年金コラム

2013.09.18

「年金WEB相談室」(1)2013年10月からの年金額の引き下げ<特例水準・マクロ経済スライド>

2013年9月掲載分より、新シリーズ「年金WEB相談室」をお届けします。WEB相談室では、読者の皆様が直面している年金のお悩みはもちろん、そもそも年金がなぜこんな制度になっているのかという根源的な疑問や、年金に関する新しい情報等をテーマに取り上げてお話ししたいと思っています。皆様からの年金のお悩みや疑問、質問を受付中ですので、ポスタルくらぶまでお寄せください。ただし回答は、ポスタルくらぶWEBサイト上の「年金・保険・法律の専門家コラム」にある「年金WEB相談室」内に限らせていただきます。
「年金WEB相談室」で、皆様の生活に大きく関わる大切な年金制度をより身近なものとして感じていただき、より深くご理解いただけることを願っております。

年金

◆2013年10月から年金額が下がるって聞いたけど、ホントですか?

【質問1】
私は2013年6月に還暦を迎え、年金の手続きをしました。先日やっと初めての振り込みがあり、いよいよ年金生活がスタートしました。
それなのに、2013年10月から年金額が下がるというではありませんか!?
私のおぼろげな知識では、年金は毎年4月に金額が変わるはずなのに・・・・
これって一体、どういうことですかね!?
教えてください。
(年金1年生の60歳女性)

【回答】
年金受給のスタート、おめでとうございます。
せっかく年金生活がスタートしたのに、2013年10月から年金額が下がるというので、
「なんで!」「どうして!!」と叫びたいお気持ちはよくわかります。
しかし、それには、深ーい訳があるんですよ。実は・・・・・

◆2013年9月までの年金は、「特例水準」で支払われている

現在支給されている年金は、本来支払うべき年金額(法律で定められた年金額)より2.5%高い水準(特例水準)で支払われています。

その理由は、2000年度(平成12年度)から2002年度(平成14年度)にかけて、物価が下落したにもかかわらず、特例法でマイナスの物価スライド(注1)を行わず年金額を据え置いたことなどによります。
つまり、物価の下落に応じて年金も減額しなければならなかったにもかかわらず、「高齢者の生活に配慮して」ということで、そのまま支給したのです。
特例水準による過払い分は、2009年度(平成21年度)時点で5.1兆円に達しています。
※(注1)物価スライドについては、【質問2】にて詳細をご説明します。

◆「特例水準」を解消

特例水準の解消が遅れれば遅れるほど、将来の年金世代への負担はさらに大きくなります。世代間の公平を図るためにも解消についての法案の成立が急がれましたが、当時の政治状況により大幅に遅れ、2012年(平成24年)11月26日に「国民年金法等の一部を改正する法律」の成立により、2013年度(平成25年度)から2015年度(平成27年度)までの3年間で特例水準を解消されることになりました。

この法律は、2013年(平成25年)10月1日に施行され、解消のスケジュールは、2013年(平成25年)10月に1.0%、2014年(平成26年)4月に1.0%、2015年(平成27年)4月に0.5%引き下げられます。

◆年金額はいくら位になりますか?

2013年(平成25年)10月からの年金額は、4月から9月までに支払われていた年金の-1.0%の額で、金額が確定しています。(下表参照)

しかし、2014年(平成26年)4月と2015年(平成27年)4月の額については、特例水準解消分の外、物価や賃金のスライドも適用されます。
(参考) 厚生労働省資料より
 

年金額の推移
年月 基礎年金 厚生年金(標準世帯)
平成24年4月~ 65,541円 230,940円
平成25年10月~
(-1.0%)
64,875円
(-666円)
228,591円
(-2,349円)
平成26年4月~
(-1.0%)
64,200円
(-675円)
226,216円
(-2,375円)
平成27年4月~
(-0.5%)
63,886円
(-334円)
225,040円
(-1,176円)

※仮に物価・賃金が上昇も下落もしないと仮定した場合のもの

★「年金の改定」について教えてください。

【質問2】
私が特例水準の年金を受給したのは、ほんの数ヵ月だったので、なんだか損をしたような気がしましたが、もともとの金額が高かったということですね。
若い世代の人にしわ寄せが少なくなるなら、仕方ないかなと思います。
ところで、先ほどの説明の中に「物価スライド」という言葉が出てきましたが、これは、どういう仕組みですか?
そもそも、年金はどのようなルールで改定されているのですか?
 

