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年金コラム

2022.09.20

年金の時効について

こんにちは社会保険労務士の土屋です。今回も皆さんにとって関心の高い年金についてお話しさせていただきます。今回は年金の時効についてお話しさせていただきます。
年金には時効があります。年金を受け取る権利は5年で時効にかかり、5年以上経過した分については支給されません。また、国民年金の保険料の納付等については2年以上経過した場合には納付することができません。
※免除手続をした期間については免除申請手続き後10年経過するまでであれば追納することができます。

基本権と支分権について

年金の時効については下記の年金法の条文に定められています。

国民年金法第百二条
年金給付を受ける権利は、その支給すべき事由が生じた日から5年を経過したとき、当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる年金給付の支給を受ける権利は、当該日の属する月の翌月以後に到来する当該年金給付の支給に係わる第18条第3項本文に規定する支払期月の翌月の初日から5年を経過したときは、時効によって、消滅する。
2 前項の時効は、当該年金給付がその全額につき支給停止されている間は、進行しない。
3 第1項に規定する年金給付を受ける権利又は当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる年金給付の支給を受ける権利については、会計法第31条の規定を適用しない。
4 保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び死亡一時金を受ける権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅する。

※厚生年金保険法にも下記の通り、時効の規定があります。

厚生年金保険法第九十二条
保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したとき、保険給付を受ける権利は、その支給すべき事由が生じた日から5年を経過したとき、当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利は、当該日の属する月の翌月以降に到来する当該保険給付に係わる第36条第3項本文に規定する支払月の翌月の初日から5年を経過したときは、時効によって消滅する。
2項削除
3 第1項に規定する年金給付を受ける権利又は当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利については、会計法第31条の規定を適用しない。

上記の条文から年金の時効には二つの権利があることがわかります。一つは受給要件を満たした人が年金を受けとる権利(基本権)で、もう一つは基本権に基づき年金給付(厚生年金は保険給付)を支払期月ごとに受けとる権利(支分権)です。条文では基本権も支分権も「5年を経過したときは、時効によって消滅する」とされています。ただし、第3項で会計法第31条の規定は適用しないと規定しています。

会計法三十一条 金銭の給付を目的とする国の権利の時効による消滅については、別段の規定がないときは、時効の援用をせず、また、その利益を放棄することができないものとする。国に対する権利で、金銭を目的とするものについても、同様とする。

会計法の定めによれば、国から受ける権利の消滅は時効の援用(権利者に対して権利が消滅したことを主張する)は不要とされています。つまり、会計法の規定をそのまま使うと、国は権利者(年金の場合は被保険者&年金受給者)に主張をすることなく、権利を消滅させることができます。
しかし、年金の裁定は会計法の規定を使わずに国の判断で時効を援用することにしています。ご説明しますと、会計法の規定を適用してしまえば、権利発生後5年経過するまでに行使しなければ、基本権も支分権も消滅となり、年金を請求し受け取ることが一切できなくなります。その為、基本権(年金を受け取る権利)は時効の援用をせずに受給権を認め、支払期月毎に年金を受け取る権利(支分権)については、本人の責に基づく事由であれば、時効を援用し、5年以上前の年金を受ける権利は消滅させることとしています。

【老齢年金での事例】
昭和27年9月1日生まれの男性(厚生年金加入期間1年以上あり)が令和4年9月(70歳)に年金請求

図表①

※令和4年9月に請求した場合、年金は後払いの為、5年分(令和4年9月分まで)が遡及して支払われます。

【障害年金(認定日請求を遡って請求した事例)請求の事例】
障害年金の請求手続きで5年以上前の初診日の請求についても、納付要件や病状の程度が該当すれば、請求権(基本権)については認定しています。ただし、5年以上遡って支払いを受ける権利(支分権)については時効により認めていませんので、5年以上の前の支払いを受けることはできません。

図表②

年金時効特例法について

社会保険庁が解体され、平成22年から現在の日本年金機構が設立されたきっかけになったともいえる、『消えた年金問題』が発生したことは皆さん記憶にあるかと存じます。
消えた年金問題を解決する為に様々な対策がとられましたが、時効をそれまで通りに適用してしまうと、年金記録が判明した方や、国の事務処理誤り等の特別な事情のある方について、年金を救済することができない為、平成19年7月から年金時効特例法を施行し、この法律に該当する事案については、支分権の時効の援用もせず、従来の受給権に従って遡及して年金を支払うこととされました。
※当然ですが、時効特例法に該当しない事案や、本人の責に基づく事案については、支分権は時効の援用を行いますので5年以上前の支給を受ける権利は消滅します。

【時効特例に該当する場合の事例】
 昭和17年9月1日生まれの女性(年金受給者で厚生年金1年以上加入あり。)が夫の遺族厚生年金の請求手続時に自身の未統合記録が判明。

図表③

時効特例法に該当した場合、最初時効にかからない過去5年分の年金を支給し、その後に5年以前から本来の受給権発生以降の年金を遡及して支払われます。なお、該当者が死亡している場合には遺族が未支給年金として受給することになります。

平成29年8月1日以降短縮年金に該当する方は注意

平成29年8月1日から10年の資格期間で年金受給できることになりましたが、令和4年9月で5年が経過することになります。令和4年9月で時効の5年が適用されることになります。時効特例に該当することがなければ、5年経過した以降の年金分は支払われなくなりますので、注意が必要です。また、60歳~65歳の間に受給する特別支給の老齢厚生年金は繰下げして増額することはできません。年金の請求ができる方で未請求の方や年金加入記録がある方は、一度年金事務所等に予約の上ご相談いただくか、社会保険労務士にご相談いただくようお願いいたします。

図表④
社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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