年金コラム

2013.10.30

年金制度の改正について

みなさんこんにちは、社会保険労務士の土屋です。
今回もみなさんにとって大変関心の高い、年金についてお話ししたいと思います。
平成24年2月に閣議決定した「社会保障・税一体改革大綱」に沿った年金制度改革関連法が成立しました。 そのうち受給資格期間の短縮などを盛り込んだ「年金機能強化法」については、平成24年8月10日に成立、22日に公布されました。 受給期間の短縮等一部の法律については、消費税の引き上げ実施に伴い施行される予定です。 なお、年金の特例水準の解消等については、平成25年10月支給分(12月振込分から)から実施されます。 今回はこうした改正事項についてお話ししたいと思います。

◆特例水準の解消(平成25年10月分から施行)

すべての年金受給者の年金額が10月の年金支給分から1%減額支給されることになります。(実際には12月振込分(10月・11月支給分)から減額支給されます。) これは平成25年4月現在支給されている年金額が本来法律で定めた本来水準よりも2.5%高い水準となっていて、 平成25年~27年度の3年間で、この2.5%を減額させることにより、本来の水準に戻す為に実施されるものです。解消のスケジュールは下記の通りとなっています。

 
減額実施時期 年金減額率
平成25年10月支給分から(平成25年12月振込分から) ▲1.0%
平成26年4月支給分から(平成26年6月振込分から) ▲1.0%
平成27年4月支給分から(平成26年6月振込分から) ▲0.5%

振込前に事前に日本年金機構から通知がありますので、年金受給者の方はご確認していただければと思います。

◆産休期間中の厚生年金保険料免除(平成26年4月から施行)

被保険者が妊娠し、産前産後休業(産前6週間並びに産後8週間)後に育児休業を取得した場合については社会保険料の免除を受けることができますが、 産前産後休業期間中については労働基準法の定めにより労働してはいけない期間(産後6週間以降本人が希望した場合には労働することができます。)とされていて、 その期間について社会保険料の免除を受けることが現在はできません。 その為、この期間中の社会保険料の本人負担分については、被保険者から別途徴収するか、または、産前産後休業期間中に健康保険から支給される出産手当金から、 被保険者の了解をとった上で本人負担分の保険料を控除するといった対応をされている事業所が多いようですが、平成26年4月からは産前産後の休業期間についても、 育児休業期間中と同様に社会保険料が免除されることになります。詳細については、社会保険労務士または年金事務所等でご確認いただければと思います。

◆遺族基礎年金を夫にも支給(平成26年4月から施行)

遺族基礎年金の受給権者になれるのは「子のある妻」または「子」(子については、死亡時に満18歳未満(最初の年度末まで) または障害のある子については満20歳未満であることとされています。)のみとされていますが、平成26年4月からについては「子のある妻」に加えて、 「子のある夫」が追加されることになります。したがって、妻が死亡し、夫に18歳未満(最初の年度末まで)、 または障害のある20歳未満の子が残された場合は、遺族基礎年金が支給されることになります。

◆繰り下げ支給の取扱いの見直し(平成26年4月から施行)

65歳から受給する老齢基礎年金と老齢厚生年金は、受給権者自身が選択することによって、 受給の開始を66歳以降(最大70歳まで)に遅らせることで増額させることができます。(繰り下げは片方のみまたは両方一緒のどちらも可能です。) 増額幅は1年以上(12ケ月)~最大5年(60ケ月)の間で受給開始年齢月を遅らせることによって、 1ケ月0.7%単位で増額(108.4%(66歳受給開始)から142%(70歳受給開始))することができます。 この仕組みを年金の繰り下げ支給制度といいます。ただし、増額できるのは70歳までで、それ以降遅らせても増額されることはありません。 この手続きを行い(または65歳の手続きをしない(65歳時送付される裁定請求の葉書を提出しない))増額した年金の支給開始をしたいという場合には、 本人が再度年金事務所、または街角の年金相談センターに行き、請求の手続きをしなければなりません。 もし、70歳に到達して数ケ月経過してから請求手続きを行った場合は、経過した数ケ月分については遡って支給されません。 また手続きが遅れた日数分については増額もされません。法律上はあくまで本人の請求に基づいて支給するとされていますので、このような取扱いをされています。 これでは繰り下げ請求をした方にとって非常に不利益ではないかということになり、繰り下げをされて70歳以降の請求手続きが遅れても、 70歳時点に遡って請求手続き(70歳に達した翌月分から年金支給)をしたものとみなすことになりました。

◆障害年金の額改定請求に係わる待期期間の一部緩和(平成26年4月から施行)

