年金コラム

2017.02.22

10年年金について

みなさんこんにちは、社会保険労務士の土屋です。今回もみなさんにとって関心の高い年金についてお話しいたします。

今回は「10年年金」についてです。

「公的年金制度の財政基盤及び最低保証機能の強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」が平成28年11月24日に公布され、平成29年8月1日から施行されることになりました。
これにより、年金を受け取るために必要な期間(保険料納付済期間等)が25年から「10年」に短縮されました。

年金を受け取るために必要な期間
 

◆平成29年2月下旬から、対象者への請求書送付を開始

10年年金の受給対象者の方には、平成29年2月下旬から順次、日本年金機構から「年金請求書」が郵送される予定です。(送付時期は下記【表1】参照)

【表1】

生年月日 送付の時期
大正15年4月2日~昭和17年4月1日生まれ 平成29年2月下旬~3月下旬
昭和17年4月2日~昭和23年4月1日生まれ 平成29年3月下旬~4月下旬
昭和23年4月2日~昭和26年7月1日生まれ 平成29年4月下旬~5月下旬
昭和26年7月2日~昭和30年10月1日生まれの女性
昭和26年7月2日~昭和30年8月1日生まれの男性
平成29年5月下旬~6月下旬
昭和30年10月2日~昭和32年8月1日生まれの女性
大正15年4月1日以前生まれの方(旧法対象者)
共済組合の加入期間を有する方
平成29年6月下旬~7月下旬

※平成29年1月時点

また、受給対象となる年金は【表2】の年金です。遺族年金等対象外の年金の受給については本来の受給要件が問われることに変わりはありません。
例:10年年金の受給者の方が死亡した場合でも、加入期間が25年に満たないため、遺族(配偶者・子・孫・父母・祖父母)に遺族年金は支給されません。

◆早い方では平成29年10月から支給開始

平成29年8月1日に受給権が発生し、請求手続きが日本年金機構で完了すれば、早ければ、平成29年10月振込(平成29年9月分)から年金の支給が開始されます。
なお、10年年金の年金支給はあくまで平成29年9月分からで、本来の受給年齢から支給されることはありません。ただし、年金事務所等で合算対象期間や未統合の記録等があり、本来の25年の受給資格(生年月日によっては11年~24年で受給権発生)で受給権が発生すれば、本来の受給年齢からさかのぼって年金受給することができます。
したがって、過去に厚生年金に加入した期間がある方や合算対象期間がある可能性のある方は年金事務所等で確認する必要があります。

【表2】

対象となる年金 受給要件等
老齢基礎年金
老齢厚生年金
施行日において65歳以上で10年から24年の保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間がある方
特別支給の
老齢厚生年金
施行日において60歳以上65歳未満で10年から24年の納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間がある方
※男性は62歳以上 ※厚生年金期間が1年以上ある方
通算老齢年金 施行日において大正15年4月1日以前生まれの方で保険料納付済期間、保険料免除期間、共済組合期間の期間を合わせた期間が10年~24年ある方
寡婦年金 平成29年8月1日以降に保険料納付済期間等が10年以上ある夫が死亡した場合、10年以上の婚姻期間のあった妻に60歳から65歳の間に支給
※請求書は送付されません。

※今回「年金請求書(黄色の封筒)」が送付される方はあくまで日本年金機構で10年以上の資格期間が確認できる方です。合算対象期間の多くは本人(または代理人)とのご相談のうえでないと受給権が確認できませんので、年金事務所等でご相談ください。

◆10年の期間は合算対象期間も対象

保険料納付済期間や保険料免除期間だけで10年の期間を満たせば、年金の受給は可能ですが、「合算対象期間」も10年の期間にカウントすることができます。

【合算対象期間とは】

合算対象期間(カラ期間)とは年金額の計算基礎とはしないが、年金受給のための資格には計算してくれる期間のことをいいます。具体的には下記のような期間です。

1.昭和61年3月までの被用者年金(厚生年金・共済年金)制度に加入する被保険者(または年金受給者)の被扶養者であった期間

昭和61年4月から基礎年金が導入され日本に居住する20歳から60歳までの方(大学生等は平成3年3月まで除外)は年金制度に強制加入となりました。
昭和61年3月までの被扶養者だった期間は国民年金への加入はあくまで任意とされていましたので、被保険者との婚姻期間を戸籍謄本等で確認(所得の条件はなし)できれば、合算対象期間とすることができます。

2.昭和36年4月~平成3年3月31日までの学生であった20歳以降の期間

平成3年4月1日から20歳以降の学生についても強制加入となりましたが、それまでは学生は任意加入とされていましたので、20歳以降の「学生であった期間」についても合算対象期間とすることができます。合算対象期間の証明には、在籍証明書等が必要になります、(卒業証書は不可)

なお、「学生であった期間」とは下記の期間になります。定時制(夜間部)や通信制は対象外です。
・大学・短期大学・大学院の学生であった期間
・高等専門学校の学生であった期間
・各種学校※下記のものを養成するための学校の生徒であった期間(ただし昭和61年4月1日以降の期間に限ります。)
あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師、理容師、栄養士、保健師・助産師・看護師・準看護士、歯科衛生士、診療放射線技師、歯科技工士、美容師、臨床検査技師、理学療養士・作業療法士、製菓衛生師、柔道整復師、視能訓練士