【回答】
基礎年金額および厚生年金額は、毎年4月に「物価スライド」により、改定されるのが原則です。
「物価スライド」とは、全国消費者物価指数の前年の変動率(前々年と比較)をもとに自動的に年金額を改定する仕組みです。
物価の上昇・下落に応じて、年金額も上昇・下落します。
年金の実質的価値が維持されるこの仕組みは、公的年金の大きな特徴となっています。

もう一つの年金額の改定方法には、「賃金スライド」があります。
物価スライドと同様、賃金の上昇・下落の変動率に応じて、年金額を改定する仕組みです。
厚生年金では、過去の給料・賞与(標準報酬月額・標準賞与額)の平均値を元に、年金額の計算をします。その際、過去の給料等を今の賃金や経済の水準に読み替える、「再評価」をします。一定の期間ごとに再評価率(読み替え率)が定められていて、この率が賃金の変動に応じて自動的に改定されます。
現役世代の賃金が上がり生活が豊かになると、この仕組みによって年金にも豊かさが反映されます。

この2つのスライドは、年金の受給開始時には主として「賃金スライド」が使われ、受給開始後は主として「物価スライド」が使われます。

★「マクロ経済スライド」について教えてください。

【質問3】
「賃金スライド」で現役世代の生活の向上・低下を年金に反映し、「物価スライド」で受給後の年金の実質的な価値を維持するという深い意味があったのですね。ところで、スライドといえば、「マクロ経済スライド」という言葉も聞いたことがあるのですが、どのような仕組みですか?

【回答】
「マクロ経済スライド」とは、年金の給付水準を引き下げて、年金制度が将来にわたって維持できるように調整する仕組みです。
少子高齢化の進展により、保険料を負担する年金加入者(現役の就労世代)の人口は減少し、逆に、年金受給者の寿命は延び、年金受給期間も長くなってきているのが実情です。

そこで、現役人口の減少率が0.6%、平均寿命の伸び率が0.3%、合計0.9%を「スライド調整率(注2)」とし、一定期間、賃金や物価の伸びから差し引いて年金額を改定します。
例えば、賃金(物価)の上昇率が1.5%で、スライド調整率が0.9%の時は、年金の改定率は、「1.5%-0.9%=0.6%」となります。
(注2)「スライド調整率」=「公的年金全体の被保険者の減少率(0.6%)+平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」

マクロ経済スライドによる年金の改定
スライド
つまり、この仕組みでは賃金や物価が上がった場合でも、同じ率で年金額は上がりません。金額こそ下がりませんが、スライド調整率の分だけ、給付水準(注3)が下がってゆくことになります。

(注3)給付水準とは?
現役男子の平均賃金に対する、モデル年金(平均的な賃金で40年間会社に勤めた夫と40年間国民年金に加入した妻に支給される老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金の合計額)の割合で、2009年(平成21年)当時で62.3%。この率を将来的に、50%にする予定。

しかし、「マクロ経済スライド」は、平成16年改正で導入されて以来、現在まで、実際には一度も発動されていません。その理由は、【質問1】で取り上げた特例水準が解消されていなかったことと、デフレ経済下では、発動する仕組みがないためです。
今後、特例水準が解消され、インフレ経済に移行すれば、マクロ経済スライドが発動されます。年金生活者への影響は、決して小さいものではありません。発動後は、インフレで賃金や物価が上昇しても、年金額は常に「変動率-0.9%」という改定率となります。毎年0.9%分は、年金受給者の自助努力で補てんしてゆく他はないという状況になります。特に老齢基礎年金は、満額でも月額6.5万円ですので、-0.9%の削減は厚生年金に比べて、影響が大きくなります。

2013年(平成25年)8月6日に取りまとめられた社会保障制度改革国民会議の報告書の『「マクロ経済スライド」の見直し』の項に、「公的年金の給付水準の調整を補う私的年金での対応への支援も合わせた検討が求められる。」との記述がありました。その内容は、幅広く加入できる民間の年金制度や確定拠出型の入りやすい制度、公的年金に+αで加入できる制度の創設等、何らかの支援が必要ではないかというものでした。

年金生活者の今後は、特例水準解消による減額、その後のマクロ経済スライドの発動による年金の実質価値の目減りと厳しい状況を迎えることになります。 
 

社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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