欧先生の診察室

会員誌『カラフル』にて連載のコラム。
日々の暮らしの中で気になる症状や、季節の変わり目のお悩みに
佐々木欧先生がやさしくアドバイスしてくれます。

2022.03.08

痛風ってなあに?

  • 高脂血症と、痛風(高尿酸血症)を治療中のWさん(58歳、男性)。数年ぶりの痛風発作で受診しました。足の指の付け根が腫れ上がり、痛くて足を引きずって歩いてきました。ここのところ、お酒の量が増えていたようです。

  • Q.父も痛風で、体質だからしょうがないんですよね?

    A. 体質も関係しますが、食生活の影響が大きい生活習慣病です

    我が国の痛風患者数は約110 万人で、この30年で約4倍にも増加しており、95% を男性が占めます。明治時代の初期頃までは痛風は日本ではほとんど見られておらず、食生活の欧米化による増加と考えられています。痛風予備軍の高尿酸血症も急増しており、成人男性の約3人に1人が該当します。

  • Q.どうして発作が起きたのでしょうか?

    A. 飲酒や脱水がきっかけになります

    痛風は、体内を循環している尿酸が、溶けきれなくなって関節内に結晶化することで起こる関節炎です。痛風の発作は夜間に起こりやすく、血中の尿酸値が高いほど、そして高い期間が長いほど起こりやすくなります。
    尿酸値が上昇する原因としては、プリン体が多い肉類・内臓類の摂取、激しい運動、飲酒、ジュース類など果糖の過剰摂取、ストレス、肥満などがあります。下痢や発汗など、脱水による水分不足でも血液が濃縮されて尿酸値が上昇します。入浴や運動で発汗した後に飲酒する際は、特に注意が必要です。

  • Q.プリン体とは何ですか?

    A. 生命活動に不可欠で、分解されると尿酸ができます

    プリン体は、遺伝情報の保管やエネルギーの貯蔵を担っており、あらゆる生物の細胞内に存在しています。使われなくなったプリン体は肝臓で分解され、老廃物として尿酸ができます。体内で尿酸は一日に約700mg産生され、食物から吸収したものが2割、細胞の新陳代謝やエネルギー代謝で生じたものが8割を占めます。
    尿酸の約3分の2は尿から、残りは便から捨てられ、排出量は1日に約700mgです。通常は収支が釣り合っていますが、尿酸の産生量や排出能力には個人差があり、そのバランスが崩れると血中の尿酸値が上昇します。

  • Q.発作の時はどうすればよいですか?

    A. 痛み止めと、こまめな水分補給が大切です

    鎮痛剤で炎症を抑えつつ、こまめな水分補給で脱水を避けて、尿酸の結晶を再度溶かして排出することが大切です。複数の抗炎症剤を併用する場合もあります。鎮痛剤の使用は腎臓や胃腸に負担をかけるため、発作を繰り返さないように、普段の生活や治療の見直しも欠かせません。

  • Q.発作が起きたときだけ治療するのではだめですか?

    A. 生活習慣病のある人では特に、大病のリスクにつながります

    高尿酸血症は当初は自覚症状に乏しく、尿酸が溶けきれなくなって初めて痛風発作や尿路結石を生じ、激痛を伴います。尿酸値高値が続くと、腎機能低下や動脈硬化、心筋梗塞といった重大な病気のリスクにつながります。高血圧など、ほかにも生活習慣病を合併している場合は特に、無症状でも治療が必要です。

  • Q.どういった食べ物に注意が必要ですか?

    A. 干物やレバー、アルコール類全般にも注意が必要です。

    プリン体は旨味成分でもあり、干物やレバー、エビ、肉・魚類など、お酒のつまみになるものに多く含まれます。摂取量は、一日400mg以内に留めましょう。
    アルコールは尿酸産生を増やすので、低プリン体をうたった商品でも飲みすぎてはいけません。果糖やキシリトールも尿酸値を上昇させるため、甘味飲料や果実ジュースは控えましょう。
    豆腐などの大豆製品はプリン体の少ないタンパク源ですが、納豆は例外です。高尿酸血症の人は、一日1パックにとどめましょう。ビール酵母やクロレラといった健康食品にも多く含まれるため、規定量を守り主治医の先生にも相談しましょう。

  • Q.おすすめの食事を教えてください

    A. 果物や野菜、豆類をふんだんに取り入れましょう

    海外での研究ですが、乳製品(特に低脂肪製品) やコーヒー、ビタミンC、果物や大豆を多く摂取する食事は、痛風の頻度を減らしたり、尿酸値を低下させる報告があります。野菜・果物・低脂肪乳製品に富んだ、高血圧予防の食事療法(DASH 食)や、地中海食によって尿酸値が低下したという報告もあります。
    地中海食では、調理にオリーブオイルを用い、野菜や果物、全粒穀物、豆類やナッツ類を豊富にとります。魚を週に2回以上とる一方で、肉類やお菓子類は月に数回程度しかとりません。抗炎症作用や抗酸化作用のある食材が多く、生活習慣病や認知症、癌のリスク低下の報告もあります。

  • ビールじゃなくても、アルコールは痛風によくないのですね、と驚いていたWさん。健康にも良いと思って納豆を2個ずつ食べていましたが、しばらくはお休みにしますと言って、処方箋を受け取って帰ってゆきました。

    こういう人は、痛風に注意
    □ 長らく血液検査を受けていない
    □ 尿酸値が高いと言われたことがある
    □ 60歳以上の男性
    □ お酒の量が多くなりがち
    □ 干物やレバー、肉類が好き
    □ 水分をあまりとらない
    □ ジュースや甘いものをよくとる

佐々木欧(ささき・おう)

医師。東大病院で長年アレルギーやリウマチ(膠原病)の診療に従事。
現在は秋葉原駅クリニックで内科全般の診療を手がけている。
生活のなかで実践できるセルフケアの開拓や患者さんの不安を軽くできる、やさしい医療を目指している。

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