年金コラム

2011.07.06

老齢年金の手続きについて(1)

こんにちは。社会保険労務士の土屋です。
今回は老齢年金の手続きについてお話しします。老齢年金は25年(300月)という資格期間を最低でも満たしていないと受給することができません。25年という期間は他の国と比べて長すぎるのではないかという議論があり、いずれ短縮される可能性が高いですが、現在の制度では会社や役所等に勤め、厚生年金や共済組合に加入した期間や自分で国民年金の保険料を納付した保険料納付済期間(第3号被保険者期間も含む)と保険料免除期間や合算対象期間(カラ期間)とを合わせて最低でも25年(300月)以上ないと年金を受給することはできません。
では実際の年金の手続きはどうなるのかというと、資格期間を満たした人が受給年齢に達した場合には日本年金機構から請求書が送付されてきます。その請求書を誕生日の前日以降に年金事務所や、全国社会保険労務士連合会が運営する街角の年金相談センター(年金請求書の提出も当然できます)に提出すれば手続きは完了します。年金支給は原則65歳ですが、厚生年金(共済年金)に加入した期間が1年以上ある人は生年月日によっては60歳から年金を受給することができます。

生年月日によって年金の受給年齢は違います

昭和61年4月の年金大改正で年金の支給開始年齢は原則65歳と決まりました。ただ、いきなり65歳支給にすることはできないので、当分の間は60歳から支給することとしました。その年金のことを特別支給の老齢厚生年金といいます。特別支給の老齢厚生年金を受給できるのは、厚生年金や共済年金に加入した期間が1年以上ある人です。ただ、この特別支給の老齢厚生年金は現在支給開始年齢が引き上げられています。2013年4月以降に60歳に達する男性と2018年4月以降に60歳に達する女性(※)からこの特別支給の老齢厚生年金を受給する年齢が61歳以降になり、2021年4月以降に60歳になる男性と2026年4月以降に60歳になる女性の年金は65歳からになります。つまり、特別支給の老齢厚生年金を受給することができず、本来の老齢基礎年金と老齢厚生年金のみを65歳から受給することになるわけです。いよいよ原則の65歳年金支給の制度がスタートするわけです。現在法律では企業の定年は60歳以上と定められています。高年齢者雇用安定法により65歳まで雇用措置の義務が企業にあるとはいっても、60歳以降の賃金は60歳前の賃金より低下することは企業の実情からいって避けられない現実です。2013年まで後2年あまりですが、企業の労務管理や該当する人の60歳以降の生活設計にとっては非常に大きな問題であることは間違いありません。
※共済組合加入の女性については共済年金から受給する特別支給の老齢厚生年金の支給年齢引き上げは男性と同じです。

具体的には下記の通りの仕組みになっています

特別支給の老齢厚生年金は、請求を遅くしても増額されない!

60歳から65歳になるまでの間に支給される特別支給の老齢厚生年金は受給する年齢(60歳から64歳)以降に手続きをしても1円も増えません。よく60歳以降も在職している方で年金の手続きをしていない方を見かけますが、年金は手続きをした日から5年以上は遡って受給できません。5年経過した分については時効になり受給できなくなりますので、早めに手続きをしましょう。
※下記【年金の繰り下げ支給・繰り上げ支給の制度】を参照ください。

具体的には下記の通りの仕組みになっています

※定額部分とは厚生年金の基礎年金部分(厚生年金加入者も基礎年金に加入)、報酬比例部分とは厚生年金の給与とボーナスからの保険料に比例した部分です。

年金の繰り下げ支給・繰り上げ支給の制度

  • 年金の繰り下げ支給
    60歳から65歳になるまでの間に支給される特別支給の老齢厚生年金は繰り下げすることはできませんが、65歳から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金は繰り下げすることが可能です。
  • 年金の繰り上げ支給(全部繰り上げ)
    厚生年金の加入期間が短い人は60歳から65歳になるまでの間に支給される特別支給の老齢厚生年金の年金額が十分な額とはいえません。そのような場合、希望すれば65歳から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金を繰り上げて受給することができます。繰り上げすると繰り上げた年齢(1ケ月につき0.5%減額)に応じて減額されますので、十分検討してから手続きをする必要があります。
  • 一部繰り上げ支給できる人
    昭和29年4月1日以前生まれの女性は60歳から65歳になるまでの間、定額部分が支給されますが、希望によって全部繰り上げの他に一部繰り上げをすることができます。具体的には定額部分が支給される前に手続きを行いますが、支給額等については事前に年金事務所や街角の年金相談センターで確認をしてから行ってください。当然一定額が減額されますし、事後重症の障害年金が受給できないといった不利が発生します。

生年月日によって受給できる年齢は下記の通り違います

※支給開始年齢時に資格期間の25年(300月)を満たしていない場合や1年以上の厚生年金の期間のない人でも支給開始年齢以降に期間を満たした場合には満たした翌月から年金を受給することができます。

