2007.08.30
生命保険の基礎知識(3)保険料において収支相当の原則とは
今回は生命保険の保険料算出の基本原理についてお話します。
純保険料算出の基本原理は「収支相当の原則」です。この「収支相当の原則」とは、契約者全員が支払う保険料の総額と保険金受取人が受け取る総保険金額とは同じでなければならないという原則のことです。もともと契約者がお金を出し合う助け合いの精神からできた制度ですから、足りないのはもとよりムダがあってもいけません。
表5:収支相当の原則
保険料の総額=保険金額の総額
しかし、これだけではどのくらいの確率で保険事故が起きるか(不確実性)について考慮されていません。保険者はこの不確実性を引き受ける対価を純保険料に乗せます。
どうするかというと、保険料計算には三つの要素(予定死亡率、予定利率、予定事業費率)が必要なのですが、そのうちの予定死亡率に不確実性の一部を加算するのです。つまり、実際の死亡率(たとえば、ちょうど100 歳に達した者が100+1 歳に達しないで死亡する確率を、年齢階級[100 ,100+1]における死亡率と呼ぶ)より死亡率を高めに設定して、保険料が足りなくなる危険を回避するわけです。
さらに、集めた保険料を保険者が運用して上げられるであろう収益率(予定利率)をあてにすることで保険料を抑え、保険制度の維持・管理費用がどれくらい必要か(予定事業費率)を見込んで保険料はできあがっています。
表6:保険料の構成その2
保険者としては大数の法則が働きやすくなるようにするため、できるだけ大勢の契約者に参加してもらいたいのですが、助け合いの制度ですから加入者間の不公平はなるべく小さくなければなりません。そのため、前回例を挙げたように保険事故の起きる危険が大きいと予測される被保険者の保険料は高くなるのです。
ところで、保険料は、人生で一番大きな買い物と言われることもある住宅ローンにある面でよく似ています。どういうことでしょうか。
蛇足ながら、新聞などに平均寿命が延びたなどという記事で使われる「平均寿命」とは、その年生まれた赤ちゃんの「平均余命」のことです。誕生後ウン十年経過しているわれわれは、平均寿命が延びた(死亡率が下がった)ことよりも自分の年齢の「平均余命」を気にすべきです。いずれにせよ、筆者も含めて現在生きている人間の150年後の死亡率は100パーセントです。
なぜ150年かというと、生殖可能年齢に達するのに要した年数の約10倍がその動物の平均寿命だという説があるからです。その論者は人間も脳だけなら150年生きられるはずだと力説していました。アニメ『ルパン三世』映画版シリーズ第1弾の『ルパンvs複製人間』みたいな話です。ネタバレですが。