病歴等について保険会社に告げる)に関するルールの見直し
  2. 保険金の支払時期に関する規定を新設
  3. 保険契約者等を保護するための重要なルールについて、法律よりも保険契約者等に不利な約款の定めは無効

1.保険契約締結時の告知(健康状態や病歴等について保険会社に告げる)に関するルールの見直し

保険契約者または被保険者には、保険事故の発生の可能性に関する重要な事項(健康状態や病歴等)について保険会社に知らせる義務(告知義務)があります。この義務についての重要な改正ポイントは、2つあります。

改正のポイント
  1. 告知義務が、自発的申告義務から質問応答義務に変わりました。 これまでも、現実には、保険会社が用意した告知書に書いてある質問に答える形で保険契約者は告知していましたので、一見すると何も変わらないように見えます。
    しかし、これまでは、告知書に質問項目が無かったために、契約者が必要だとは思わず病歴や症状を書かなかったことが、保険金を請求する段階で保険会社に告知義務違反としてとがめられ、保険金が下りないということが起きていました。今後は、聞かれたことだけに答えれば、契約者は告知義務を果たしたことになります。
  2. 告知妨害および告知義務違反教唆に関する規定が新設されました。 告知妨害および告知義務違反教唆とは、「そんなことを書いたら保険加入できないかも知れないから、書いてはいけません」とか、「たいしたことではないから書かなくても大丈夫ですよ」など、保険契約者が正直に告知しようとすることを妨げることです。

これまでは、生命保険募集人に上記のようなことを言われてその通りにした場合、保険会社が告知義務違反であるとして、契約を解除したり、保険金を払わないことが可能でした。保険契約者の側から見れば、募集人の言うことは保険会社が言うことだと受け取るはずなのですが。

それが、保険法では、改正のポイントの2番目に挙げたような事情があった場合には、契約を解除したり保険金を払わないことはできないと決められたのです。ただし、告知妨害や告知義務違反教唆があったと証明する責任は保険契約者の方にあるので、実際には、言った言わないの水掛け論になってしまうおそれは残っています。
水掛け論を避けるためには、書面を残すことが考えられます。告知内容について、保険契約者または被保険者が回答の仕方に迷ったら保険販売人に質問し、その質問内容と回答をきちんと書き取り、この書き取り内容で間違いないか確認してもらい、日付を入れて販売人に署名してもらうのです。
しかし、現実にはこのようにビジネスライクにできる方は少ないかも知れませんが。
ところで、既往症や現在服用している薬について、本当のところを知っているのは保険販売人や保険会社ではなく、保険契約者や被保険者の方です。まずは、時間をとって正確に思い出してから、告知しましょう。

2.保険金の支払時期に関する規定を新設

万一のことが起こった場合、保険契約者や保険金の受取人は速やかに保険会社に届け出なければなりませんし、実際そのようにするでしょうが、保険金の支払い時期については、保険契約の約款に定められています。しかし、「保険会社が調査が必要だと判断した場合には、調査が終了した時」というように具体的な日数が明記されていないことが多く、それを理由に保険会社は保険金の支払いを引き延ばしていると非難されることがありました。

この点について、今回の保険法では、具体的な日数は決められていないものの、約款に保険金を払う期限を定めてある場合でも、その期限が、生命保険契約上必要とされる事項の確認をするための「相当の期間を経過する日」より後の日であるときは、「相当の期間を経過する日」が保険金を払う期限だということになりました。
では、相当の期間とはどのくらいなのかということになりますが、参議院附帯決議(平成20年5月29日法務委員会)で、生命保険に関しては5日が1つの目安になるとしています。

3.保険契約者等を保護するための重要なルールについて、法律よりも保険契約者等に不利な約款の定めは無効

これは、保険契約の約款のうち、保険契約者を保護するための重要なルールに関しては、保険契約者に対しては法律よりも有利な内容の契約にしても良いが、その逆はできないということです。こういう法律の条文を片面的強行規定といいます。

保険契約者保護のための法律ができても、そもそも自分の事情に合った保険に加入していなければ意味がありません。また、加入の時点ではよく考えてあっても、何年もほうっておくと、現時点では合わなかったり契約内容を忘れてしまったりしていることもあります。この機会に、ご自分の保険証書を取り出して内容を確認してみてはいかがでしょうか。

社会保険労務士
小野 路子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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