  • 年金の繰り下げ支給
    65歳から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金は66歳以降に繰り下げて受給することができます。繰り下げは老齢基礎年金と老齢厚生年金の二つ一緒でも、別々でも可能です。1ケ月単位で増額(1ケ月につき0.7%増額)されます。手続きは65歳になる1ケ月前に送付される請求書(葉書)で行うか、年金事務所や街角の年金相談センターで手続きします。

  • 25年未満の被保険者期間だけで年金を受給できる人
    昭和31年4月1日以前生まれの人は生年月日により下記の表の厚生年金または共済年金の加入期間(24年~20年)でも受給できる場合があります。
    生年月日 必要な加入期間
    昭和27年4月1日以前生まれ 厚生年金保険(または共済年金)20年
    昭和27年4月2日~28年4月1日生まれ 厚生年金保険(または共済年金)21年
    昭和28年4月2日~29年4月1日生まれ 厚生年金保険(または共済年金)22年
    昭和29年4月2日~30年4月1日生まれ 厚生年金保険(または共済年金)23年
    昭和30年4月2日~31年4月1日生まれ 厚生年金保険(または共済年金)24年
  • 60歳以降も国民年金に任意加入できます
    国民年金の加入期間は20歳から60歳までですが、40年の加入期間にまだ達していない人や25年の加入期間に足りない人は65歳まで任意で加入することができます。また、65歳になっても25年に足りない方(昭和40年4月1日以前生まれ)は70歳まで引き続き加入することができます。
  • 厚生年金には70歳まで加入
    60歳定年後再雇用等で働く人で正社員と同等の労働時間(正社員の4分の3以上)で働く人は社会保険にも加入することになりますので、厚生年金にも加入することになります。共済組合や私学共済に加入した人で60歳以降に初めて厚生年金に加入した人は1ケ月で受給権が発生しますが、1年以上加入した時に65歳前でも厚生年金を受給することになります。ただし、手続きが必要です。

老齢(60歳以降)になった時の年金手続きについて

受給資格(加入期間25年以上)がある人には誕生月の3ケ月前に年金請求書が日本年金機構から送付されます。請求書は住所地等の年金事務所に誕生日の前日以降に提出します。提出後約2ケ月経過後に年金証書が送付され、50日後の直近の年金振込日(原則偶数月ですが、初回は奇数月の場合もあります)に年金が振り込まれます(日数はあくまで目安です)。
※年金請求書の受付は全国どこの年金事務所及び街角の年金相談センターでも対応しています。
請求書の他に添付書類が必要な場合があります。

受給者の加入期間等 必要な書類
配偶者のない方
または厚生年金加入期間が20年未満の方
年金請求書、年金手帳(配偶者のいる方は配偶者の年金手帳)、住民票(または住民コードがわかるもの)預金通帳、印鑑、雇用保険被保険者証(直近7年以上雇用保険に加入期間のない方や役員で雇用保険に加入していない方は不要)
厚生年金に20年以上加入した人で配偶者のいる方 年金請求書、年金手帳、配偶者の年金手帳、戸籍謄本、住民票(家族全員が記載されているもの)、雇用保険被保険者証(直近7年以上雇用保険に加入期間のない方や役員で雇用保険に加入していない方は不要)、配偶者の所得証明等が必要

預金通帳は請求書に金融機関(ゆうちょ銀行可)で証明印をもらえば不要です。
また、ハローワークに求職の申し込みを行い雇用保険から基本手当を受給している方は、基本手当が優先支給となるため基本手当を受給している間は年金が停止になります。したがって、年金事務所に年金の停止届出を提出する必要があります(停止届を提出しないと年金は支給保留になります)。
基本手当受給終了後は特に続きは不要です。自動的に受給が開始されます。ただし、事後精算(基本手当を受けた日が1日もない月は年金が支給)で、約3ケ月位してから受給開始になります。

  • 誕生月の3ケ月前に書類が送付されない方
    資格期間の300月を満たしていないと、受給資格が確認できないので書類が送付されません。年金事務所でご自分の加入記録を確認してください。
  • 厚生年金に加入した期間が1年に満たない方、または厚生年金に加入したことがない方
    年金は65歳から受給できます。65歳の3ケ月前に年金請求書が送付されます。ただし、資格期間の300月を満たしていることが条件です。ご自分の年金記録を年金事務所や街角の年金相談センターで確認することをお勧めいたします。
【合算対象期間(カラ期間)を入れて資格期間を満たす方】

合算対象期間(カラ期間)を含めて資格期間の25年(300月)を満たす方については請求書が送付されません。
合算対象期間(カラ期間)とは下記のような期間です。

  • 昭和36年4月~昭和61年3月までの下記の期間
    • 厚生年金被保険者(サラリーマン)の妻だった期間(20歳~60歳)
    • 厚生年金受給者または受給資格を満たした者の妻だった期間(20歳~60歳)
    • 障害年金の受給者の妻だった期間(20歳~60歳)
  • 平成3年3月以前に20歳以上の大学生だった期間(ただし昼間分のみ)等々

上記の期間を入れて資格期間を満たす方は年金事務所で自分の年金記録を確認し、受給資格確認後に請求手続きを行うことになります。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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