税金・保険コラム

2008.12.03

遺言・相続(12)「遺言がないと、どのような不都合が起きるか?」

皆さん、こんにちは! 皆さんの生活の上で相続問題は大切な事柄です。
このコラムの遺言・相続に関するコーナーでは、引続き必須の基本知識を中心に取り上げて参ります。前号から「遺言」について3回のシリーズで紹介しております。
本号は、前号の「遺言のすすめ」に続きまして、事例をもとに「遺言がないと、どのような不都合が起きるか?」について記述させて頂きます。

遺言がないと、どのような不都合が存在するか?

遺言は大切だと説かれてもなかなか実感が湧いてこないものです。
そこで事例でご説明することによって遺言の重要性を肌で感じて頂くことに致します。
ここで取り上げる事例は、紙面の関係もあり、ほんの一部分にすぎません。世の中の被相続人のおかれた環境、立場、親族の構成などにより数限りないパターンがございますので、あくまでもシンプルでわかりやすい事例を選び、皆様の理解の一助になれば幸いです。

この事例の場合、通常はA夫さんがなくなった場合、妻のB子さんが相続するものと本人たちは思っていることが多いのですが、法定相続の観点からすると、子供がいないため、配偶者のB子さんが3分の2、父母が合わせて3分の1になります。しかし、父母は通常は、息子の嫁のことも考慮し、とくに同居していた場合などは、嫁に対して相続分を主張しないこともあるかと存じます。

ところが、父母がいなかった場合、どうでしょうか。
その場合、B子さんに法定相続分が4分の3、兄弟姉妹には合わせて4分の1の相続権が発生します。
それでも通常は、兄弟姉妹が相続分を主張しないことも多いのですが、亡くなったA夫さんやB子さんと、兄弟姉妹の関係が悪かったり、兄弟姉妹やその配偶者が利にさとい場合は、当然の権利として相続分を求めて来るでしょう。
その場合、A夫さんが全財産を妻のB子さんに相続させるということを遺言に残しておけば、兄弟姉妹には遺留分はありませんので、相続財産は、すべて妻のB子さんのものになるわけです。
ましてや、兄弟姉妹が亡くなっていて、その子供たちが代襲相続する場合もあります。したがって、遺言がないと、B子さんからすると、あまり会ったこともないA夫さんの甥や姪に財産の一部を持って行かれるといったこともあり得ることになります。
この例をみても、遺言がいかに効力をもっているか、ご理解頂けると存じます。

もう一つ、かなりシビアな例を見てみましょう。

夫婦A夫さんとB子さんには、子供が無く、法定相続人の父母も兄弟姉妹もいなかった場合、A夫さんが亡くなってしまうと、当然B子さんがすべて相続するはずです。
ところが、ある日突然、B子さんのところにA夫さんの愛人だったという女性が子供を連れて現われ、この子はA夫さんに認知されており、相続権があるので、その分を渡せといって来た場合はどうでしょうか、世の中はこうした事例が結構あるものです。

奥さんのB子さんにすれば、夫に愛人があるとわかっただけでもびっくり仰天してしまいます。ましてや子供がいて、おまけに認知までしていたということになれば、なおさらです。もうオロオロするばかりです。
人には相続権がありませんが、認知した子供にはあります。この場合、A夫さんとB子さんの間には子供がいないので、認知した子には2分の1の法定相続分があります。
A夫さんに全財産を妻のB子さんに相続させる旨の遺言を書いてもらっていれば、認知した子供の遺留分は4分の1ですので、子から遺留分減殺請求をされても4分の3はB子さんが相続できるわけです。

では、極端な例で、A夫さんが奥さんに向けてではなく、愛人に全財産を相続させるという遺言を書いていたとすればどうでしょうか?
その場合、奥さんの遺留分は4分の1になりますので、4分の3は愛人とその子のグループに持っていかれることになります。こうなると奥さんにとってはなはだ気の毒な状況になりかねません。ここに遺言の重要性があります。奥さんがご主人の生前に愛人や認知した子の存在を知っていれば、速くからご主人に対するアプローチ、対応が大事になります。
被相続人は、残された相続人が生活に窮することのないように、遺言の作成上、それなりの工夫が必要です。
遺言がいかに重要か、前記の例でおわかりになったと存じます。遺言は、作成する人の社会経験や知性、法律知識、そして何よりも残された遺族への思いやりが如実に表れます。したがって、亡くなってからも後に残された人から良い評価を受けたり、彼らに納得感を与えるような遺言をすることが大切です。

※遺留分
被相続人は、民法で定められた法定相続人の相続分にかかわらず、遺言で自由に相続分を指定することができます。しかし、遺言で指定する場合でも法定相続人の最低限の権利や生活を守るという観点から、これだけは残しなさいよという最低保障ともいうべき割合が定められております。これが「遺留分」です。
遺留分は、配偶者、子、父母にはありますが、兄弟姉妹にはありません。
したがって、遺言によって兄弟姉妹には何も相続させなくても構わないということになります。

社会保険労務士、行政書士
小柴 正晴
一覧に戻る

わからないことがある方

よくあるご質問

ポスタルくらぶサービスセンター

 03-3497-1555

受付時間 9:00~17:00(月~金、祝日除く)

会員の方

ログインして
会員限定サービスを利用する

お電話でのお問い合わせは会員カードに記載のフリーダイヤルへお問い合わせください。

会員カードのご案内

会員の方へ

※お電話でのお問い合わせも承っております。会員専用電話番号は会員カードにてご確認ください。