年金コラム

2024.03.19

年金を分ける?

皆さん、こんにちは。社会保険労務士の尾田佳子です。
少し前に、今年の4月分からの年金額が改定(増額)されることが発表され、お問合せも増えてきています。

年金額が改定(増額)されるとは言え、年金は後払いですから、改定された4月分と5月分の年金が実際に振り込まれるのは6月です。
6月に入ってから、通知書が届きますので、年金を受け取っておられる方は、そちらでご確認くださいね。

年金制度には、いろいろな制度がありますが、実際には、自分自身に関係のないことは知らないことが多いのではないでしょうか。
身近な人から言われて、初めて知ることもあると思います。

仕事帰りの頼れるくーちゃんが、幼なじみである双子の兄そーくんの食堂へやって来ました。
双子の弟こーくんは、どうやら、新しい制度を耳にしたようですよ。
どんな制度なんでしょうか。ちょっと覗いてみましょう。

公美:
「こんばんは~。晩ごはん食べさせて~。ん?」
厚二郎:
「くーちゃ~ん。嫁さんと喧嘩してさぁ~…」
公美:
「何、今さら。何回も喧嘩してるやん。」
厚二郎:
(うなだれている)
礎一郎:
「喧嘩したけど、すぐ仲直りしたんやで。こーくんたちの、いつものパターン。
ところが今回、後から、もう1回謝ったら、めっちゃ笑顔で『大丈夫!いざとなったら、あなたの年金もらうから!』と、返されたらしい。」
公美:
「それで、こんなに落ち込んでんの?」
礎一郎:
「そ。ずーっといる(笑)」

年金分割とは

厚二郎:
「そもそも、年金もらうからって、どういうことよ?僕の年金は、僕のやろ?」
公美:
「あ~それね。年金分割っていう制度があるんやけど、奥さんが、こーくんの年金を半分もらう訳じゃないよ。
年金って、それまでのお給料とかボーナスの額を元に計算するやん?お給料とかから引かれる保険料の決め方、覚えてる?」
礎一郎:
「ある程度の幅の額で区切って、グループ分けして決められてる・・・確か・・・給料が標準報酬額で、ボーナスが標準賞与額だっけ?」
公美:
「そうそう。それを、結婚していた期間中の分を分割するっていう制度が年金分割。
奥さんが年金を受け取る年齢になった時、その分割した標準報酬額や標準賞与額を含めて奥さんの年金額を計算するの。
分割しない場合と比べて、奥さんは年金額が増えるし、こーくんの年金額は減るよね。」
厚二郎:
「ちょっと待って。“結婚していた期間中”って、どういうこと?」
公美:
「年金分割っていうのは、離婚した後にする手続きよ。」
厚二郎:
「り・・・離婚?!」
礎一郎:
「まぁまぁ、そんな話は出てないんやし、奥さんもちょっとイラッとしてたんちゃう?」
公美:
「そうそう。で、どれくらいに分けるかっていうのは、2人で話し合いで決めることが出来るから、一方的ではないし、上限は50%って決まってる。
ただ、年金分割って、合意分割と3号分割の2種類あって、合意分割は2人で話し合って決めるから一方的ではないけど、3号分割は、平成20年4月以降の、第3号被保険者期間分については、話し合いとかせず、一方的に50%で分割出来てしまえるんよね。」
厚二郎:
「僕の嫁さんは、結婚してから専業主婦やで・・・」
公美:
「結婚してから、平成20年3月までの期間分は、一方的に分割出来ないから、全部の期間が対象にはならないよ。
こーくんの奥さんが、結婚していた期間全部を分けたいという場合は、合意分割をする必要があるね」
礎一郎:
「夫婦共働きでも分割出来るん?」
公美:
「出来るよ。夫婦それぞれの給与とボーナスを合わせて、たとえば50%になるように分割するとか、その割合は2人で決められる。
双方の収入を合わせるから、相手の分の50%を丸々もらえるって訳ではないところが注意かな。」

夫婦共有の財産

礎一郎:
「俺は厚生年金に加入したことがないから、離婚しても分割する年金はないけど、専業主婦の期間が長い人は、元々年金額がそんなに高くないから、もし離婚したら、生活が大変やもんなぁ。」
公美:
「夫婦生活で得た収入は、夫婦共有の財産であるという考え方もあって、離婚した場合は、年金も分割出来るようにしましょうってことみたいね。
逆にそーくんは、奥さんが厚生年金に加入してるし、年金分割したらもらえる方やで。」
礎一郎:
「あ、そうなるよなぁ…。」
公美:
「離婚するしないに関わらず、50歳以上の人は、もし年金分割をしたら、自分の年金額がどれくらいになるのか、試算してもらえる”情報提供通知書“を取り寄せることも出来るよ。」
厚二郎:
「僕、離婚しないもん・・・」
礎一郎:
「ひょっとしたら、奥さんはすでに取り寄せているかも!」
厚二郎:
「そーくん・・・面白がってない?(哀)」

!今回のポイント!

年金分割の制度は、平成19年4月から始まった制度です。

一般的に、女性の方が男性に比べて収入が少ない事が多く、また、専業主婦の期間の長い方等が離婚をした場合、年金生活者となった時に、年金額が低額となり、生活が困難になる可能性が高くなります。
婚姻期間中の給与(=標準報酬月額)や、ボーナス(=標準賞与額)は、夫婦の協力で得たものという考えから、離婚した場合には、それらを分割出来るようにしたのが、年金分割制度です。

年金分割には、合意分割と3号分割があります。
合意分割は、双方の話し合いによって、分割の割合を決定する制度で、婚姻期間中の厚生年金加入期間が対象となります。
3号分割は、平成20年4月以降の婚姻期間中、第3号被保険者であった期間について、相手(第2号被保険者)の同意なく、50%を分割出来ます。

年金は、老後の生活を支える柱なので、年金分割に関しては、他の制度に比べると取り扱いが厳しくなっています。
検討される場合は、事前に年金事務所(予約が必要です)や、街角の年金相談センターで、必ず確認するようにしてくださいね。

!言葉のおさらい!

年金分割

離婚等をした時、請求手続きによって、婚姻期間中の厚生年金加入期間分の、標準報酬月額と標準賞与額を分けることが出来る制度。
離婚後、2年以内に手続きすることが必要。
相手と話し合いの上、分割の割合を決定する合意分割と、平成20年4月以降の第3号被保険者期間について、相手の同意なしで分割する3号分割がある。

情報提供通知書

年金を分割した場合、自分自身の標準報酬月額と標準賞与額がどのようになるのかという情報を、請求によって確認出来る通知書。
分割の割合を決める際等の参考資料として請求することも多い。
また、50歳以上の方は、年金分割した場合の、将来の年金見込額を試算することが可能。
離婚前であれば、請求者のみに通知書が届くが、離婚後に請求した場合は、元配偶者にも通知書が届く。
ただし、通知書に記載される情報は、本人分のみとなる。

第2号被保険者

国民間企業や公務員等、厚生年金制度に加入している65歳未満の方。
65歳以上で厚生年金に加入している人は、第2号被保険者とはならない。

第3号被保険者

第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者。
収入や住んでいる場所等、第2号被保険者に扶養されていることの証明が必要。

標準報酬月額

給与・手当等をある一定の幅で区切ってグループ分けした額。
この額を基準として保険料を決定し、給与から毎月控除する。
一般的には、4月~6月に支払われた給与を元に決定する(例外あり)。

標準賞与額

ボーナスの額から、1,000円未満を切り捨てたもの(上限150万円)。
この額を基準として保険料を決定し、賞与から控除する。

社会保険労務士
尾田佳子
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