年金コラム

2015.08.19

厚生年金と共済年金との一元化

みなさんこんにちは、社会保険労務士の土屋です。今回もみなさんにとって大変関心の高い年金についてお話しさせていただきます。今回は厚生年金と共済年金の一元化についてです。国や地方の公共機関で働く人、いわゆる役人の方や大学や幼稚園・保育園といった教育機関で働く人たちは働く機関毎に設立された共済組合に加入しています。
共済組合は業務外の疾病に対して療養の給付を行う短期給付制度、民間企業の健康保険にあたる制度と老齢・障害・遺族という請求事由に応じて給付をおこなう長期給付制度、民間企業の厚生年金にあたる制度があります。
共済組合から給付される共済年金の仕組みは、一般企業に勤める方が加入する厚生年金制度とほぼ同じ仕組みですが、共済年金制度独自の仕組みも持っています。それが平成27年10月以降は一部の仕組みを除いて、厚生年金制度の仕組みに統一されます。
現在共済組合に加入している方はもちろんのこと、共済組合に以前加入し現在は民間企業に勤めている方や役所を60歳で退職し再任用等で厚生年金に加入する方等で将来共済年金に加入した分の年金を受給する方々は、今回の改正内容が自分の年金支給に影響を及ぼすことになりますし、今回の一元化に伴い厚生年金側の仕組みも一部改正になりますので、改正内容についてはきちんと理解をしておくことが必要です。


職域加算の廃止

平成27年10月1日以降は現在共済組合に加入する方もすべて厚生年金に加入することになります。また、平成27年10月1日以降に受給権を取得する年金については、共済組合の加入期間についても厚生年金として支給されます。ただし、平成27年9月30日までに受給権を取得し、すでに受給されている退職共済年金については今まで通り共済組合連合等から退職共済年金として支給されます。
また、平成27年10月以降は共済年金の独自給付である職域加算(厚生年金制度では企業年金制度にあたるもの)は廃止されます。廃止はされますが、平成27年9月30日までの加入した職域加算部分は今まで通り国家公務員・地方公務員共済組合連合会等が支給することになります。
なお、平成27年10月1日以降の加入期間については、新たに公務員退職制度として「年金払い退職給付制度」が設けられます。つまり、平成27年9月までの期間と平成27年10月以降の期間の両方を持つ方は将来職域加算部分と年金払い退職給付を厚生年金に加算して受けとることになります。


平成27年10月1日以降の共済年金の主な改正事項について

平成27年10月1日以降、共済年金の仕組みは一部を除いて厚生年金の仕組みに統一されることになりますが主な改正事項は下記の通りです。

①被保険者資格の変更
厚生年金保険の加入年齢の上限は70歳ですが、共済年金制度には年齢制限がありません。平成27年10月1日以降は厚生年金の仕組みに統一されますので、70歳以上で共済組合に加入する方は、平成27年9月30日で共済年金制度から喪失することになります。平成27年10月1日以降は厚生年金の被保険者とはなりませんが、療養の給付などの短期給付は共済組合加入員として受けられますし、平成27年10月1日以降の年金払い退職給付制度の適用を受けることもできます。
②在職老齢厚生年金の在職停止
次の項目で説明します。
③未支給年金の範囲
厚生年金の受給者が死亡した場合、死亡者の遺族に死亡時に支給されていない年金は遺族が未支給年金として受け取れますが、共済年金受給者の場合、遺族(配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹)がいない場合に相続人にも受け取りが認められていましたが、平成27年10月1日以降の死亡については、厚生年金と同様に死亡者の遺族(配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・3親等以内の親族)のみ請求できます。
④障害厚生年金の在職支給停止
障害共済年金は共済組合に在職中の場合は支給停止になりますが、平成27年10月以降については障害厚生年金と同じように在職の場合は支給停止されず全額支給されます。
⑤障害給付・遺族給付の支給要件
共済年金から支給される障害共済年金については、厚生年金や国民年金のように納付要件を問われることなく初診日に共済年金の加入者であれば請求することができましたが、平成27年10月以降に初診日がある障害年金の請求については納付要件(前1年間に未納期間がないこと(65歳までの特例)または全被保険者期間の3分の2以上が納付済期間または免除期間であること)が問われます。
※遺族給付(短期要件)についても同様に納付要件が問われます。
⑥遺族年金の転給制度
共済年金には死亡時に遺族共済年金を受給した受給者が受給後に死亡した場合、次順位者が受給できるという転給制度がありますが、平成27年10月以降はこの転給制度はなくなります。