 

※中退者の方でも在籍証明は取得可能ですが、除籍者の場合、在籍証明を発行してもらえない場合もあります。そうした場合、当時の成績証明書や学費の領収書等でも認められる場合があります。詳しくは年金事務所等でご相談いただくか社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

3、海外在留期間

日本国籍のある人が日本に住民票をのこさずに海外に在住していた期間については国民年金への加入は任意加入とされますので、合算対象期間とすることができます。
証明には戸籍の付票、パスポートの写し、滞在国が交付した居住証明書、日本領事官が発行した在留証明書等が必要です。
※社会保障協定を締結している国に在留していた場合には通算制度が適用されます。在留していた国の年金制度の資格を満たせば、その国の年金も受給できます。

<社会保障協定>
一時的にその国に在留(5年間等)していて、いずれ帰国する方については適用除外の手続きを行うことにより在留する国の社会保険制度への加入が免除される制度です。その間は母国の社会保険制度にもそのまま加入します。

●現在日本と社会保障協定を締結している国
(日本の年金制度との通算制度あり)
・ドイツ、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド

●日本の年金制度との通算制度はないが、社会保障協定締結国
(適用除外制度のみあり)
・イギリス、韓国

通算制度のある国の年金制度と日本の年金制度に加入した期間が10年以上あれば、日本の年金が受給できますし、相手国の受給資格を満たせば、相手国の年金も受給できることになります。
※10年に満たない場合には脱退一時金を請求することが可能です。(帰国から2年以内に請求。)逆に10年年金の受給資格が発生した場合には脱退一時金は請求できません。

4.日本国籍を取得した方または永住許可を受けた外国人の海外在住期間

日本国籍を取得した方または永住許可を受けた方の海外在住期間(20歳~60歳未満まで)は合算対象期間になります。証明には戸籍謄本、永住許可証、出入国管理ファイル等が必要です。

5.国民年金に加入できなかった外国人の在日期間

昭和57年1月から国籍法の改正により日本に居住する外国人(特別永住者等)の方も強制加入となりました。
したがって、加入することができなかった昭和36年4月~昭和56年12月までの期間(20歳~60歳未満)については合算対象期間とすることができます。証明には戸籍謄本、永住許可証、出入国管理ファイル等が必要です。

6.国民年金に任意加入をしたが、保険料を納付せず、未納期間となっている期間

平成26年4月からの改正により、国民年金に任意加入したにもかかわらず、納付をしなかった期間も合算対象期間とすることできます。
  ※この期間を使って本来の25年の受給資格で受給権が発生しても、年金受給は平成26年4月以降になります。

上記以外にも合算対象期間に該当しそうな期間があると思われる方は、年金事務所等で相談されるか、専門家である社会保険労務士にご相談ください。

◆被扶養者だった期間(第3号被保険者期間)の「届け出もれ」にご注意

昭和61年4月以降は厚生年金被保険者の被扶養者の期間も強制加入となり、国民年金の第3号被保険者期間となりましたが、年金相談などでも第3号被保険者期間の種別変更の届出もれがある可能性のある方も散見されます。
平成14年4月以降、第3号被保険者の届出は厚生年金被保険者が加入する事業所が被扶養者届と一緒に提出することになりましたが、以前は本人が届出することになっていたため、届出もれとなるケースが発生しています。
該当する期間がみつかり、10年年金での受給ができれば施行から、本来の25年の受給資格で年金を受給できれば本来の受給年齢(60歳以降)から、さかのぼって年金が受給できる場合がありますので、該当する期間のある方は年金事務所等で確認をしてください。

◆加給年金や振替加算に該当する場合は戸籍謄本・住民票等の証明書類が必要

今回の改正で受給権の発生する方(65歳以上)に配偶者があり、その方が厚生年金20年以上加入した年金を受給(老齢満了(65歳以上または定額部分が支給))できるケースの場合、その方の配偶者に振替加算が生年月日に応じて施行日から支給されますので、該当する方は戸籍謄本・住民票・所得証明等の証明書類が必要になります。
また、今回の改正により、20年以上の厚生年金の期間で老齢厚生年金を受給できる方に65歳未満の配偶者(厚生年金20年未満)がいる場合には、施行日から加給年金が支給される場合があります。その場合にも同じく証明書類が必要になります。

◆終わりに

10年年金の請求書が送付開始となる2月下旬以降は、年金事務所等の窓口は相当な混雑が予想されます。
日本年金機構では専用の窓口を増設したり、職員を増員して対応を行う予定ですが、相談時にはその方の記録を確認し、本来の資格での受給権がないかどうかを確認する作業が必要になります。
また、平成29年4月からは男性の方(昭和30年4月2日~生まれで厚生年金の期間1年以上ある方)の年金請求(特別支給の老齢厚生年金)の受付も開始となります。そのため、お一人おひとりの相談時間が長くなることも予想されます。
その点をご承知の上、年金事務所等にご相談いただければと思います。

また、今回のような合算対象期間がある方は、相談料や手続きの伴う報酬がかかりますが、専門家である社会保険労務士にご相談いただくことをおすすめさせていただきます。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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