2017.04.26
雇用保険の介護休業給付金(平成29年1月1日以降は通算93日までを3回まで分割して取得可能に)
みなさんの周りで、「親が倒れて介護をしている」といった話を聞くことはありませんか?
元気だった家族が突然、大怪我や病気で倒れ、または障害状態となり、人の手を借りないと生活できない状態になるといった想定外の出来事が起これば、とても大変なことでしょう。
家族にはずっと健康でいて欲しいと願うものの、年を取れば足腰が弱くなったり、認知症が始まったり、40代、50代の働き盛りの自分が介護をしなければならない状況に追い込まれることはないとも限りません。そういった状況を想定しておくことは必要でしょう。
さて、そんな困ったことになったとき、雇用保険に加入している人には「介護休業給付」という制度があります。通算して93日までが限度ですが、この制度を使って介護に専念したり、介護が長期におよぶ場合には介護施設を探す時間にあてることができます。
さらに、今までは原則1回の取得とされていたところ、平成29年1月1日以降、通算93日を上限に3回まで分割して取得できるようになりました。
今回は、平成29年1月1日以降に介護休業を取得する場合の、雇用保険の介護休業給付について解説します。
介護休業は、負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族を労働者が介護するために取得する休業をいいます。
常時介護を必要とする状態とは?
●介護保険制度の要介護区分2以上
または
●座位保持・歩行・移乗・水分や食事摂取・排泄・衣類の着脱・意志の伝達・外出から戻る・薬の内服・日常の意思決定など、日常生活に必要なことのいずれかができない。または、2つ以上容易にできない状態が継続すると認められることをいいます(他、物を壊す・物忘れがひどいなど)。
対象家族とは?
配偶者(事実婚含む)、父母、子(養子含む)、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹及び孫
※子や孫も対象となっています。
それでは、雇用保険の介護休業給付を受けられる人の要件と手続きの流れ、受け取れる金額などをみていきましょう。
1.介護休業給付金を受給する資格がある人は?
次の2つの要件を満たすこと
① 雇用保険の被保険者で休業後に職場復帰する予定の人
② 介護休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12か月以上ある人
有期契約の人は、申出時点で更に次の2つの要件も満たすこと
③ 入社1年以上
④ 介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
2.給付対象となる介護休業は?
次の2つの要件を満たすこと
① 常時介護を必要とする対象家族を被保険者が介護するための休業
② 被保険者が、休業開始予定日の2週間以上前に介護休業開始予定日と末日とする日を明らかにした「介護休業申出書」を会社に提出、これによって実際に取得した介護休業
3.ハローワークへの手続き
介護休業給付金の支給を受けるためには、会社が次の書類をそろえて、提出期限(各介護休業終了日の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日)までに事業所管轄のハローワークへ申請することが必要です。
<必要な書類>
●雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(3枚綴りのもの)
添付書類:証明期間中の賃金台帳、出勤簿
●介護休業支給申請書
添付書類:介護休業申出書の写し、対象家族の氏名・被保険者との続柄・性別・生年月日等が確認できる住民票記載事項証明書や戸籍抄本等、介護休業期間中の出勤簿、賃金台帳
4.支給のされ方は?
介護休業給付金は、1回の介護休業につき、介護休業開始日から1か月ごとの期間(支給単位期間=支給対象期間といいます)で区切って支給額を計算します。1回最大3か月間となり、介護休業を2回以上3回までの分割で取得する場合は、分割して支給されることになります。
給付金は指定した金融機関の口座に振り込まれます。
なお、支給対象期間ごとに次の2つの要件を満たすことが必要です
① 初日から末日まで継続して雇用保険の被保険者であること
② 就業している日と認められる日が10日以下であること
5.支給額は?
原則:介護休業期間中に働いていない場合
→ ハローワークに提出した書類で決定された賃金日額×支給日数×67%
賃金日額は、介護休業を開始する前6か月間の賃金を180で割った額となり、これに30を乗じた額=賃金月額となります。
例外:介護休業期間中に働いた場合
支給対象期間中に働いた日数が10日未満で、支給対象期間中に賃金支払日があり、支払われた賃金(介護休業期間を対象とする賃金に限る)額と、賃金日額×支給日数×67%相当額の合計が、休業開始時の賃金月額の80%未満であれば支給されます。
ア.支給単位期間中に賃金月額の13%以下の賃金を受けた
→賃金月額の67%相当額
イ.支給単位期間中に賃金月額の13%超~80%未満の賃金を受けた
→賃金月額の80%相当額と賃金の差額が支給
ウ.支給対象期間中に支払われた賃金が、賃金月額の80%以上
→不支給
6.支給上限額と下限額(平成28年8月1日から平成29年7月31日まで)
・支給上限額(給付率67%) 312,555円 ※賃金月額上限 466,500円
・支給下限額(給付率67%) 68,700円
※支給上限額及び支給下限額は、毎年8月1日に変更されます。
おしまいに
平成29年1月1日の育児介護休業法の改正では、介護短時間勤務制度が短時間勤務開始日から起算して最大3年間となるなど、介護をしながらでも働きやすくなる制度が整えられています。
デイサービスなどを利用することができても、早く帰らないといけないなど、家庭の事情を会社が考慮してくれると、仕事をしながらでも家族の面倒を見ることができますよね。
また、育児や介護を理由に休業したり、短時間勤務に変わったりすることで、周りの人がいやがらせなどのハラスメント行為をしたり、これを理由に会社が従業員を解雇することが禁止されました。
仕事と家庭をみんなで分担しようという将来を見据えている改革が次々と出ています。 会社も働き方の改革を進め、これに対応していかなければなりません。