年金コラム

2015.07.15

「年金WEB相談室」(10)自営業者の遺族の給付

梅雨明けが待ち遠しいこの季節、体調を整えるために効果的な果物はなんでしょうか?梅雨という言葉がヒントです。と言えばお分かりですね。

そう「梅」です。

梅には実にいろいろな効用があるようです。
まずは、抗菌作用。夏のおにぎりに梅干を入れると痛みにくいですね。

次に食欲増進作用。唾液分泌促進の作用がある(梅干と思っただけで、口の中がシューとしますね)ので食欲増進、老化防止などの効果もあるそうです。

さらに疲労回復作用も。梅にたっぷり含まれているクエン酸が、疲労物質である乳酸の分解を促し、元気を回復させます。

最近の梅干は、はちみつ漬けやかつお風味や減塩のものなど、食べやすく加工されたものがたくさん作られています。
でも、子供の頃、家の台所の隅にあった茶色のつぼに入っていた、しそで真っ赤に染まった、ぽとぽととした梅干が懐かし~く思い出されます。

 

さて、今回は、国民年金に加入している自営業の方の遺族給付について考えてみたいと思います。

 

【質問】
私(59歳)は、64歳になる夫と2人で青果店を営んでいました。夫は、20歳からずっと国民年金を納めてきました。老後の事を考え、少しでも年金を増やそうと付加保険料も一緒に納めました。私も23歳で結婚してからは、ずっと国民年金の保険料を支払っています。

「国民年金は満額でも月に6万5,000円ぽっちで、大して生活の足しにはならない」という人も多いのですが、これからも商売を続けていくつもりだった私達にとっては、天候や売上げに左右されない年金は、老後の支えになり、夫もそれを楽しみにしていたのですが、思いがけない事故で先月亡くなってしまいました。

あと5ヶ月すれば65歳になって、年金が受け取れるはずだったのに…。
40年間きちんと保険料を払ってきたのに、1円も国民年金を受け取らないで亡くなるなんて、悔やみきれません。
こんなことなら、60歳からの繰上げ請求で5年間だけでも年金を受給すればよかったのでは?と、夜中に目を覚ましてはひとり考え込んだりしています。子供も一番下の子が20歳で大学に通っています。せめて卒業するまでの間に遺族年金があれば…と思いますが、もうあきらめるしかないのでしょうか?

【回答】

まず、このご相談内容を整理してみましょう。

亡くなった夫は自営業者で、国民年金の第1号被保険者として、40年間国民年金の保険料と付加保険料を納付しました。夫は、65歳から満額の老齢基礎年金約6万5,000円/月+付加年金8,000円/月を受け取る予定でした。
しかし、65歳になる前に1円も年金を受け取らないまま死亡してしまいました。
このような場合に、妻はどんな給付が受けられるのでしょうか?

国民年金には、万一のときの給付として、次の3つがあります。死亡した方の要件と遺族の要件に分けてまとめてみました。どの給付が受け取れるのか、確認していきましょう。


◆◆遺族基礎年金は、受給できるでしょうか?

1.死亡した人の要件を確認する
死亡した夫の要件を表で確認してみましょう。
4つの要件の内、下記が該当します。
・被保険者であった方で日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方の死亡
・老齢基礎年金の受給に必要な加入期間の要件を満たしている方の死亡

⇒∴夫は、遺族基礎年金を残すことができます。

 

2.遺族の要件を確認する
遺族基礎年金は、夫や妻が死亡した場合、「子のいる配偶者」又は「子」が受け取ることができる年金です。言い換えれば、子がいなければ受け取れない年金です。
年金において「子」とは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子、つまり高校を卒業するまでの間にある子、または20歳未満で障害等級1・2級に該当する障害のある子で、いずれも未婚の子をいいます。相談者の子は、20歳の大学生であるため、年金では子の扱いはされません。

⇒∴相談者には子がいないので、残念ですが遺族基礎年金は受給できません。

 

◆◆寡婦年金は、受給できるでしょうか?

1.死亡した夫の要件を確認する
「国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間等が25年以上あること」については、亡くなった夫には40年の保険料納付済期間がありますので、要件を満たしています。
かつ、「障害基礎年金を受ける権利を持っていたり、老齢基礎年金を受給していないこと」についても、亡くなった夫は老齢基礎年金を受給する前でしたので、要件を満たしています。

⇒∴夫は、寡婦年金を残すことができます。

相談者は、夫が年金を全期間納めていたにもかかわらず、1円も受け取らずに亡くなったので、せめて60歳から繰上げ受給をしたらよかったと悔やんでいるようです。しかし、繰上げ受給をして少しでも老齢基礎年金を受け取った方が、本当によかったのでしょうか?
もし、夫が老齢基礎年金を繰り上げて受給していたら、「老齢基礎年金を受給していないこと」の条件が満たせなくなり、寡婦年金は発生しませんでした。
ということは、「繰上げ受給をしていなかったので妻に寡婦年金を残すことができた」とも言えますので、悔やむことはないと思います。
寡婦年金は、夫が何も給付を受けずに亡くなった場合の掛け捨て防止の意味を持つ給付です。「障害基礎年金を受ける権利を持っていたり、老齢基礎年金を受給していないこと」という要件があるのは、このためです。

