年金コラム

2022.07.19

厚生年金、パートでも加入?

皆さま、こんにちは。
社会保険労務士の尾田佳子です。

気が付けば、季節は夏ですね。
今年は、季節の変わり目があまり感じられず、周囲でも体調を崩される方が多かったように思います。
今年も暑さは厳しいようですし、これから、どんどん暑くなっていきますから、皆さまもどうぞ気を付けてお過ごしくださいますように。

改正の多い年金制度。
ニュース等で目にすることも多く、若い方でも気になる方はいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、年金をもらう人ではなく、年金保険料を納める人に関する改正のお話です。

いつものんびりしている双子の兄そーくん(礎一郎)ですが、ちょっぴり小難しい表情をしています。
双子の弟こーくん(厚二郎)の目には、ただならぬ雰囲気に見えるようですよ。
そこに、頼れる幼なじみのくーちゃん(公美)が、食堂にやってきました。

礎一郎:
「あぁ、くーちゃん、ちょうどよかった。ちょっと聞きたいんやけど」
公美:
「うん?何?」
厚二郎:
「(小声で)くーちゃん、兄貴、何か、ずっと悩んでる感じやねん」
公美:
「(厚二郎に対し、小声で)分かった。…(礎一郎に向かい合い)どした?私で良ければ聞くけど」
礎一郎:
「嫁さんが、厚生年金に加入することになったって、急に言うてきてん。そしたら、嫁さんの年金増えるらしいわ。どういうこと?」
公美:
「ん???そーくん、悩んでるってそれ?」
礎一郎:
「いや、悩んでるんじゃなくて、60 歳になった時、“これで年金の保険料納めるのも終わりやね”って喜んでたのに、また納めるってのが、意味分からんなぁと思って」
厚二郎:
「俺も分からん」
公美:
「何、2人して。あのね、前に、年金は法律で定められているから、変わることもあるって話したでしょ?」
礎一郎:
「うん」
公美:
「その法改正が10 月にもあるのよ」
厚二郎:
「年に1回じゃないんや?」
公美:
「うん。改正は同じでも、実際に変わるのは時期が違うこともある。
それで、10 月から社会保険…健康保険と厚生年金ね。その加入出来る人の範囲が広がるの。
結果、今まで社会保険に加入出来なかった働き方の人も、加入出来るようになるってことね」

社会保険に加入できる人が増える

厚二郎:
「そーくんの奥さん、パートやのに?」
公美:
「パートとかアルバイトとか、関係ないよ。加入出来るか出来ないかは、働き方とかで決まってくるから」
礎一郎:
「確か嫁さんは、1 日4~5 時間くらいで、土日含めて週5 日行ってたな」
厚二郎:
「え?そんなに?食堂は?儲かってないん?」
礎一郎:
「こらっ!学生さんにアルバイト入ってもらってるし、嫁さんには、主に経理をしてもらうようにしててん。で、子供たちも手が離れたし、空いた時間にパート行ってる」
公美:
「働き者の奥さんだよね、ホント。奥さんが勤めてるとこ、そんな大きな会社じゃないよね?
10月から、101人以上の事業所は、週20 時間以上働く人も、社会保険に加入するようになったのよ」
厚二郎:
「今までは?」
公美:
「会社の規模とかによるから、一概には言えないけど、そーくんの奥さんが勤めてるとこは、30時間かな」
礎一郎:
「それで、厚生年金に加入することになったって言うてきたんか…」
公美:
「納得した?厚生年金に加入したら、奥さんの年金額も多少なりとも増えるし、いいんじゃない?
あと、ない方がいいけど、もし病気やケガで身体に障害が残ってしまった場合、障害厚生年金も対象になるよ」

働き方と社会保険

厚二郎:
「あ、でも、今までと同じ働き方だったら、保険料が引かれる分、もらえるお給料減るよね?」
公美:
「うん。だから、中には、加入しないように、働く時間を減らす人もいるみたい。旦那さんの扶養から外れるのが嫌な人もいるし。
ほら、税金高くなるから。
もちろん、これを機に、フルタイムで働こうって人もいるよ。
厚生年金だけでなく、健康保険もセットで入るから、奥さんが病気とかケガして、働けなくなった時、健康保険から傷病手当金っていう給付も受けられるようになるしね。病気とかケガした場合だから、しないに越したことないけどね」
礎一郎:
「どっちがいいかは、その人の考え方次第ってとこかな」
公美:
「そだね。何を重視するのかによって、変わってくると思うよ」
礎一郎:
「嫁さんは、加入する方を選択したってことかな」
公美:
「そうみたい。相談あったから、話したよ」
礎一郎:
「そうなんや」
公美:
「あ、そうそう。そーくんとこは、奥さんが年上だし、そーくんには厚生年金がないから、万が一、奥さんが先に亡くなってしまったら、遺族厚生年金が受け取れるよ」
厚二郎:
「兄貴!良かったやん!」
礎一郎:
「いやいや、嫁さんに先逝かれたら、俺、困るし!!」

!今回のポイント!

今年度(令和4年度)は、法改正が多く、実は社労士泣かせです。
年金と聞くと、老齢年金を思い浮かべる方が大半だとは思いますが、年金を受け取る前に、年金保険料を納めていますね。

その時から、年金との関わりは始まっているのです。
ただ、なかなか学ぶ機会がなく、60 歳が近づいたり、会社の定年が近づいて初めて「年金」を意識する方が多いと思います。

保険料を納める・納めないは、自分自身で選択できる訳ではなく、社会保険の加入条件に該当すれば当然に、保険料を納めることになります。

今回取り上げた法改正の内容は、社会保険に加入しやすくなる改正とも言えます。
まだ年齢が若い方で、加入条件に該当しない働き方をしている人は、国民年金や国民健康保険に加入していることになりますが、社会保険に加入することで、現在と未来の保障が厚くなります。

もちろん、加入条件に該当しないような働き方を選択されている方もいらっしゃるでしょう。
個人の置かれている状況は、人それぞれです。正解はありません。
加入した場合、どのように変わるのか、ご自身が何を重視するかを考えて、決める必要があります。

学ぶ機会もなかったのに、自分で決めるの?!という声も聞こえてきますが、新聞・テレビ・ネットで流れるニュースを確認されたり、年金事務所や街角の年金相談センター等へ相談に行かれる等、ご自身の判断材料を1つでも多く持つようにしてくださいね。

言葉のおさらい

社会保険= 広義では、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険を指しますが、狭義では、健康保険・厚生年金を意味。このコラムでは、狭義の意味で用いています。
障害厚生年金= 厚生年金加入期間中の病気やケガにより、障害の状態に該当した場合に受け取れる年金(*)
傷病手当金= 私傷病による療養の為に仕事を4 日以上休み、お給料が支払われない時に受け取れる健康保険の制度(*)
遺族厚生年金= 厚生年金加入中や、受給要件を満たしている人等が亡くなった時、その者によって生計を維持されていた遺族に支給される年金(*)

*いずれも、受け取るには様々な要件を満たすことが必要となります。

社会保険労務士
尾田佳子
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