平成27年10月1日以降の厚生年金の主な改正事項について

共済年金の仕組みは厚生年金の仕組みに統一されますが、厚生年金の仕組みが共済年金の仕組みに統一されるものもあります。主な改正内容は以下の通りです。

①被保険者期間の計算
現行の厚生年金の仕組みでは、同月内に厚生年金の資格を取得した月にその資格を喪失し、国民年金の資格を取得したとき、いわゆる同月得喪については、その月は厚生年金の資格として記録され、保険料も徴収されます。一方共済の場合、同月に取得と喪失があった場合、その月は共済の期間とはされません。平成27年10月1日以降は資格を取得した月に喪失した場合、共済の仕組みに統一され、同月に取得と喪失があった場合には、その月は厚生年金の期間として記録されないこととなり、保険料を徴収した場合には還付されます。
②2月期の年金支払い額の端数処理
厚生年金や国民年金は年金額の計算で生じた端数については、50円未満は切り捨て、50円以上は100円に切り上げて年金額を決定し、支給月(年6回)に分けて支給します。その際に生じた1円未満の端数については切り捨てされ支給されませんでしたが、平成27年10月以降改定される年金支給額については、共済年金の支給方法に合わせ1円未満の端数については2月の支払いでまとめて支払うよう改正されます。
③退職時改定の改正
厚生年金の場合、月末に退職した場合、翌月が喪失となりますので、月途中で退職する方に比べると1ケ月年金の改定が結果的に遅れることになり不利益だということがありました。そこで、平成27年10月以降については、共済年金の仕組みに合わせて、月末退職であっても退職した月を喪失月として翌月から年金を改定することになります。
たとえば、従来であれば、10月31日に退職した場合、翌月の11月1日が社会保険の喪失日となりますので、11月1日から1ケ月経過した12月1日が属する月の12月から年金が改定されます。一方10月20日に退職した方は翌日の10月21日が喪失日となり、1ケ月経過後の11月21日の属する月の11月から年金が改定されます。


④国会議員又は地方議員の老齢厚生年金の在職支給停止
国会議員や地方議員の方で厚生年金を受給されている方の場合、現行の厚生年金には在職停止の仕組みはありませんが、平成27年10月以降については国会議員や地方議員の方も厚生年金を受給している場合には在職調整の仕組みが適用されます。
⑤70歳以上の方の老齢厚生年金の在職支給停止
昭和12年4月1日以前生まれの方で在職中の方については、厚生年金の在職調整の仕組みは適用されませんが、平成27年10月以降はすべての方に在職調整の仕組みが適用されます。


老齢給付の在職停止について

特別支給の老齢厚生を受給しながら在職中の場合、給与と年金額の合計額によって在職調整をされますが、平成27年10月以降については共済年金から支給される退職共済年金(平成27年10月以降の受発は厚生年金として支給)についても厚生年金と同じ在職調整の仕組みが適用されます。

厚生年金の在職調整の仕組みは以下の通りです。
●65歳に到達するまで特別支給の老齢厚生年金を受給しながら、在職(社会保険に加入)している場合、下記の仕組みで受給する年金は支給調整(減額支給)されます。

年金月額と総報酬月額相当額(給与(標準報酬月額)+前1年間の賞与(標準賞与)÷12の合計額)との合計額-28万円÷2=支給停止額
※給与(標準報酬月額)が47万以上の方は更に下記式で支給調整されます。

(年金月額+47万円との合計額)-28万円÷2-((総報酬月額相当額(給与(標準報酬月額)+前1年間の賞与))-47万円)=支給停止額
上記を低在老といいます。

●65歳から受給する老齢厚生年金は下記式で支給調整されます。
※老齢基礎年金は給与の多寡によって支給調整はされず、全額支給されます。

年金月額と総報酬月額相当額(給与+前1年間の賞与÷12の合計額)との合計額-47万円÷2=支給停止額
上記を高在老といいます。

共済組合に加入している方も平成27年10月以降に受給権を取得する年金は厚生年金として、平成27年10月前の共済組合加入期間も合算して支給されます。したがって、特別支給の老齢厚生年金を受給しながら60歳以降も在職している場合は在職調整されますが、平成27年10月前から厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)を受給している方で共済組合に加入する方についても同じ在職調整の仕組みが適用されます。


最後に

共済年金と厚生年金の一元化に伴い、平成27年10月前までは共済年金の手続きは共済組合の各窓口で行っていましたが、平成27年10月以降については原則として日本年金機構(年金事務所・街角年金相談センター)にて行うことになります。ただし、障害年金請求で初診日が共済組合加入中にあるもの等は初診日に加入していた共済組合連合会に請求する等の違いがありますので、該当する方はそれぞれの内容に応じて日本年金機構や共済組合等で確認していただければと思います。

※お断り:改正内容については現時点でわかる範囲内で説明させていただきました。したがいまして、実際の取扱い等については、平成27年10月以降年金事務所等でご確認いただくようお願いいたします。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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