欧先生の診察室

日々の暮らしの中で気になる症状や、季節の変わり目のお悩みに
佐々木欧先生がやさしくアドバイスしてくれます。

2025.08.15

腸活って、なあに? ~秋の味覚でととのえる わたしの腸内環境~

  • 風に秋の気配が混じりはじめたある日、Tさん(52歳、女性)が診察室を訪れました。「最近お腹が張って、便秘気味です。なんだか体が重くて……」と少し不安げです。診察すると重大な病気ではなさそうだったため、秋の食材を活かした「腸活」を提案することに。「“腸活”って、テレビでよく見るヨーグルトとか、ああいうのよね?」という問いかけに、「昔ながらの食養生にも通じるんですよ」と話が始まりました。

  • Q.腸活って、そもそも何ですか?

    Dr. 食事や運動、睡眠を通じて腸内環境を整えることです

    腸内にはたくさんの菌が住んでいて、食べ物の消化や栄養の吸収を助けるだけでなく、ホルモンの働きや免疫のバランスに影響を与え、感染症やがんの予防にも関与します。夏の疲れや食事の偏りなどによって、腸内環境が乱れると、便秘や下痢だけでなく、倦怠感や、眠りの浅さ、肌トラブルなどにもつながります。

  • Q.秋におすすめの、腸活食材は?

    Dr. さつまいも、きのこ、れんこん、柿、りんごなど

    豊富に含まれる食物繊維が、腸内細菌の餌になり、分解されると短鎖脂肪酸に変わって、腸のぜん動を促進します。旬の食材は栄養価が高く、味も豊かです。蒸したり、薄味の煮物にしたりして、シンプルにいただくのがおすすめです。

  • Q.食物繊維は、どれくらい摂ればいいの?

    Dr. 1日20gを目安に、増やすときは時間をかけて

    1食あたり6~7g を目標に、便通をみながら2週間ごとになど、ゆっくりと増やしましょう。食物繊維の量は、お茶碗一杯の雑穀ご飯で2~3g、具沢山の味噌汁で1.5g、切り干し大根の小鉢で2~3gなど。りんご半分で0.5g、柿半分で1.2g、納豆1パックは3gです。
    根菜や豆類、きのこ類などは、水に溶けない食物繊維が豊富です。摂りすぎると腸が詰まりやすくなり、ガスが溜まって逆効果です。水に溶ける食物繊維が豊富な、果物や海藻なども組み合わせてとりましょう。

  • Q.特にヨーグルトが腸に良いですか?

    Dr. さまざまな発酵食品をとるのがおすすめです

    腸内の菌が多様なほど、健康にも良いとわかってきました。納豆、みそ、漬物など、昔ながらの発酵食品も日替わりで少しずつとりましょう。特にぬか漬けは、酪酸菌がとれる数少ない食品で、腸内環境を整える力がとても高いといわれています。

  • Q.避けた方が良い食べ物は?

    Dr. 揚げ物や加工食品は、ほどほどに

    秋は食欲が増す季節ですが、脂っこい天ぷらや、加工食品は胃腸に負担をかけます。高温調理で変化した糖や脂質の成分が含まれており、悪玉菌を増やしがちです。保存料や人工甘味料といった添加物も、腸内環境を乱すことが知られています。

  • Q.運動は腸にどんな影響がありますか?

    Dr. 軽い運動は腸の動きを活発にし、便秘解消に効果的です

    1日15分~30分の散歩や、椅子に座ったままできる腹式呼吸・足踏み運動などでも構いません。体を動かすことで腸の動きが促され、自然なお通じをサポートします。

  • Q.水分補給は腸にどう役立つ?

    Dr. 便を柔らかくし、腸の動きをスムーズにする手助けをします

    1日1.2~1.5リットルを目安に、涼しい気候でもこまめに飲みましょう。年齢を重ねると喉の渇きを感じにくくなるので、食事や散歩のタイミングで意識的に水分を取ってください。

  • Q.市販の便秘薬は、飲み続けても大丈夫?

    Dr. 副作用のおそれがあります

    酸化マグネシウムを含有するものは、腎機能が低下している人に不整脈などの副作用が出ることがあり、センナや大黄を含有するものは腸の自然な動きを弱めてしまいます。習慣的に継続せず、医師に相談しましょう。

  • 「昔から食べていた秋の味覚が、腸にいいなんて」と、Tさんは目を丸くして笑い、ふと呟きました。「ぬか漬け、また始めてみようかしら」そう言ってすっと立ち上がり、明るい顔で診察室を出てゆきました。風の匂いが変わり始めた午後、T さんは、新しい一歩を踏み出しました。

佐々木欧(ささき・おう)

医師。東大病院で長年アレルギーやリウマチ(膠原病)の診療に従事。
現在は秋葉原駅クリニックで内科全般の診療を手がけている。
生活のなかで実践できるセルフケアの開拓や患者さんの不安を軽くできる、
やさしい医療を目指している。

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