年金コラム

2008.05.15

「ねんきん特別便」を受け取ったら?(1)

こんにちは、社会保険労務士の土屋です。今回も皆様にとって、大変関心の高い年金についてとりあげさせていただきます。
今回から「ねんきん特別便」に関わる問題について、少し回数をとってお話しをさせていただきたいと思います。

第1回目は女性の年金についてお話しをさせていただきます。女性の場合、男性の方と比べて、結婚や夫の転職等で年金の加入や制度上の切り替えの手続きが、度々必要になります。その為、年金の記録が複雑になっているケースが多いようです。

「ねんきん特別便」が送付された女性の方の多くは、こうした制度上の手続きが行われていなかったり、また、不適切な手続きによって、自分の年金記録が統合されないままになっていることが原因であると思われます。

また、平成18年度以降はすべての企業に65歳までの雇用が義務付(平成25年度から完全実施。現在段階的に実施)けられましたので、夫が60歳定年後も継続雇用で会社に残るというケースが当然のように生じています。その影響で、夫の被扶養者になっている妻の年金制度への加入も、夫と妻の生年月日によって様々なケースがでてきました。年金はただでさえ複雑ですから、疑問に思う点については、何度でも行政の窓口や電話で確認していただき、よくご理解いただいたうえで、適正な手続きを行い、損をしないようにしていただければと思います。

第3号被保険者の手続きは会社が行う

現在は、たとえば、女性の方が結婚をして会社を退職し、夫の被扶養者になった場合の手続き(第3号被保険者の手続き)は夫の会社を通じて行います。ただ、現状の方式に変わる以前は第3号被保険者になる方自身が行政の窓口に行って手続きをしなければなりませんでした。

その為、第3号被保険者に該当しても、手続きをされないまま放置していた方が多く発生していました。そうした状況を改善するために、国は過去に数回(※1)、(※2)特例納付制度を設けて手続きをしてもらうよう呼びかけました。

※1)特例期間を設けその期間中に手続きを行えば、第3号被保険者に該当した期間については、過去に遡って第3号被保険者の期間とみなして年金計算の基礎期間になりました。
特例納付を行った期間については第3号被保険者期間となりますから、保険料負担はありません。ただし、昭和36年4月以降の20歳から60歳であった期間に限られます。
なお、それ以外の未納期間(2年間は遡って保険料を納付できます。)は年金の資格期間にも年金の計算基礎期間にもなりません。

※2)現在は特例期間ではありませんので、原則通り2年間しか遡れませんが、やむを得ない事情があれば、社会保険事務所で申請することにより、遡って第3号被保険者であったことが認められる場合があります。

こうした改善策もあり現在では、第3号被保険者の手続きを行っていない方はかなり減っているようですが、60歳以降の方や年金受給者の方にはまだ手続きがもれている方がいます。そういう方の多くは「ねんきん特別便」が送付されています。
こうした方は、社会保険事務所でご自分の記録を確認し、前記の申請手続きをしていただき、記録を訂正してもらうことが必要です。

平成9年1月1日からは基礎年金番号で記録を管理

女性の方(男性の方にもいますが)で複数の年金手帳を持っている方が結構おられます。年金手帳のなかに記載されている基礎年金番号が同じ番号であれば、問題はないかもしれませんが、番号が違っている場合には、社会保険事務所で調べる必要があります。基礎年金番号制度は平成9年1月1日から始まり、その時点で加入している制度の番号がそのまま基礎年金番号となりました。平成9年1月1日以降はこの基礎年金番号で年金記録は管理されましたので、重複して基礎年金番号が作られないかぎり、加入記録はきちんと管理されているはずです。

ただし、平成9年1月1日前に婚姻等で名前が変わっている方の場合は注意が必要です。結婚前の旧姓や生年月日の違いから、複数の年金手帳を持っている方で、基礎年金番号以外の番号の記録が、基礎年金番号に統合されていないままの状態の方がいます。また、名前の読み方の違い「幸子」を「サチコ」と読むか「ユキコ」と読むかの違いなどで、複数の番号がある方もいます。 思いあたる方は、早急に社会保険事務所で記録を調査してもらうことが必要です。

また、平成9年1月に配布された基礎年金番号通知書は厚生年金保険に加入していた方については会社を通じて、配布を行いました。事業主の方は毎日業務でお忙しいですから、大変残念なことですが、書類の意味を十分理解せずに、一部事業主の方の中には従業員に配布をせずに、そのままゴミと一緒に廃棄されていたケースもあったようです。

夫が60歳定年後に妻の年金加入は?

夫が60歳になり定年退職をしても、そのまま会社に継続雇用で働き続けられるようになりましたが、その場合、25年以上年金に加入し、1年以上厚生保険に加入した夫は60歳(昭和28年4月1日以前生まれの方)から年金を受けることができます。在職中(社会保険に引き続き加入)であれば年金は報酬と年金の合計額によって減額調整されます。その夫に扶養されている妻(第3号被保険者)の年金加入はどうなるかですが、一般的なケースで妻が年下であれば、そのまま妻が60歳になるまでは第3号被保険者のままで、手続きは必要ありません。ただし、妻が60歳になれば、それ以降は第3号被保険者ではなくなります。もし、年金加入期間が25年以上なければ、60歳以降は自分で保険料を支払う必要がありますし、25年以上の加入期間があっても65歳になるまで(加入期間の上限40年まで)はご自分で保険料を支払い、任意で加入することができます。なお、妻自身が25年の年金加入期間があり、1年以上の厚生年金の加入期間があれば、自分の年金を60歳(昭和33年4月1日以前生まれの方)から受けることができます。

もし、夫が短時間勤務等で社会保険に加入しない場合、それまで第3号被保険者であった妻が60歳未満の場合は、第1号被保険者となり、保険料を負担しなければならなくなります。妻の方が年上で、夫が60歳になった時点で、すでに妻の年齢が60歳以上になっていれば、保険料を負担する必要はありません。(妻が65歳未満であれば、任意加入することはできます。また、資格期間の25年にたりなければ、昭和40年4月1日以前生まれの方であれば、70歳まで国民年金に加入することができます。)

なお、夫の厚生年金の加入期間が20年以上あって、妻が65歳未満であれば、夫の年金に加給年金が加算されます。ただし、夫が定額部分(厚生年金の基礎部分)の年金を受けられるようになってから、妻が65歳になるまで受けられます。その後、妻が65歳になり自分の年金をもらうようになると、夫の加給年金は妻の年金に付け替えられます。この年金のことを振替加算といいます。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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