年金コラム

2013.05.15

平成25年4月からの年金手続きの改正点について

みなさん、こんにちは。社会保険労務士の土屋です。

今年の4月から男性(昭和28年4月2日以降生まれ)の場合、厚生年金の加入期間が1年以上あっても年金の支給開始は61歳からになりました。したがって、受給権のある人には受給年齢に到達する3ヵ月前に請求書が送付されますが、男性の場合、今年の4月からは60歳到達月の3ヵ月前ではなく、61歳到達月の3ヵ月前に送付されることになりました。(昭和30年4月2日以降生まれの方は62歳到達月の3ヵ月前に送付されるというように支給開始年齢が徐々に引き上げられます。)請求書送付時期が以前より遅くなり、60歳時点ではなにも送付されないかというとそうではなく、請求書の代わりに「年金に関するお知らせ(老齢年金のお知らせ):葉書形式」が送付されます(平成25年2月18日から該当者に送付開始)。みなさんの中にはすでにこのお知らせを受け取っている方もいらっしゃると思います。葉書は青字で印字されており、60歳時点で(実際は送付時点)の年金記録と年金見込み額(60歳到達月まで現在の制度にそのまま60歳まで加入したと仮定して年金額を計算。※厚生年金基金加入分(代行部分)は計算されません。)等が掲載されています。

一方で女性の場合は、厚生年金の支給開始は60歳からで、支給開始年齢が61歳に引き上げられるのは昭和33年4月2日生まれの人からになりますので、しばらくは、従来通り60歳到達月の3ヵ月前に請求書が送付されます。
※厚生年金の加入期間が1年未満の人は65歳から受給します。61歳以降も厚生年金に加入し期間が1年に達した場合は、達した月の翌月から受給します。

年金支給開始年齢表

生年月日
(厚生年金の男性・共済年金は男女共通)
支給開始年齢
定額部分 報酬比例部分
昭和28年4月2日~昭和30年4月1日生まれ なし 61歳
昭和30年4月2日~昭和32年4月1日生まれ なし 62歳
昭和32年4月2日~昭和34年4月1日生まれ なし 63歳
昭和34年4月2日~昭和36年4月1日生まれ なし 64歳
昭和36年4月2日以降生まれ なし 65歳

※共済年金の支給開始年齢は男女同じです。

生年月日
(厚生年金の女性)
支給開始年齢
定額部分 報酬比例部分
昭和27年4月2日~昭和29年4月1日生まれ 64歳 60歳
昭和29年4月2日~昭和33年4月1日生まれ なし 60歳
昭和33年4月2日~昭和35年4月1日生まれ なし 61歳
昭和35年4月2日~昭和37年4月1日生まれ なし 62歳
昭和37年4月2日~昭和39年4月1日生まれ なし 63歳
昭和39年4月2日~昭和41年4月1日生まれ なし 64歳
昭和41年4月2日以降生まれ なし 65歳

※厚生年金の場合、昭和29年4月1日以前生まれの女性は64歳から定額部分(厚生年金の基礎部分)が支給されます。

日本年金機構から送付される書類一覧(生年月日別に送付時期と送付書類が違います。)

生年月日 60歳到達月の3ヵ月前 年金受給年齢月の3ヵ月前
昭和33年4月1日以前生まれの女性 年金請求書が送付
(黄緑色の封筒)
 
昭和28年4月2日以降生まれの男性 年金に関するお知らせ
(紫字で記載の葉書)
年金請求書が送付
(黄緑色の封筒)
昭和33年4月2日以降生まれの女性
厚生年金加入期間が1年未満の人
(資格期間25年を満たしている)
年金に関するお知らせ
(青字で記載の葉書)
65歳到達月の3ヵ月前に年金請求書が送付
(黄緑色の封筒)
加入資格期間を満たしていない人 年金加入期間確認について
(緑字で記載の葉書)
 
「カラ期間」を使って受給資格を満たす人
60歳以降の受給年齢で請求手続きをしていない人 受給年齢到達月の3ヵ月前に請求書送付 年金請求書が再度送付
(黄緑色の封筒)

※加入期間を満たしていない人や「カラ期間(合算対象期間)」を使って年金を請求する人は年金事務所または街角の年金相談センターに相談した上で年金請求書を提出します。

◆60歳から繰り上げて年金を受給することも可能。

年金の支給開始が61歳になる人は60歳から年金を受け取ることができないのかというとそうではありません。本来は61歳以降に受給できる人であっても60歳から請求することは可能です。この制度のことを年金の繰り上げ請求手続きといいます。請求される人は年金手帳や必要な書類をそろえて年金事務所や街角の年金相談センターで手続きを行います。繰り上げ請求ですから、繰り上げた年齢に応じて本来受給できる年金額から減額されて年金が支給されることになり、65歳になっても年金額が増えることはありません。(※請求後厚生年金に加入した分については65歳以降(または退職後)に加算されます。)

繰り上げ減額は老齢厚生年金(報酬比例部分)については、繰り上げた年齢月から報酬比例部分の本来の受給年齢月までの月数×0.5%で計算されます。また、老齢基礎年金については繰り上げた年齢月から65歳までの月数×0.5%で計算されます。なお、繰り上げ手続きは老齢基礎年金と老齢厚生年金(報酬比例部分)と同時に繰り上げなければなりません。

