年金コラム

2013.07.24

「ねんきん定期便活用術」(6)

平成23年簡易生命表によると、60歳時点での平均余命は、男性22.7年、女性28.12年と、女性の方が5.42年長生きするという結果になっています。例えば、夫が60歳、妻が57歳のご夫婦の場合、60-57+5.42=8.42年が、夫亡き後、妻が一人で生きる平均的な年数ということになります。年金相談会で女性のお客様が最後にそっと「夫に万一のことがあった時には、いくらくらい遺族年金が出るのでしょうか?」と質問されるのも当然ですね。ねんきん定期便活用術、最終回は遺族年金のお話です。
なお、年金額は特例水準解消のため、平成25年10月以降-0.1%となるため、10月以降の新しい金額でご紹介しています。

◆隼人さんご夫婦のプロフィールを簡単におさらいしましょう。

  • 隼人さん(昭和28年11月11日生まれ)59歳の会社員で、今年11月の誕生日に定年を迎えます。
  • 妻の奈津子さん(昭和30年12月20日生まれ)57歳の専業主婦で、国民年金の期間は、第3号期間のみです。

◆隼人さんのねんきん定期便から遺族厚生年金を計算してみましょう。

夫 隼人さん(昭和28年11月11日生まれ)

隼人さんのねんきん定期便

①遺族厚生年金の金額を計算しましょう。
・遺族厚生年金の基本額は、「老齢厚生年金(報酬比例部分)の額の3/4」です。
ねんきん定期便のアの金額をもとに計算します。
・ただし、厚生年金の加入月数(イの月数)が300月未満で、在職中に死亡した場合の遺族厚生年金の額は、300月加入したものとして計算されますので、「遺族厚生年金=老齢厚生年金の額×300月/イの月数×3/4」となります。
この方法で、50歳未満の方のねんきん定期便の「実績額」から、現時点で遺族厚生年金が発生した場合の額を計算することもできます。

②遺族厚生年金の加算額について考えましょう。
・夫が死亡したことにより妻が受給する遺族厚生年金には、加算される額があります。妻の年齢によって、それぞれ下記の加算額となります。
65歳未満の場合 → 中高齢寡婦加算額(注1)
65歳以上の場合 → 経過的寡婦加算額(注2)
 

生計を同じくしている子がいる場合
 

生計を同じくしている子がいない場合

(注1)中高齢寡婦加算額
一定の条件を満たした夫が死亡した場合に遺族厚生年金に加算される額です。
国民年金から支給される遺族基礎年金は、生計を同じくしている子のない妻には支給されません。また、子がいてもその子が18歳の誕生日に属する年度末、または、障害等級が1・2級の子は20歳に達すれば、年金に関しては子でなくなるため、支給されなくなります。
そのため、夫が死亡したときに40歳以上で生計を同じくしている子のない妻には、40歳から65歳になるまでの間、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算(定額)が加算されます。
また、40歳時点で遺族基礎年金を受給している妻は、遺族基礎年金の受給権が消滅したときから加算が始まります。その後、妻が65歳になると、妻自身の老齢基礎年金が受給できるようになるので、中高齢寡婦加算はなくなります。(上図参照)
 

(1)加算要件
A.死亡した夫の要件(下記のいずれかに該当していること)
・死亡した時点で厚生年金の被保険者月数が原則240月以上あった人
(ねんきん定期便イの月数で確認)
・在職中であった人、障害等級1・2級の障害厚生年金の受給権があった人で厚生年金の加入月数が240月未満の人(これらの人は、遺族厚生年金額を計算する際に300月加入していたものとみなすために、加算が行われます。)

B.妻の要件
夫の死亡当時、生計維持関係があった妻で、下記のいずれかに該当していること
・夫の死亡当時の妻の年齢が40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
・遺族基礎年金を受給している場合は、その受給権が消滅した時点で、40歳以上65歳未満である妻

(2)加算額
年額で583,900円(2013.10~2014.3の額)
 

(注2)経過的寡婦加算額
65歳になると、妻は自分の老齢基礎年金を受給できます。そのため中高齢寡婦加算は支給されなくなりますが、年額約60万円の加算がなくなると、年金額が以前より低くなる場合が生じます。経過的寡婦加算額は、その不足分を補うために65歳以降遺族厚生年金に加算されます。(65歳以降に初めて遺族厚生年金を受け始める妻にも加算されます。)

経過的寡婦加算の額は、昭和61年4月から60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の額と合わせると、中高齢寡婦加算額と同額になるよう定められています。そのため、昭和31年4月1日以前に生まれた人が対象で、それ以降に生まれた人は、原則年金額が低下することがないため、加算はありません。