障害年金の受給者は、障害の程度が増進した場合は、障害年金の額の改定請求を行うことができます。 ただし、改定請求の濫用がされることがないようにという目的から、この改定請求を行う場合、従前の支給決定があってから1年の待期期間が設けられています。 ただ、障害の程度が明らかに増進したケースについてまでこの規定を適用するのは受給者にとって不利益ではないかとの議論があり、 今回の改正により、障害の程度が増進したことが明らかに確認できる場合には、この1年の待期期間を待たずに額の改定請求ができるようになりました。

◆特別支給の老齢厚生年金の支給に係わる障害者特例の取扱の改善(平成26年4月から施行)

昭和28年4月2日以降生まれの男性の場合、厚生年金の支給開始年齢は61歳以降に引き上げられていて定額部分(老齢基礎年金)が支給されるのは65歳以降になります。 女性の場合は昭和33年4月以降生まれの方から、厚生年金の支給開始年齢は61歳以降になります。 この60歳~65歳の間に支給される特別支給の老齢厚生(報酬比例部分)の受給者の方が障害年金の3級以上の等級に該当した場合は、 厚生年金(報酬比例部分)の支給開始と同時に本来受給できない定額部分も合わせて受給することができます。この仕組みを障害者特例といいますが、 この仕組みにより定額部分が報酬比例部分に加算して支給されるのはあくまで請求手続きを行った日の属する月の翌月からになります。 (かつ在職中(社会保険に加入していない)でないことが支給条件)
障害等級に該当するかしないかは、医師の診断書等の書類により判断されます。 したがって、障害等級に該当してから、実際に障害特例で請求手続きを行い、受給できるまでにはある程度の期間を要することになります。 当然、その間は定額部分が加算されませんので受給者にとって不利益ではないかという議論があり、平成26年4月以降については、請求手続きが遅れても、 障害等級に該当した月の翌月から遡って支給されることになりました。

◆未支給年金の請求者の拡大(平成26年4月から施行)

年金受給者が死亡した場合には、死亡した月の分の年金については、その受給者と生計を同じくしていた一定の範囲の親族に限り、 その親族が未支給年金として請求をすることができます。たとえば、年金受給者が10月20日に死亡した場合、10月15日振込の年金が死亡前に受け取った最後の年金になり、 12月に振込される予定の年金を死亡者は受け取ることはできません。年金は後払いですから、12月振込分の年金は10月と11月支給分になります。 11月の年金は死亡した翌月分ですから、そもそも支給されません。ただし、死亡した月の10月分については、死亡した受給者は受け取ることはできませんが、 残された遺族が自身の未支給年金として受け取ることができます。

※死亡者が厚生年金の受給者、または厚生年金の被保険者の場合には、死亡した月の翌月分から、 その親族(死亡時に死亡者に生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母(子・孫は18歳未満(最初の年度末まで)または障害のある20歳未満であること、 夫・父母・祖父母については55歳以上であることが条件) は遺族厚生年金を請求し受給することができます。

現在の法律では、この未支給年金の請求ができる親族は、死亡時に死亡者と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(二親等内)とされています。 したがって、生計維持のある二親等内の親族がいなければ、その死亡した受給者の未支給年金は発生せず、死亡月の年金は国庫に回収されることになります。
しかしながら、皆様もご存知のように晩婚化が進み、生涯独身という方や結婚をしても子供がいない高齢者も多くなりました。 したがって、死亡した子の配偶者が舅や姑の介護を していたり、伯父や伯母の介護を甥・姪が同居して行う場合などが少なくありません。 また、同居をしていなくても定期的に親族の面倒をみているというケースが今後ますます増えてくることが予想できます。民法においても、 特別の事情があるときは三親等内の親族が扶養義務を負うとされています。(民法第877条第2項)その為、こうした社会情勢に対応することから、 三親等内の親族についても生計維持があれば、未支給年金を請求できることになりました。

◆国民年金任意加入被保険者の保険料未納期間の合算対象期間への算入(平成26年4月から施行)

国民年金は40年(480月)加入で満額(778,500円平成25年10月~)になりますが、60歳に到達した時点で25年の受給資格期間を満たしていない場合は、 60歳以降についても任意で加入することができます。※昭和40年4月1日以前生まれの人は70歳まで任意加入することができます。(ただし、25年の資格期間を満たすまで)
この任意加入の手続きを行っても保険料を納付期限までに納付しなければ、未納期間となります。 このことは、任意加入期間であっても強制被保険者と同様に保険料納付義務が発生し、保険者との間に債権債務関係が生じていることを前提にしていることによります。 納付義務については様々な議論のあるところかもしれませんが、無年金の方を救済するという観点から、任意加入の手続きをしたが、 その後結果的に納付しないまま未納となった期間については合算対象期間として、資格期間の25年に算入することが平成26年4月からできることになります。
※資格期間の25年を満たしていても、60歳~65歳になる間65歳から受給する老齢基礎年金を増額受給する為に任意加入することもできます。

◆国民年金の保険料免除期間に係わる保険料の取扱いの改善(平成26年4月から施行)

