岐阜県・福地温泉
新緑を映す、山里の温泉

福地温泉は、岐阜県高山市の奥飛騨温泉郷にある小さな温泉地です。北アルプスの山々に囲まれた標高約1,000メートルの静かな山里のなか、平家の落武者が湯治に訪れたと伝わる歴史ある湯の里です。古くは村上天皇も湯浴みをされたと伝えられ、「天皇泉」の名でも親しまれてきました。宿の数は多くはありませんが、その分秘湯感らしい静けさがあり、昔ながらの日本の原風景を残していることで知られています。そんな福地温泉を代表する宿のひとつが、創業百余年を誇る老舗旅館、湯元長座です。
宿の顔となっているのは、移築された豪農の古民家。100年から150年の歴史を持つ旧家の重厚な梁と柱が、ロビーに圧倒的な存在感を放っています。手入れの行き届いた縁側や、趣ある廊下を歩いていると、どこか懐かしい日本の原風景に引き込まれるようです。
この宿最大の魅力は、やはり湯です。焼岳と乗鞍岳の麓に湧く4本の自家源泉を持ち、湯はすべて100%かけ流し。泉質は単純泉・炭酸水素塩泉で、疲労回復や神経痛、冷え性などに効能があるとされています。大浴場の露天風呂は男女別に用意され、旅館の裏山から切り出した丸太造りの内湯では、熱すぎないやわらかな湯がじっくりと芯まで体を温めてくれます。
館内には無料で利用できる貸切風呂「山野草の湯」が3カ所あり、それぞれに露天風呂が併設されています。さらに宿の外、「泉韻の杜」と名付けられた小径の先には、川沿いに離れの貸切露天風呂「雫の湯」(壱の湯~伍の湯)や「かわらの湯」が点在しています。川のせせらぎや鳥の声を聞きながら湯に浸かる時間は、日常の喧騒を忘れさせてくれる贅沢なひとときです。
また、この宿を語るうえで欠かせないのが夕食時に囲炉裏端でいただく炉端料理です。飛騨牛や岩魚、山菜、朴葉味噌など、奥飛騨ならではの山の幸を炭火でじっくり味わう時間は、まさに旅の醍醐味。土地の恵みを丁寧に味わう、飛騨らしいおもてなしに心が和みます。
温泉に浸かり、囲炉裏を囲み、静かな夜を過ごしているうちに、疲れた体と心が少しずつ整えられていくようです。喧噪から離れ、名湯に癒やされたい、そんなときにこそ訪れたい山里の温泉宿です。
湯元 長座
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地786
☎ 0578-89-0099