(1)加算要件
・中高齢寡婦加算額が加算されていたこと
(ただし、65歳以降に遺族厚生年金を受け始める妻には、中高齢寡婦加算額は加算されませんが、経過的寡婦加算額は加算されます。)
・昭和31年4月1日以前生まれ
・遺族厚生年金の受給権者である妻が65歳に達したときから加算
 

(2)加算額
加算額は、生年月日に応じて、下表のように定められています。

経過的寡婦加算額(平成25年10月~26年3月)
大正15年4月2日~昭和2年4月1日生 583,900円
昭和2年4月2日~3年4月1日生 554,000円
昭和3年4月2日~4年4月1日生 526,200円
昭和4年4月2日~5年4月1日生 500,500円
昭和5年4月2日~6年4月1日生 476,500円
昭和6年4月2日~7年4月1日生 454,200円
昭和7年4月2日~8年4月1日生 433,200円
昭和8年4月2日~9年4月1日生 413,600円
昭和9年4月2日~10年4月1日生 395,200円
昭和10年4月2日~11年4月1日生 377,800円
昭和11年4月2日~12年4月1日生 361,500円
昭和12年4月2日~13年4月1日生 346,000円
昭和13年4月2日~14年4月1日生 331,400円
昭和14年4月2日~15年4月1日生 317,600円
昭和15年4月2日~16年4月1日生 304,400円
昭和16年4月2日~17年4月1日生 292,000円
昭和17年4月2日~18年4月1日生 272,500円
昭和18年4月2日~19年4月1日生 253,000円
昭和19年4月2日~20年4月1日生 233,600円
昭和20年4月2日~21年4月1日生 214,100円
昭和21年4月2日~22年4月1日生 194,700円
昭和22年4月2日~23年4月1日生 175,200円
昭和23年4月2日~24年4月1日生 155,700円
昭和24年4月2日~25年4月1日生 136,300円
昭和25年4月2日~26年4月1日生 116,800円
昭和26年4月2日~27年4月1日生 97,300円
昭和27年4月2日~28年4月1日生 77,900円
昭和28年4月2日~29年4月1日生 58,400円
昭和29年4月2日~30年4月1日生 39,000円
昭和30年4月2日~31年4月1日生 19,500円
昭和31年4月2日以降生 -

③共働きのご夫婦の遺族厚生年金の額
共働き等で妻自身の年金額が高い場合には、下記の計算式で算出した遺族厚生年金と「老齢厚生年金×3/4」の額を比較して、高い方を遺族厚生年金の額とします。

遺族厚生年金=自身の老齢厚生年金(経過的加算額を含む)×1/2+①で計算した遺族厚生年金(経過的寡婦加算額を含む)×2/3

◆奈津子さんの遺族年金について説明しましょう。

奈津子さんは、厚生年金に7年間加入していました。60歳から特別支給の老齢厚生年金が受給できます。下記は、奈津子さんのねんきん定期便です。

妻 奈津子さん(昭和30年12月20日生まれ)57歳の専業主婦

奈津子さんのねんきん定期便

◆奈津子さんは、60歳からご自分の特別支給老齢厚生年金が受給できます。ご主人に万一のことがあった場合、この年金と遺族厚生年金は、両方とも受け取ることができるのでしょうか?

年金と遺族厚生年金

①併給調整について
一人の人に支給事由(年金を支給する理由)の異なる複数の年金を受給する権利が生じた場合、その中の有利なもの一つを選んで受け取ることになります。これを併給調整といいます。

②遺族厚生年金が発生した時点の奈津子さんの年齢によって、老齢厚生年金と遺族厚生年金の併給調整の方法は次のようになります。

【65歳未満の間(期間A)】
・自身の特別支給の老齢厚生年金と遺族厚生年金のうち、どちらか金額が高い方を受給します。奈津子さんの場合、老齢厚生年金96,000円<遺族厚生年金1,483,900円(=900,000円+583,900円)となるため、65歳未満の間は、遺族厚生年金を選択した方が有利です。
・なお、奈津子さんが65歳到達前に夫が死亡した場合は、老齢基礎年金に振替加算額は加算されません。

【65歳以降の間(期間B)】
・65歳以降に受給する年金のうち、調整の対象となるのは、老齢厚生年金と遺族厚生年金で、老齢基礎年金については、全額受給することができます。
・老齢厚生年金と遺族厚生年金の調整は、まず老齢厚生年金(経過的加算額も含めた額)を全額受給します。そして遺族厚生年金(経過的寡婦加算額も含めた額)と老齢厚生年金の差額を遺族厚生年金として受給します。 奈津子さんが65歳から受給する年金額は、次のようになります。

老齢厚生年金96,049円+遺族厚生年金823,451円(900,000円+19,500円-96,049円)+老齢基礎年金(721,000円)=1,640,500円
・なお、奈津子さんが65歳到達以降に夫が死亡した場合は、老齢基礎年金に振替加算額50,800円が加算されます。
 

 

社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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