現行の法律では、国民年金の保険料を前納した後に保険料の免除に該当するようになった場合は、 免除に該当した日以前に納付された前納保険料のうち免除に該当した月以後の各月の保険料は還付されませんが、 平成26年4月からは、この前納した後に免除に該当した場合には前納した保険料についても還付されることになります。
また、遡及して免除になった場合は、法定免除となった期間の各月分として免除該当後に納付されていた保険料は必ず還付されることになっていますが、 平成26年4月からは、本人が希望する場合には還付手続きをせず、保険料納付済期間(免除期間とはしない)とすることもできるようになります。

◆国民年金の保険料免除に係わる遡及期間の見直し(平成26年4月から施行)

日本に居住する20歳~60歳の方はすべて強制加入となり、国民年金の保険料を納付しなければなりませんが、生活保護を受給している人や障害等級に該当し、 障害年金の2級以上の年金を受給する人については、申請手続きをすることなく法定免除を受けることができます。 一方、一緒に暮らす家族の状況や自身が一定の収入以下であることが条件になりますが、申請をすることによって免除を受けることもできます。 また、学生や30歳未満の方については、自身と配偶者の収入が一定以下であることが条件になりますが、申請をすることによって納付猶予を受けることができます。 法定免除や申請免除を受けた期間については、将来受ける年金について国庫負担分(2分の1または3分の1)が納付済期間とみなされます。 それに対して、学生納付特例や若年者納付猶予期間については、25年の資格期間には算入されますが、納付済期間に算入されることはありません。
この国民年金の保険免除申請の手続きについて、現行では、下記の通りに定められています。

 
保険料の申請免除(若年者納付猶予含む)
1月から6月までに申請した場合 前年の7月分からその年の6月分まで免除
7月に申請した場合 前年の7月分から翌年の6月分まで
8月から12月まで申請した場合 その年の7月分から翌年の6月分まで
 
学生納付特例の場合
1月から3月までに申請した場合 前年の4月分からその年の3月分まで
4月に申請した場合 前年の4月分から翌年の3月分まで
5月から12月までに申請した場合 その年の4月分から翌年の3月分まで

国民年金の保険料を納付する期限には2年の時効がありますが、免除の手続きができるのは最大でも前年の7月から(または前年の4月から)と 前年に保険料を負担する能力がなかったことが確認できたとしても2年前までは遡って免除を受けることはできません。 こうした問題を解消する為に、平成26年4月からは国民年金の徴収権の時効が成立する2年分について、免除の対象とすることができるようになります。

◆付加保険料の納付期間延長(平成26年4月から施行)

国民年金の保険料にプラスして付加保険料(1ケ月400円)を納付することによって、 老齢基礎年金に加えて1ケ月納付につき200円の付加年金を受け取ることができます。 この付加保険料は本来の納付期限である翌月末日までに納付しなければ納付することができません。 通常の国民年金の保険料については、納付期限から2年間までは納付することができますが、上乗せ分である付加保険料については、 本来の納付期限までに納付しない場合は、納付を辞退したものとみなして納付することができませんでしたが、平成26年4月からは付加保険料についても、 納付期限から2年を経過するまでは納付することができるようになります。

◆受給期間の短縮について (平成27年10月から施行予定※ただし消費税10%引き上げ実施が条件)

年金は25年の資格期間を満たしていなければ受給することができません。 資格期間には厚生年金・共済年金といった被用者制度に加入した期間や国民年金に加入した期間や免除(学生納付猶予・若年者納付猶予含む)期間も算入できますし、 20歳以降の学生期間(平成3年3月まで)や海外在住期間や昭和61年3月までの専業主婦の期間といった合算対象期間も算入できます。
こうした期間をいれても、25年の資格期間を満たせずに無年金となっている方を救済する目的から、10年の資格期間で年金が受給できるようになります。 ただし、実際に請求し受給できるようになるのは、平成27年10月から消費税10%の引き上げが実施されることが条件になります。
受給資格期間の短縮については以前から議論があり、諸外国に比べても25年という資格期間を課すことは賛否両論がありました。 10年という受給資格期間の短縮が実施されても満額の年金が受給できるわけではなく、納付した保険料(または免除期間)期間に応じて年金を受給することになります。また、 遺族年金や障害年金の受給資格期間については現行法のままです。したがって、10年の受給資格期間を満たしている方が死亡しても、 死亡時に死亡者に生計を維持されていた遺族には遺族年金は発生しません。あくまで改正されるのは老齢給付のみになります。

◆最後に

今回お話した改正内容については、実際にどのような取扱いになるのかまだわからない点もあります。 該当する方々は、適正な情報を得たうえで適正な手続きをしていただければと思います。 ご不明の点は、お近くの年金事務所、または街角の年金センターや社会保険労務士にご確認ください。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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