年金コラム

2009.03.04

障害年金(1)

こんにちは社会保険労務士の土屋です。今回は障害年金のお話しです。
保険厚太郎君(21歳、サラリーマン)と年金国次郎君(21歳、大学生)の例をあげて説明させていただきます。

障害年金は加入期間が問題

厚太郎君と国次郎君はともに1987年の10月生まれで高校の同級生です。厚太郎君は高校卒業後しばらくフリーター(国民年金未加入)をしていましたが、昨年の10月から就職して厚生年金に加入し、初めて年金手帳をもらいました。一方、国次郎君は現役で大学に合格し現在大学生ですが、母親にアドバイスを受け、20歳になってすぐ国民年金の学生納付特例の手続きをしていました。

普段から仲のよい二人は、共通の友人達と数人でスキー旅行に車で出かけましたが、大変不幸なことに旅行の帰りに事故に遭遇し、二人とも下半身に重大な怪我を負ってしまいました。現在も入院中ですが、医者からは最悪の場合、二人ともなんらかの障害が残る可能性があるかもしれないと言われています。

このケースの場合、二人とも障害年金が受給できるでしょうか?答えは、国次郎君は受給できますが、厚太郎君は障害年金が受給できません。厚太郎君は会社に就職してからは厚生年金保険料を納めていますが、国次郎君は保険料を猶予してもらっているので、国民年金の保険料をまだ一銭も支払っていません。読者の方のなかには「なぜ?」と思われる方もいるかもしれませんが、これは障害年金の制度上の問題からこのようになります。

まず、厚太郎君がなぜ障害年金を受給できないかは加入期間が問題だからです。

厚太郎くんの場合・国次郎くんの場合

20歳到達時の手続きが大事

障害年金が受給できるためには、初診日(障害の原因となる疾病や傷害で初めて医者にかかった日)の前日の属する月の前々月までの加入期間が、全体の加入期間の3分の2以上なければならないという条件があります。もし、3分の2条件を満たせなくても、その方の年齢が65歳未満であれば、初診日の前日が属する月の前々月から遡って1年間に滞納期間がなければ、受給資格はクリアできます。厚太郎君の場合はこの二つの条件とも当てはまりませんので、残念ながら受給資格はありません。

一方、国次郎君の場合、20歳到達時に学生納付特例制度の手続きを行っていましたので、20歳から障害年金の資格期間として認めらます。したがって、障害年金(障害等級2級に該当する、つまり障害基礎年金に該当する場合)を受給することが可能です。

学生納付特例制度とは大学生や専門学校等に通う学生は学業に専念してもらい、保険料の支払いは卒業後一定の間猶予してもらえる制度です。したがって、学生である猶予期間の間にもし障害等になってしまっても、障害年金が受給できます。納付は手続き後10年の間に納付することができます。もし、将来猶予してもらった間の保険料を納付しなければ、猶予期間については、25年の資格期間の計算には入れてくれますが、保険料納付済期間にはなりません。

猶予を受けるためには一定程度の所得以下であることが必要です。夜間生で昼間働いていたり、自営等で高収入のある方は対象になりません。
その他に卒業後もフリーター等で収入の少ない方には、若年者納付猶予制度があります。30歳までの若年者が対象ですが、平成27年6月までの時限措置となっています。

また国民年金には、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除という保険料免除制度があります。それぞれに収める保険料に応じて保険料納付済期間となり、将来の年金額の計算基礎になります。この点は、前記の学生納付特例や若年者納付猶予制度とは違います。ちなみに、全額納付した場合の年金計算を1とすると、全額免除の場合はその3分の1、4分の3免除の場合はその2分の1、半額免除の場合はその3分2、4分の1免除の場合はその6分の5を保険料納付済期間として計算してくれます(国庫負担3分の1での計算です)。
もし、将来余裕ができて、免除してもらった分も収めたいということであれば、手続き後10年経過するまでであれば、納付することが可能です。

ただし、免除制度の場合は同居する家族(親等)に一定の収入があると免除を受けることができません。一方、学生や若年者納付猶予の場合は親と同居していても、本人とその配偶者に一定程度の収入がなければ、手続きは可能です。
所得やその他の詳しい条件については社会保険庁のホームページをご覧ください。

障害年金は障害の程度が一定の認定基準に該当することが必要

保険料納付要件が満たせれば、障害年金の申請をすることができます。その条件を満たしたうえで、その障害の程度が一定程度の条件にあてはまらなければなりません。その判断は、初診日から1年6ヶ月経過後(または症状が固定した日)の障害認定日にその障害の程度が、国が定める障害等級の基準に該当するかどうかによります。

障害等級は、国民年金から受ける障害基礎年金の場合には、1級と2級がありますが、障害等級の1級に該当する方とは、日常生活を行ううえで、ほとんど全介助が必要な方とされています。また、2級に該当する方とは、全介助までは必要ないが、一定程度人の手をかりなければ日常生活が制限を受ける方とされています。一方、厚生年金保険の場合には、国民年金と同様に1・2級がありますが、その他に、日常生活では問題ないが、労働する上で制限を受けるという状態の方が該当する3級の障害厚生年金があり、さらに3級より軽い程度の障害の方が該当する障害手当金の制度があります。

障害基礎年金1級の年金額は平成20年度価格で、990,100円(子がいる場合には子一人につき227,900円加算、第3子以降75,900円)で、2級の年金額は792,100円(子の加算は1級と同様)です。障害厚生年金は認定日までの被保険者期間(初診日から1年6ヶ月経過または症状固定日)の報酬に比例しますが、加入月数が300月未満の場合には300月で計算してくれるという底上げの制度があります。また、配偶者がいる場合、障害厚生年金には加給年金227,900円が加算されます。

相談・手続きは社会保険事務所または社会保険労務士へ

心臓のペースメーカーや人工弁を装着したとか、人工透析を開始した等明らかに障害の程度が障害等級に該当する場合であれば、障害認定日が明らかですので、その他の条件(保険料納付要件等)を満たしていれば、障害年金の請求は問題ないですが、精神疾患や持病を持っている場合(糖尿・高血圧)など長患い(ながわずらい)の場合や、転院をしたなどで診断書がとれないとか、初診日が認定できないとか、保険料納付要件がどうかなど、一般の方では判断に困るケースや必要な書類の用意などもでるケースもありますので、もし、ご相談をされる場合には、社会保険事務所の相談コーナーをご利用されるか、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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