 

2.妻の要件を確認する
遺族年金で必ず出てくる遺族の要件は、「生計維持関係にあった」という要件です。 
「生計維持関係」の有無は、2つのポイントで判断されます。
・生計同一であること → 原則一緒に住んでいること
・夫の死亡した年の前年における妻の所得が655万5,000円未満であること

⇒∴相談者は、亡くなった夫との間に「生計維持関係がある」ことになります。

「10年以上婚姻関係が継続していた65歳未満の妻」の要件について
「継続して10年以上婚姻関係があること」という要件をみて、なぜ10年なんだ?!という疑問がわいてくるかもしれませんね。
寡婦年金は、死亡日の属する月の前月までに国民年金の第1号被保険者としての保険料を25年以上支払っていることが要件になっています。25年以上も保険料を納付することができたのは、妻の内助の功があったからだとし、内助の功を評価するための基準を「夫との婚姻関係が継続して10年以上」としたと言われています。

(*3)老齢基礎年金の繰上げ受給をしている場合は、寡婦年金は発生しない
例えば妻が老齢基礎年金の繰上げ受給をしているときに寡婦年金が発生しても、妻は寡婦年金を受け取ることはできません。また、寡婦年金を受け取っていた妻が、繰上げ請求をすると寡婦年金は失権します。
その理由は、寡婦年金の支給期間が、妻が60歳以上65歳未満の間に限定されていることにあります。繰上げ受給(請求)をするということは、65歳に到達したものとみなされるため、実際の年齢は65歳に達していなくても、寡婦年金が受給できないということになります。

妻が遺族基礎年金や障害基礎年金、特別支給の老齢厚生年金などの受給権がある場合は、併給調整により、妻は希望する年金をひとつだけ受け取ります。
ただし、遺族基礎年金と寡婦年金の両方の要件を満たしている場合で、それぞれの受給時期が異なる場合は、まず遺族基礎年金を受給し、それが終了した後の60歳から65歳到達までの間、寡婦年金を受給することができます。

 

3.妻が受給できる寡婦年金の額は?
亡き夫が受け取るはずだった老齢基礎年金の3/4を、妻が60歳~65歳になる直前まで受け取れます。
相談者の夫が受け取る予定だった老齢基礎年金は、月額約6万5,000円(保険料40年間満額納付)なので、妻はその3/4の金額、月額約4万9,000円が受給できます。
60歳~65歳になる直前まで受け取ると、総額で約300万円になります。
ただし、納めていた付加保険料は寡婦年金には反映しません。

 

◆◆死亡一時金は、受給できるでしょうか?

1.死亡した人の要件を確認する
「国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済月数が36月以上あること」
かつ「障害基礎年金・老齢基礎年金を受給したことがない」
かつ「遺族基礎年金を受給できる遺族がいない」
相談者の夫は、すべてを満たしています。

⇒∴夫は、死亡一時金を32万円残すことができます。

これらの要件から、死亡一時金は生前、国民年金の保険料を納めていたにもかかわらず、何も給付を受けないままに亡くなった方の掛け捨て防止のための給付であることが分かりますね。ちなみに、国民年金の第2号・第3号被保険者期間しかない方は、該当しません。

死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間が、3年以上あれば発生します。例えば、亡くなった時点では厚生年金に加入していたとしても、その前に第1号被保険者の納付済期間が3年以上あり、遺族基礎年金が発生しない場合には、遺族厚生年金と死亡一時金が受け取れます。

 

2.遺族の要件を確認する
死亡一時金の遺族の範囲広くは、妻(配偶者)と子だけでなく、同居家族も受け取ることができます。ただし、全員の遺族が受け取れるのではなく、受け取れるのはもっとも上位の順番にいる人です。受給額は第1号被保険者として保険料納付した期間に応じて次のようになっています。


⇒∴相談者は、32万円+8,500円(付加年金分)=32万8,500円の死亡一時金を受け取ることができます。
ただし、寡婦年金も受給できるので、どちらかを選択する必要があるため金額を比較すると
死亡一時金(32万8,500円)< 寡婦年金(300万円)となり、
寡婦年金を選択する方が有利です。 

 

◆◆自営業者の方へのアドバイス

自営業者の妻は、会社員や公務員の妻と異なり、すべての子が18歳年度末を迎えた後は、夫が死亡した場合の遺族給付が非常に手薄になることを知っておきましょう。
例えば、寡婦年金が受け取れる場合でも、支給期間は60歳から65歳到達までで、65歳到達後は、妻は、自身の老齢基礎年金のみを受給することになります。
また、死亡一時金も一回きりの給付で、最大でも32万円です。しかもこれらの給付は、夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取っていないことが条件となっていますので、 夫がすでに老齢基礎年金を受給(繰り上げ受給も含む)している場合には、妻への遺族給付は何もありません。
この点をしっかり理解して、自営業の世帯では、妻が一人で生活する期間にかかる費用を、終身保険等で準備しておくことが大切です。

社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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