年金コラム

2018.11.20

「れいこ先生のやさしい年金」(11)「併給調整」2つ以上の年金を受け取れるようになったら?

公的年金は、被保険者が老齢・障害・遺族のいずれかの事由に該当したときに生活保障を行う制度です。では、一人の人が2つ以上の支給事由に該当し、2つ以上の年金が受け取れるようになったときはどのようになるのでしょうか?
今回は2つ以上の年金が発生した場合の受給のルール、「併給調整」のお話です。

1.併給調整の原則

(1)支給事由が同一の年金は併給されます。

公的年金は、国民年金から基礎年金が、厚生年金から厚生年金が支給されますが、支給事由(老齢・障害・遺族)の同一のものは、1つの年金とみなされて基礎年金と厚生年金の両方を受け取ること(併給)ができます。

[図表①] 併給可能なケースの例

(2)支給事由が異なる年金は選択になります。

年金の支給については、「一人一年金」の原則があります。支給事由が異なる年金の受給権が2つ以上発生した場合は、いずれか1つの年金を選択して受給します。
例えば、障害基礎年金を受給している人が65歳に到達して老齢基礎年金の受給権が発生した場合や、遺族厚生年金を受給していた人が障害状態になり障害厚生年金の受給権が発生した場合等々が考えられます。
退職時改定の時期は、退職日から起算して1ヵ月を経過した日の属する月(=退職日の属する月の翌月)になります。ただし、退職日の翌日から起算して1ヵ月を経過する前に再就職して同じ種別(一般厚生年金・公務員厚生年金(国共済厚生年金・地共済厚生年金)・私学厚生年金(私学共済厚生年金))の厚生年金に再加入した場合、改定は行われません。

[図表②] 選択のケースの例

2.併給調整の例外

65歳以降になれば、支給事由が異なる年金であっても次の組み合わせは併給されます。

(1)「老齢基礎年金+遺族厚生年金」

65歳以後は、老齢基礎年金と遺族厚生年金は併給されます。
受給権者が65歳未満の場合(老齢基礎年金を繰上げ受給している場合)は、原則通りどちらかを選択します。

(2)「障害基礎年金+遺族厚生年金」

障害と遺族は、「障害基礎年金+遺族厚生年金」の組み合わせに限り、65歳以降は併給されます。「遺族基礎年金+障害厚生年金」の組み合わせでは併給されませんので注意してください。

(3)「障害基礎年金+老齢厚生年金」

障害と老齢は、「障害基礎年金+老齢厚生年金」の組み合わせに限り、65歳以降は併給されます。「老齢基礎年金+障害厚生年金」の組み合わせでは併給されませんので注意してください。

3.ケース別併給調整

(1)65歳以降の老齢厚生年金と遺族厚生年金の併給調整

① 65歳以降の遺族厚生年金の額の決め方
老齢厚生年金と遺族厚生年金(配偶者の死亡によるものに限る)の受給権がある人は、下記のAとBの額を比較し高い方の額が、65歳以降の遺族厚生年金の額となります。
A: 遺族厚生年金(経過的寡婦加算額を含む)
B: 遺族厚生年金(経過的寡婦加算額を含む)×2/3+老齢厚生年金(経過的加算を含む)×1/2

② 老齢厚生年金≧遺族厚生年金のとき
65歳以降は、まずご自身の老齢厚生年金を受給、遺族厚生年金は老齢厚生年金より金額が高い場合に、その差額を受給することになっています。
下記のケースのように老齢厚生年金の方が高い場合には、遺族厚生年金は全額支給停止になります。(下図のピンクの部分が支給される年金です。)

[図表③]

③ 老齢厚生年金<遺族厚生年金のとき
65歳以降は、まずご自身の老齢厚生年金を受給します。遺族厚生年金は、老齢厚生年金相当額より金額が高い場合にその差額を遺族厚生年金として受給します。
(老齢厚生年金相当額については、「4.選択の注意点③」参照)

[図表④]

