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欧先生の診察室

会員誌『カラフル』にて連載のコラム。
日々の暮らしの中で気になる症状や、季節の変わり目のお悩みに
佐々木欧先生がやさしくアドバイスしてくれます。

2021.06.08

孫が食物アレルギーで…

  • 高脂血症で通院中のYさん(70歳、女性)。定期受診の際に、そういえば3歳のお孫さんが食物アレルギーになったとお話がありました。娘さん一家の帰省時に、喜んでもらおうとケーキを買っておいたけれど食べさせられなかったと、とても残念そうでした。娘さん夫婦には花粉症があるけれど、ご本人はアレルギーとは無縁でした。

  • Q.昔はいなかったし、大袈裟だなって思ってしまって。ひと口くらいならいいですよね?

    A.少しの量でも命を落とすこともあるので、油断してはいけません。

    食物アレルギーは乳幼児に最も多く、加齢と共に少なくなります。平成29年の全国調査では、6歳以下が80.5%、18歳以下が95.5%を占めました。症状は、大多数に蕁麻疹などの皮膚の症状がみられ(86.6%)、嘔吐・腹痛・下痢といった消化器症状(27.1%)よりも多いです。咳や息苦しさなどの呼吸器症状(38.0%)や、ショック症状(10.8%)を起こすことも多いため、軽い病気とは考えない方が良いです。なお、ショック症状を起こしたうちの約75%は5歳以下でしたので、特に乳幼児には間違って食べさせないように、家族みんなが協力して守ってあげなければいけません。

  • Q.ショック症状について教えてください。

    A.アナフィラキシーショックといって、蜂のアレルギーで有名な最も重い症状です。

    蜂毒によるアレルギーは、蕁麻疹や呼吸の苦しさ、吐き気、めまい・気を失う(ショック症状)など全身におよぶ重症のアレルギー発作を起こす場合が多く、適切な処置をしないと命を落としかねない油断ならない病気です。これが食物アレルギーでも起こります。蕁麻疹(皮膚)と吐き気(消化器)など、複数の臓器にまたがった症状を出すアレルギー発作のことをアナフィラキシーと呼びます。ショック症状は血圧低下によるもので、ふらつきや眠気、失禁といった症状の場合もあります。食物アレルギーでショック症状まで起こすのは10人に1人くらいですが、ショック症状がなくてもアナフィラキシーが重症であることに変わりはありません。

  • Q.アナフィラキシーショックを起こしていそうな場合には、どうすれば良いですか?

    A.すぐに救急車を呼びましょう。手元にエピペンがあれば合わせて使用しましょう。

    ショック症状や、それに準ずる重症の場合、すぐに病院で治療を受ける必要があります。特効薬のアドレナリン(エピペン)を即座に注射することも重要です。アナフィラキシーを起こすリスクが高い人は専門医からエピペンの処方を受けることができます。エピペンは注射剤ですが、誰でも簡単に使用できるように工夫してペン型の設計をされています。手元にエピペンがあっても重症かどうか見分けがつかずに使用を躊躇する場合があります。仮にアナフィラキシーではない場合にエピペンを使用しても、副作用は一時的な動悸などの軽いもので15分ほどで元に戻るので、迷ったら使用して救急車を呼びましょう。

  • Q.どんな食べ物でアレルギーを起こすことが多いですか?

    A.鶏卵、牛乳、小麦が多いですが、年齢によっても変わります。

    原因となる食べ物は、鶏卵、牛乳、小麦で全体の3分の2を占め、木の実(ナッツ) 類や落花生まで含めると8割を占めます(図1)。初回の食物アレルギーの原因となる食べ物は、年齢に応じて大きく変化します(図2)。

  • Q.アレルギーは治らないのでしょうか?

    A.成人では基本的には完治しませんが、子供は成長とともに治ることも多いです。

    アレルギーは、子供と大人とで特徴が大きく異なります。子供の場合は、成長するに従って症状が目まぐるしく変わってゆくことが多く、アレルギーマーチと呼ばれています。乳児期のおむつかぶれなどの湿疹やアトピー性皮膚炎といった皮膚症状に始まって、食物アレルギー、喘息、鼻炎と変化します。
    近年の研究の結果から、食物アレルギーは肌荒れも原因の一つだとわかってきました。赤ちゃんの肌が荒れていると目に見えない小さな傷ができています。すると食物アレルゲンが本来の吸収経路の消化管からではなく、皮膚の傷口から体内に侵入してしまいます。その結果、異物として誤認されやすくなり、アレルギー体質ができてしまうようだと考えられています。
    大人のアレルギーは子供ほどは変化が目立ちませんが、鼻炎に喘息を合併したり、花粉症と関連した果物での食物アレルギーになったりと、別のアレルギー症状が出てくることがあります。症状が軽いからといって放置しておくのは禁物です。

  • 命にかかわることがあるなんて、アレルギーは厄介ですねとため息をついたYさん。でも子供は治ることが多いと聞いて安心しました。これからは孫の食事やおやつの準備にも気をつけるようにしますと言いながら、処方箋を受け取って帰ってゆきました。

  • アレルギーに共通のしくみ=免疫の働きすぎ

    アレルギーは、体内に入ってくる物質を免疫が必要以上に排除している状態です。免疫が危険だと誤認してしまう物質(アレルゲン)には、花粉のように本来無害なものから食物のように体に必要なものもあり、薬剤や金属の場合もあるなど、実に多彩です。歯の詰め物による金属アレルギーは何年も経ってから発症する場合もあり、高齢の方に多いアレルギーです。

佐々木欧(ささき・おう)

医師。東大病院で長年アレルギーやリウマチ(膠原病)の診療に従事。
現在は秋葉原駅クリニックで内科全般の診療を手がけている。
生活のなかで実践できるセルフケアの開拓や患者さんの不安を軽くできる、やさしい医療を目指している。

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