年金コラム

2008.01.17

アメリカの年金(1)

こんにちは、社会保険労務士の土屋です。本日も皆さんにとって大変関心の高い年金について、お話しをさせていただきます。

今回は、アメリカの年金についてお話しします。

仕事で海外に出張したり、一時的に日本の外国支社に勤務するなど、日本を離れ海外で働くことが、当たり前の時代になりました。また、若いうちから海外に飛び出し、海外で活躍する日本人も多くなりました。また、それに比例し、仕事のために海外から日本にやってくる外国人も多くなりました。

そうしたなか、国は外国とお互いの年金制度について協定を締結し、将来お互いの国で働く自国民が困らないようしています。
今年3月から、日本とカナダとの間に「社会保障に関する協定」が発効されます。協定発効後は、カナダの日本支社等に一時的(在留期間が5年以内)に派遣される日本法人の被用者等については、相手国の年金制度に加入しなくてもよいことになります。
この社会保障分野における協定は今回のカナダで7ヶ国目になります。過去にはドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、べルギー、フランスとの間で結ばれています。

この協定が締結される前までは、日本の法人に働いている社員が、法人の外国支社に一時的に派遣される場合、派遣された国の年金制度に加入することが義務付けられ、派遣先の国の保険料も負担しなければなりませんでした。しかも、派遣された社員はいずれ日本に戻るわけですから、日本の年金制度をやめるわけにはいきません。結果的に2ヶ国の年金制度に二重加入することになり、企業の保険料負担も大きく、企業の海外進出の障害にもなっていました。

そこで、短期的に海外に派遣される人については、相手国の制度への加入は免除し、自国の制度のみ加入し続けられるよう、当事者同士の国で協定を結んだわけです。

カナダ、ドイツ、フランス、ベルギー、韓国、イギリス、アメリカとの間で結ばれた協定では、5年以内に帰国する被用者(自営業も含む※)であれば、相手国の年金制度に加入することが免除されます。派遣される被用者は、日本の社会保険事務所に所定の手続きを行う必要があります。
※自営業の場合、相手国でも自国と同じ事業を行うことが条件。

したがって、協定発行後の国同士では5年以上その相手国に居住しなければ、相手国の年金制度とは一切かかわりがなくなることになります。では、協定発行前に二重加入していた期間はどうなるのかといいますと、各国と定めた協定に基づいて受給できるケースがあります。

外国に在留経験のある方で、一番該当する可能性が高い国といえば、やはり、アメリカの年金ではないでしょうか。アメリカとは2005年10月1日に協定を結んでいますが、協定発効前にアメリカの日本支社に勤務した経験のある人や、アメリカの企業に以前勤務し、帰国後は日本の年金制度に加入していた方、あるいは現在加入されている方は、かなりの数に登るのではないでしょうか。

日米が結んだ社会保障協定では、日本の年金制度とあわせて10年の期間があれば、アメリカの年金を受給することができるとされています。ただし、アメリカで最低でも足掛け2年働き、6クレジット(※)の社会保障税を納めていることが条件になります。
※アメリカで働く人は社会保障税(年金と医療の2種類)を納めなければなりません。年金は給与所得の6.2%が強制的に徴収されます。そして、一定の給与所得に対してクレジットが与えられます。クレジットは1年で最大4クレジットまでしか与えられません。詳しくは次回「アメリカの年金2」でご説明します。

アメリカの年金は40クレジットという社会保障税を納めなければ、年金を受給できません。クレジットは1年間に4クレジットしか得ることができませんので、年金を受給するためには、最低でも10年必要になります。

ただし、前記のようにアメリカに足掛け2年在留し、6クレジット以上を取得している人は、協定により、日本の年金制度と通算することができます。つまり、日本の年金制度と通算して10年以上の期間があれば、アメリカの年金を受給できる資格があることになります。

該当する方はかなり多いのではないかと思います。年金受給は満額受給が65歳から67歳(生年月日により違います。)ですが、繰上受給は62歳からです。請求は始めに日本の社会保険事務所に確認請求という手続きを行います。その後、アメリカの年金のアジアの出先機関であるマニラの事務所に請求を行うことになります。請求は当然英文になりますので、語学に自信のない方や手続きに不安な方は、社会保険労務士や専門のコンサルタントにご相談することをお奨めします。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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