税金・保険コラム

2008.09.03

生命保険の基礎知識(10)待った無しの教育費

皆さん、こんにちは。「残暑厳しき折」とはよく言ったものですね。筆者の住んでいるところでは、夏の初めからヒグラシが鳴いていましたが、気温が上昇するにつれ、ジーというアブラゼミの声にすぐ代わってしまいました。朝からミンミンゼミが鳴いていると、今朝は涼しいのだなと思います。蝉の鳴き声と気温との関係は、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシの順に気温が下がっていくように感じます。しかし、気温がどうあれ、日が落ちるとミンミンゼミは黙りますが、アブラゼミは逆に夜の方が活気にあふれているようです。そして昨今では、風情のある日本の秋の虫ではなく、台湾から温暖化に伴って日本に進出してきたアオマツムシが、街路樹の梢で、ラジオならボリュームが振り切れたかと思うほどのやかましい音量で一晩中鳴くのです。実に迷惑な話です。

さて、前回(7月3日掲載分)お話しした表はお書きになりましたか? 世界一周旅行に三回も行く計画になってしまった? それは、それでよろしいのじゃないでしょうか。
この段階ではきっちりとした「計画」ではなく、「~したいかも」レベルの話でもけっこうです。

ただし、ご家族の年齢だけは、きっちりさせておいて下さい。サバは読まないように。歳をとっていくということは、生きている限り誰にでもこれ以上ないほど規則正しく起こることなので、予測が可能な唯一のことと考えても良いでしょう。

この表を作るのは、前回ご説明した、「現状を理解する」と「将来を予定する」とを行うためです。特に何も予定は無いなぁという方もいらっしゃるでしょうが、これから子供を持つ予定のご家庭、またはお子さんがこれから就学期を迎える家庭では、この表は必ず作っておかなければならないものです。なぜなら、たとえば、自家用車は、壊れない限り買い換えの時期をいつにするかはみなさんの好きにできますが、教育費は、待った無しだからです。日本国内に住み、健康でいるならば、学制が変わらない限り、学年はあがっていきます。

既にお子さんが中学、高校生の方の多くは共感して下さるのではないかと思いますが、子供にかかるかる費用というのは、あくまでもイメージ図ですが、下図のように、あたかも複利計算の模式図のように急激に上がっていくかのように感じられるものです。

しかも、この波は一度では済まず、二度三度と来るように感じられるのです。最初は、女性の場合は妊娠中から始まります。妊娠月数が進むにつれ、検診の回数が増えていきますが、そもそも健康な妊娠は健康保険の適用外ですので、原則3割負担で済む他の病気診療に比べ、費用がびっくりするほど高く感じられるものです。

妊娠後期ともなれば、ベビー用品を購入する楽しい時期でもありますが、同時にこんなに小さいのになんでこんなに高いの?と何度もつぶやく時期でもあります。そして出産時の入院費がまとまって何十万円もかかります。

幼稚園入園で、たいがいの方が驚くのは、公立幼稚園というものが本当に少なく、ほとんどの幼稚園が私立で、それなりの費用がかかるということです。

もちろん、お子さんを社会に送り出すまでに親がかけなければならない費用というのは、それぞれのご家庭によって考え方も事情も異なります。学費すべてのみならず、結婚披露宴の費用まで親が負担するのが当然であるという考え方もあるでしょうし、高等教育は学生本人が負担すべきであるという考え方で、大学の学費は奨学金とアルバイトで賄うべし又は、親が入学時にいったん学費を負担し、卒業後就職してから親に返すべしというご家庭などもあるでしょう。

そもそも、子供が社会で生きていけるようにするのが親の仕事ですから、なにも机上の教育だけが教育ではないとして、大工、染色、工芸など、職人の世界で生きていけるようにと小さい頃から訓練を積ませたりするのも教育です。さらに、職人に限らず、タイガー・ウッズのように、歌舞伎役者のように、フィギュアスケートやサッカー選手のように、海外の優れた指導者の下に送り出すという場合もあるでしょう。

いずれにせよ、いくらかかるのかという事前調査がなければ、準備もできません。しかし、準備が足りないことよりも、やりがちなのが、出産準備の時に、新生児が絶対に使わないリモコンのNゲージ機関車を買い込んだり(パパ)、新生児はどんどん大きくなるので次々に服が着られなくなることに思いが至らず、小さいサイズの可愛らしいベビー服を大量に買い込んだり(ママ)することです。今後いくらかかるのか、ちゃんと分かっていれば、炎天下に保冷容器の準備もせずにドライアイスを購入して、家に着く前にみんな蒸発させてしまうようなまねをせずに済むのです。 参考までに、文部科学省が学校の種別にまとめた、親が子供の教育に関していくら支出したかの調査結果(平成18年度)をご覧下さい。これは授業料だけではなく、修学旅行費から制服やPTA会費まで含めた金額です。つまり、学校に子供を通わせているとかかるかもしれないお金と考えてよい数字です。
この数字が、前回作られた表のお子さん達の項目に、年齢に応じて必要な金額として書き込まれることになります。

年間支出額(単位:円)

公立幼稚園 私立幼稚園 公立小学校 公立小学校 公立中学校 公立中学校 公立高校 公立高校
251,324 538,406 334,134 1,373,184 471,752 1,269,391 520,503 1,045,234

※文部科学省 平成18年度調査

余談ですが、新聞の4コマ漫画で、子供の成長という視点で描かれたもののうち筆者が感心したのが、ひとつはもう何十年も前に描かれた『フジ三太郎』です。当時はまだ手のひらサイズのビデオカメラなどは無かったのですが、両親がぐっすり眠っている幼い息子のあどけない様子を見ながら、「ビデオはもっと小さくなるから、そうしたら買おう、まだいいね」「そうね」と言いながら二コマ目、三コマ目と時は過ぎ、ビデオカメラはだんだん小さくなり、4コマめでは大学生くらいに成長したニキビ面のせがれが鼻提灯を出しながらいぎたなく眠りこけている姿を前に、やや年とった両親が、「こんなに大きくなったら、もういいね」「そうね」と言い合っているというものです。

もうひとつは、「これももう着られない、これも小さくなってしまった」と母親が、タンスから服を次々と出して子供の体に当ててみては嘆いている様子を見た父親が、「子供の成長を喜んでやれよ」と一言、というものです。
そうです、服が小さくなったのではなく、子供が大きくなったのですね。しかしなぜか逆の言い方をしがちです。服が小さくなったという言い方は、迷惑という意識がにじみ出ています。どちらに視点をおくかで世界の切り口が変わり、考え方は言葉にも表れてしまうのですね。

社会保険労務士
小野 路子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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