税金・保険コラム

2022.12.20

雇用保険 男性の育児休業(2) 出生時育児休業(産後パパ育休)

こんにちは。みなさんの職場では、最近お子さんが生まれた男性が育児休業を取るようになったなと感じますか?

「妊娠しました!」「妻に子供が生まれます!」と職場で従業員の方から報告があった場合、2022年4月1日からの改正育児・介護休業法により、事業主は育児休業の制度について個別に周知し、かつ育児休業を取得するかどうか本人の意向を確認しなければならないことになりました。

また、2022年10月1日からは、子の出生後8週間の間に男性が取得できるパパ休暇が廃止となり、新たに「出生時育児休業(通称:産後パパ育休)」が創設されました。男性の育児休業がより取得しやすい形に制度化されましたので、勤め先では今後、男性も育児休業を取る人が増えてくるかもしれません。なお、法律上の名称は「出生時育児休業」となっていますが、「産後パパ育休」(以降、産後パパ育休と言います)という通称が併用されています。

具体的に産後パパ育休はどんな制度なのかと言うと、出産予定日(実出産日より前の場合)から子の出生後8週間の間に、4週間(最大28日間)まで、夫が短期の育児休業(2回に分割可能)を取得できるようになったというものです。産後パパ育休を取りたい場合、勤め先への申し出期限は産後パパ育休開始予定日の原則2週間前まで。勤め先によっては、産後パパ育休中は就労することも可能となっています(限度日数あり)。

さらに、子の出生日から1歳になる前までの間に取れる通常の育児休業も、2回に分割して取得できるように改正されました。男性は最大4回に分けて取得が可能になったということです。そして、男性が産後パパ育休を取得した場合、妻も育児休業を取っていれば、原則1歳までの育児休業が1歳2か月まで延長されます。パパママ育休プラスとして両親ともそれぞれ最大1年間(女性は産後休業期間を含む)育児休業が取れることは変わりありません。※1歳または1歳2か月までの間は、夫婦が重複して育児休業を取得することが可能です。

今回は、今年10月1日から始まった、男性の「産後パパ育休」と取得の流れ等について解説します。

1.配偶者の妊娠・出産について勤務先へ報告

まずは勤務先へ自分に子供ができる旨を報告します。勤務先からは育児休業についての周知と意向確認をされることになりますが、既に産後パパ育休を取りたいと決めている場合はその旨を申し出ましょう。➡2へ進む

【会社からの周知事項】
●育児休業・産後パパ育休に関する制度について
●育児休業・産後パパ育休の申し出先
●育児休業給付に関すること
●育児休業・産後パパ育休期間の社会保険料の取り扱いについて

【会社からの個別周知・意向確認の方法】
面談(オンラインも可)または書面交付。自分が希望すればFAXまたはE.mailでの方法でも可。

※厚生労働省から「個別周知・意向確認書記載例」の書式例が出ていますので、会社のご担当者はこれを活用されるとよいでしましょう。

2.産後パパ育休の申出

産後パパ育休を取りたい場合、申し出期限内に産後パパ育休取得期間を記載した育児休業申出書を勤務先へ提出します。申し出期限は、原則、産後パパ育休開始予定日の2週間前までです。従業員代表との労使協定があり、育児休業をしやすい環境を整えている勤務先では、1か月前までに申し出ることが必要です。休業中の業務の引継ぎや、代替要員の確保を考えると申し出は早いに越したことはありません。まずは報告をして、具体的な休業期間などを2週間前までに書面で提出できるよう準備しましょう。

●対象期間と取得可能期間➡子の出生後8週間以内に4週間(28日間)まで
●申し出期限➡原則休業開始日の2週間前まで ※通常の育児休業は1か月前まで
●分割取得➡2回分割可能(はじめにまとめて申出要)

なお、子の出生後8週間の間に4週間を超えて育児休業を取る場合は、産後パパ育休にはならず、通常の育児休業の1回目の取り扱いとなります。

3.産後パパ育休の申出時必要書類

申出時に勤務先に提出する書類は以下の通りです。

  • ①出生時育児休業申出書
     ※2回に分割取得する場合、1回目と2回目を一括で申し出ること
  • ②出生前の申出:母子手帳の出産予定日が記載されているページの写し
     出生後の申出:両親氏名と子の出生日が記載されている自治体証明欄ページの写し
  • ③産後パパ育休中に就労する場合、就業可能日等申出書
     ➡事業主は申出範囲内で候補日・時間を提示➡労働者が同意➡事業主が就労日時通知

4.出生時育児休業給付金(育児休業給付金の額)

勤務先の規定により異なりますが、育児休業中の給与が支給されない場合、1年以上雇用保険に加入していて、休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上の人は、雇用保険の育児休業給付金を活用することができます。

産後パパ育休を取得した場合は、休業開始時の賃金の67%の給付金を受けることができます。なお、出生時育児休業給付金の上限(休業28日)は、どんなに給与が高い人でも賃金日額上限15,190円×28日×67%=284,964円までとなります。

通常の育児休業期間は、月30日分の給付上限額、305,319円(産後パパ育休合わせ180日まで給付率67%)、227,850円(180日経過後は給付率50%)です。※令和4年10月現在、賃金日額の上限は15,190円。毎年8月1日に金額は改定されます。

※産後パパ育休中に就業した場合、28日間の休業取得の場合で就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業時間数が80時間)以下である場合に、給付の対象にはなりますが、支給された賃金額が、休業開始時賃金月額の80%以上になると不支給。休業開始時賃金月額の13%超~80%未満の場合は、休業開始時賃金日額×休業日数×80%―賃金額が支給額となり、減額支給になります。

5.育児休業中の社会保険料免除

令和4年10月以降に開始した育児休業については、その月の末日が育児休業期間中である場合(ケース①)と、その月中に14日以上育児休業を取得した場合(ケース②)に、社会保険料が免除されます。また、賞与に係る保険料については、1か月を超える育児休業を取得した場合のみ免除の対象となります。この「14日以上」の日数には、事前に調整して就業した日は含まれませんので注意が必要です。

※ 令和4年9月以前に開始した育児休業については、その月の末日が育児休業期間中である場合のみ、社会保険料が免除されていました。

おしまいに

男性が長期の育児休業を取ることは、実際にはハードルが高いケースもあります。法律の改正によって男性の育児休業取得率を上げようと考えられたのが、今回の「産後パパ育休」です。乳飲み子のうちに夫婦一緒に子育てして、家庭での協力体制を築いたうえで、妻の職場復帰を後押しするねらいもあるようです。ですから、これから育休を取るパパは、真剣に育児や家事に向き合っていただきたいと思います。そして、家族の幸せのために本当のイクメンが増えることを祈っています。

社会保険労務士
木村 晃子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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