税金・保険コラム

2020.01.28

認知症の保険

明けましておめでとうございます。皆様は三が日を愉快に過ごされましたでしょうか。初詣に行かれた方も大勢いらっしゃったでしょう。

筆者の自宅近くには、神主さんが他の神社と兼任というほどのごく小さい神社があります。それでも、元日の昼過ぎに筆者がお参りに行った時には、参拝客の長い行列が出来ていました。そこで正月早々に怖い思いをしました。

と言いますのは、筆者の真ん前に並んでいた高齢の方が、かなり足腰が弱っていたように見えたのです。本殿前に険しく長い階段があるのですが、下の方、3分の1位には手すりがありません。そこを、その方は、階段脇の植え込みの枝をつかんでよじ登るようにして、やっと上っていたのです。

階段は踏面の奥行きが小さく、足の裏の半分くらいしか乗りません。ここで万一、上の方が足を踏み外したら、とても筆者には支えきれません。きっと二人一緒に、下に並んでいる方達を巻き込んで真っ逆さまに落ちてしまうと、ヒヤヒヤしました。

年を取れば、体のあちこちに故障が出てくるのは当たり前ですが、肉体の衰えだけではなく、年齢が上がるにつれ、認知症の発症率も上がります。

肉体的な衰えをカバーすべく、介護保険制度ができたわけですが、長寿になった今は、認知機能の衰えについてもカバーしなければなりません。しかし、高齢化と少子化がセットになって、かつて高齢者をサポートしてきた家族の構成人数は、減っています。

筆者の親の世代は兄弟姉妹が6人、7人というのは普通でしたが、筆者が小学生の頃は3人兄弟ですら珍しくなっていました。

介護離職ということばを初めて知ったとき、筆者は、介護職に就いている人々が職場を離れるという意味だと勘違いしました。実際は、家族を介護するために時間を取られ、勤務を続けることができなくなって退職するという意味で使う言葉でした。世話を分担する人手が足りないから起こることです。

家族では面倒を見られないのなら、家庭の外で施設を探し、世話は専門職に頼むしかなくなりますが、それには費用がかかります。

政府は、「認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って不便なく日常生活を過ごせる社会」を目指すべき社会としています。(認知症施策推進大綱) 民間企業である生命保険各社は、認知症に対応する保険商品という形で、人々の需要に応えています。

認知症に対応する保険例

たとえば、上記のような、認知症に対応する保険があります。この中には、独立した保険ではなく、その保険会社独自の生命保険に追加する形のものもありますし、介護保険に認知症保険をプラスした形のものもあります。また、要介護の確定診断が出た後の保険料が免除になる特約をつけることのできるものもあります。

保険金額も、10万円から1,000万円と幅があります。(当然、保険金額が高額になれば、保険料も上がります。)加入のしやすさや予防サポートに重点を置いたり、症状の重い人々を対象に絞ったり、各社が工夫しています。

しかし、上記4社の認知症保険に共通することもあります。それは、すべてに指定代理請求特約があることです。

指定代理請求制度とは、被保険者が受取人になっている保険金等を、被保険者本人に特別な事情がある場合に、契約者があらかじめ指定した代理人が被保険者に代わって、保険金等を請求できる制度のことです。

自分自身を被保険者として契約する認知症保険には、必要な特約です。認知症の症状が重くなると、本人がお金を管理することが難しくなり、家族が諸々の費用を代わりに負担することもでてきます。そういう時、保険金を代理請求できると家族は助かるでしょう。

ところで、こういう保険に加入する必要性がより高いのは、どんな場合でしょうか。少子高齢化の時代、兄弟姉妹が無く、50歳までに一度も結婚したことが無く、子どもがいないという単身者も増えています。

筆者の知人は、叔母さんがキャリアウーマンの走りで、生涯独身だったため、亡くなる前後は甥にあたる彼が入退院や葬儀の手続きをしました。彼のお母さんが亡くなった人の姉に当たるのですが、既に高齢であるのと、妹の方が先に亡くなったことのショックとで、何もできなかったそうです。

保険料は、年齢が上がるほど高くなります。独身で生命保険金で遺族の生活費を賄うということを考えなくても良いのなら、代わりに早くにこのような保険に加入しておくということも考えられます。

もし、甥や姪のような近い親族もいない場合は、同時に成年後見制度のことも考えなければならないでしょう。しかし、そういう場合でも、同居人がいないのなら、「おや?」と思うことが起きたときはすぐに受診して診断を受けるというところまでは、自分でやるという決心が必要でしょう。

筆者の親戚に、認知症の発症を同居している家族から疑われている人がいます。家族は病院で診察を受けて欲しいと本人に言ったのですが、当人は絶対嫌だと言って大ゲンカになってしまったと聞きました。

実は、筆者もこの話を聞いた後でほんの短時間、当人に会う機会があって、「あれ?」と思うことがありました。ただ、ほんの小さなことでしたので、このケンカの話を聞いていなかったら、そのまま忘れてしまったのではないかと思います。しかし、同居している家族が変だと思うのなら、何か起きているのかも知れません。

本人に自覚があって、診断結果を恐れているのか、単に年寄り扱いされたと思って怒っただけなのかは分かりません。しかし、認知症は早期に治療を開始するほど、より、進行を遅らせることができます。

当人に発症していないという自信があるのなら、ケンカしている暇にさっさと受診して、発症していないという診断書を見せびらかしながら、家族に「ほら、ご覧なさい。」と威張ってやれば良いのにと思うのですが・・・。

社会保険労務士
小野 路子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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