税金・保険コラム

2012.05.02

雇用保険の基礎知識 働く人が家族を介護するために休業する場合の給付「介護休業給付」

皆さん、こんにちは。
皆さんのご家族はお元気でお過ごしですか? 家族皆が元気で長生きは誰しもが願うことですが、長生きとは引き換えに、加齢により体の自由が利かなくなったり、認知症に罹ってしまったり、あるいは若くてもガンなどの大病を患ってしまうこともあるでしょう。
いつ何時、親などの家族を介護しなければならない状況に陥ってしまうかはわからないものです。

雇用保険の基礎知識 働く人が家族を介護するために休業する場合の給付「介護休業給付」親を介護する世代としては、40代、50代に当たる人達が大半を占めますが、非婚化が進んでいる昨今の状況では、働き盛りの独身の息子・娘、家庭を持ちながら仕事をバリバリこなす女性も増え、男性も女性も仕事と介護の両立をしていかなければならなくなる人が多くなることがこの先予測されます。

もちろん、介護施設などに預けられれば心配は減りますが、介護保険の申請を市区町村にしたり、施設に入所できるまでの手配をするにも時間が掛かります。

そこで今回は、平成11年4月1日にできたものの、まだ取得率の少ない雇用保険制度の中の「介護休業給付」について、説明いたします。

制度の概要

雇用保険の介護休業給付とは?
怪我や病気または身体上もしくは精神上の障害で、2週間以上にわたり常時介護を必要とする家族の介護をするために、仕事を休むことを決め、その間勤め先から受け取れる給与が80%未満となる場合の賃金を補完する制度です。
給付される金額には、上限と下限がありますが、通常給与の最大約40%が支給されます。休業できる期間は、1人の家族に対して、休業開始日から最長3か月間。1回に3か月まとめて休業をとらず同じ家族での休業を複数回とることもできますが、異なる要介護状態で介護休業をすることになった場合に限り、その日数を通算して93日まで取得することができます。
申請窓口は、会社を管轄するハローワーク、財源は雇用保険料です。

なお、市区町村が窓口となっている、介護が必要な人本人が利用できる介護保険制度が平成12年にできましたが、それとは全く別の制度です。

それでは、介護休業給付を受けられる人、どんな家族を介護しなければならなくなったときに介護休業給付の対象となるのか、給付の金額など詳細をみていきます。

Ⅰ.介護休業給付を受けられる人

雇用保険の介護休業給付を受けられる人は、次の1から3までの要件を満たす人です。なお、期間雇用者の場合は1から4まで、登録型派遣労働者の場合は1から5までの全ての要件を満たすことが必要です。

  1. 家族を介護するために、介護休業を取得した雇用保険の被保険者であること
  2. 介護休業を開始した日に65歳未満であること
  3. 介護休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上である月が通算12か月以上あること
  4. 休業を開始した日にその会社で1年以上雇用保険に加入していて、介護休業が終了後も1年以上雇用される見込みがあること
  5. 休業終了後は職場復帰することが予定されていること

Ⅱ.要介護状態にある家族の範囲

介護休業給付の対象となる家族は、以下のいずれかの人です。

  1. 配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
  2. 父母(養父母を含む)
  3. 子(養子を含む)
  4. 給付を受けたい人と同居しかつ扶養している祖父母
  5. 給付を受けたい人と同居し扶養している兄弟姉妹
  6. 給付を受けたい人と同居しかつ扶養している孫

なお、市区町村の要介護認定や要支援認定を受けている家族でなければならないといった要件はありません。

Ⅲ.受給要件

雇用保険の基礎知識 働く人が家族を介護するために休業する場合の給付「介護休業給付」支給申請をした際の休業期間中等の要件は、以下となります。

  1. 介護休業開始日から起算して1か月ごとに区切った場合の各期間の最初から最後まで継続して雇用保険の被保険者であること
  2. 1か月ごとに区切った支給単位期間に、介護休業による全日休業日(会社の休日含む)が20日以上あること
    ※つまり、1か月30日の場合、11日以上出勤してしまうとその月は対象にならないということです。なお、介護休業を最長3か月とらない場合などで、介護休業終了月など1か月に満たない支給単位期間については、介護休業による全日休業日が1日以上あれば、要件を満たすということになっています。
  3. 支給単位期間に支給された賃金額が、休業開始時の賃金月額の80%未満であること
  4. 勤め先の規程に基づき、介護休業の申し出を期間内に行い(通常は介護休業開始予定日の2週間前まで)、介護休業申出書を事業主に提出していること

Ⅳ.支給額

  • 介護休業期間中に給与が支給されない場合
    介護休業開始前6か月間の給与総額÷その6か月間の総日数=賃金日額
    賃金日額×休業期間の日数×40%(最大値)
  • 介護休業期間中に勤め先から給与が支給される場合
    40%以下:賃金日額×休業期間の日数×40%(最大値)
    40%超80%未満:賃金日額×休業期間の日数×80%-賃金額
    80%以上:支給されない
  • 賃金日額の上限と下限(平成23年8月1日~平成24年7月31日まで。毎年8月1日に変更)
    上限:14,340円
    下限:2,330円

おしまいに

比較的長期で取得する「介護休業」とは別に、1日あたりで取得ができる「介護休暇」の制度が、平成21年の育児・介護休業法の改正で定められました。当初適用が猶予されていた従業員が100人以下の企業でも平成24年7月1日から、全面施行となります。
ますます、介護が身近になってくるという世の中の流れから来ているものでしょう。

制度の概要としては、要介護状態にある家族の介護その他の世話を行う従業員は、事業主に申し出ることにより、対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日まで、1日単位で休暇を取得することができるというものです。ただし、会社の取り決めによりますが、この休暇中の給与は無給、入社して6か月未満の人は対象外となるケースが多いです。

今回説明した、介護休業給付は1日だけとることも可能ではありますが、あまりに期間が短い場合は、有給休暇や介護休暇のほうが使い易いですね。

社会保険労務士
木村 晃子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
一覧に戻る

わからないことがある方

よくあるご質問

ポスタルくらぶサービスセンター

 03-3497-1555

受付時間 9:00~17:00(月~金、祝日除く)

会員の方

ログインして
会員限定サービスを利用する

お電話でのお問い合わせは会員カードに記載のフリーダイヤルへお問い合わせください。

会員カードのご案内

会員の方へ

※お電話でのお問い合わせも承っております。会員専用電話番号は会員カードにてご確認ください。