(2)障害基礎年金と老齢厚生年金の受給権がある場合の併給調整

障害基礎年金を受給している人に厚生年金の加入期間がある場合、65歳未満の間支給される特別支給の老齢厚生年金と障害基礎年金は選択になります。

① 特例支給開始年齢から65歳未満の間
65歳以降は「障害基礎年金+老齢厚生年金」(併給①)または、「老齢基礎年金+老齢厚生年金」(併給②)のいずれかを選択することができます。

② 65歳以降の期間
障害基礎年金と老齢基礎年金の年金額を比較すると、障害基礎年金2級の年金額は、保険料を納めた月数に関わらず、老齢基礎年金の満額と同額です。また、障害基礎年金1級の場合は、障害基礎年金2級の金額の1.25倍の額になり、かつ非課税です。そのため、障害基礎年金を選択するケースが多いようです。

[図表⑤]

(3)「障害等級 2級以上の障害厚生年金・障害基礎年金」と老齢厚生年金・老齢基礎年金・遺族厚生年金の受給権がある場合の併給調整

① 65歳歳未満の間は下記のいずれか1つを選択します。
「障害基礎年金+障害厚生年金」
「遺族厚生年金」
「特別支給の老齢厚生年金」

② 65歳以後は下記の併給パターンのうちいずれか1つを選択します。
「障害基礎年金+障害厚生年金」(「4.選択時の注意点②」参照)
「障害基礎年金+老齢厚生年金+遺族厚生年金(差額分)」
「障害基礎年金+老齢厚生年金」(老齢厚生年金>遺族厚生年金の場合)
「老齢基礎年金+老齢厚生年金」(老齢厚生年金>遺族厚生年金の場合)
「老齢基礎年金+老齢厚生年金+遺族厚生年金(差額分)

(注) (差額分)とは、遺族厚生年金から老齢厚生年金相当額を差し引いた額です。

(4)老齢基礎年金を繰上げて受給していた場合の併給調整

妻(65歳未満)が老齢基礎年金の繰上げ受給をしていた場合で、夫が亡くなり遺族厚生年金が発生したら、妻が65歳になるまでは繰上げ受給の老齢基礎(老齢厚生年金>遺族厚生年金の場合)年金と遺族厚生年金はどちらかを選択することになります。
一般的には、遺族厚生年金を選択することになるケースが多く、せっかく繰上げたにもかかわらず、老齢基礎年金は65歳まで支給停止となります。こんなことなら繰上げるのではなかったと思っても、繰上げ受給は取り消すことができません。65歳からは、遺族厚生年金と老齢基礎年金は併給されますが、老齢基礎年金の金額は繰上げにより減額されたままの額が支給されます。

[図表⑥]

4.年金を選択するときの注意点

(1)有利な年金の選択について

2つ以上の年金が発生した場合、1つを選択することになりますが、どの選択が有利になるのかについては、年金事務所へ年金証書、基礎年金番号、マイナンバーカード等を持参して金額の照会をしてください。

(2)子の加算額について

「障害基礎年金+障害厚生年金」を選択した場合は、障害基礎年金に子の加算があれば老齢厚生年金の子に対する加給年金額は支給停止されます。

(3)遺族厚生年金から差し引く老齢厚生年金相当額について

遺族厚生年金と老齢厚生年金を併給する際の遺族厚生年金の支給額は、遺族厚生年金の額から老齢厚生年金相当額を差し引いた残りの額です。その時に差し引く老齢厚生年金相当額とは、在職老齢年金による支給停止が行われている場合は、支給停止前の金額です。
また、基金から代行部分の金額を受給している場合は代行部分も含めた金額になります。

(4)支給事由の異なる二つ以上の年金を受け取れるようになって、年金の選択が必要になったときは、年金事務所へ「年金受給選択申出書」を提出します。

年金の選択の変更は、将来に向かっては自由に行うことができますが、原則遡っての変更はできません。
変更手続後の年金は、手続の翌月分からとなります。

社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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