繰り上げの仕組み

繰り上げ請求すると65歳から支給される差額加算(20歳前や60歳以降の厚生年金分等は差額加算として支給されます。)も支給されますが、こちらも減額支給されます。また、繰り上げ請求すると減額された年金額はその後増額されることはありませんので、十分検討してから請求することが必要です。※請求後65歳以降の厚生年金加入分は65歳以降(または退職後)に加算されます。

◆「同日得喪」の手続きの変更(平成25年4月~)

厚生年金に加入しているみなさんの給与から控除される社会保険料は、毎年7月に行われる算定基礎届を提出することによって決められています。具体的には4・5・6月の3ヵ月間に支給された報酬の平均額を元に、その年の9月から翌年の8月までの社会保険料を算定する標準報酬月額が決定します。これを定時決定といいます。しかしながら、会社によっては途中昇給等で報酬が増額される場合や雇用契約の変更や降格等で減額される場合があります。そうした場合には定時決定の時期をまたずに標準報酬月額を変更し社会保険料を変更します。この手続きを随時決定といいます。随時決定は変更された報酬が3ヵ月間継続して支給された後の4ヵ月目から変更され、社会保険料を納付することになります。

定年退職後に1日の空白もなく引き続き同じ会社に再雇用され、その時点で給与が大幅に下がった場合でも、被保険者資格は継続しているとみなされる為、以前は随時改定の扱いとされ、変更後3ヵ月間は変更前の高い報酬で算出された社会保険料(健康保険・厚生年金)を負担しなければなりませんでした。また、在職しながら年金を受給する場合は変更前の高い報酬で在職調整されていました。

こうした定年退職者の不利益を解消するため、平成8年5月に特別支給の老齢厚生年金の受給者で、定年退職後に継続して同じ会社に再雇用される場合に限って、事業主との使用関係が一旦中断したものとみなし、被保険者資格喪失届と被保険者資格取得届を同時に提出できるようになりました。この手続きを同日得喪の手続きといいます。これにより、3ヵ月間の経過を待たずに再雇用された月から新たな標準報酬月額に基づく保険料が徴収され、事業主・従業員ともに保険料負担が軽減されました。

その後、平成22年9月から、定年退職した場合だけでなく、特別支給の老齢厚生年金を受ける権利のある被保険者が退職後継続雇用された場合は、同日得喪の取り扱いとしてすべて再雇用月から標準報酬月額が変更可能になりました。

そして今年の4月からは男性の場合60歳から年金が支給されない、つまり、特別支給の老齢厚生年金の受給者になれない期間が生じる為、同日得喪の手続きができない状況になった為、法律が改正され、従来の特別支給の老齢厚生年金の受給者という要件をなくし、平成25年4月1日以降に60歳以上で再雇用により報酬が変更になった場合には同日得喪の手続きができるようになりました。(※平成25年3月31日までは特別支給の老齢厚生年金の受給者であることが要件です。)これにより、定年に達する前に退職して継続再雇用された人(60歳以上)や、定年制のない会社で継続再雇用された人等が新たな対象になりました。

同日得喪の手続きは、事業主が資格喪失届と資格取得届を合わせて、事業所を管轄する年金事務所に同時に提出します。その際に、再雇用者と新たな雇用契約を締結したことを明らかにできる書類(就業規則の写し、再雇用時の雇用契約書、事業主の証明等)も一緒に添付します。厚生年金基金や健康保険組合に加入していれば、同様の手続きを行います。

昭和28年4月2日生まれ以降の男性の場合、年金の支給開始は61歳以降なので、年金の支給開始年齢までは在職調整はありませんが、再雇用後に報酬が下がった場合は下がった月から社会保険料の負担は少なくなります。

<定時決定>

毎年4・5・6月の3ヵ月間に支給された報酬の平均額を元に、9月から翌年8月までの社会保険料を算定する基礎となる標準報酬月額(健保5万8千円~121万円までの47等級、厚生年金9万8千円~62万円までの30等級表を用いる)を決定する手続きのこと。

<随時改定>

昇給等の固定給の変動があり大幅(2等級以上)の変動があった場合、定時改定をまたずに、変動月から3ヵ月経過した4ヵ月目から標準報酬月額を改定する手続きのこと。

◆「同日得喪」の手続きの注意点

60歳以上で再雇用等の契約変更であれば同日得喪の手続きを行うことにより、再雇用後報酬が下がった場合、即低下した標準報酬で社会保険料が算出されます。また、今回の法律改正により65歳以降であっても嘱託契約等で雇用され、契約変更で報酬が下がった場合でも同日得喪の手続きができるようになりました。

ただし、同日得喪の手続きには下記のようなケースもありえます。事例をあげて説明しましょう。

富士太郎さんは5月20日付で定年退職し、5月21日から再雇用されました。同日得喪の手続きを行い、報酬は50万円から30万円に下がり、翌月の6月分(7月控除)から新しい標準報酬で社会保険料を負担しています。ところが、6月のある日に業務外の疾病により会社を2ヵ月程休職しました。 太郎さんは残っていた有給休暇を使いましたが、足りない分については健康保険の傷病手当金を受給することになりました。年金事務所で手続きをしましたが、当然のことながら傷病手当金については低下した標準報酬月額で算出されました。もし、同日得喪の手続きを行わなければ随時改定扱いとなり、定年時の高い標準報酬で傷病手当金の金額が算出されました。保険料は安い方がよいと考えることは誰でもありますが、このようなケースもありえることを頭の片隅に留めておいてはいかがでしょう。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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