年金コラム

2009.01.22

退職予定者のあれも聞きたい、これも聞きたい年金相談シリーズ(2)

厳冬の夜明け前、自宅(マンションの8階です。)から「かぎろひ」(曙光)が見えます。日の出直前の生駒山の山際は、深い藍色の空をバックにそこだけが希望に満ちたオレンジ色に輝き始め、時間とともに繊細に変化してゆきます。その光景は、神秘そのもので、今日がすばらしい一日になることを予感させてくれます。新しい年が始まりましたが、今年一年が皆様にとってよき年となりますことを祈っています。

さて、今回は、2009年5月末の退職予定者にスポットを当てた「退職予定者の年金相談」の第2弾をお届けします。テーマは、60歳以後働いた場合の雇用保険からの給付「高年齢雇用継続基本給付金」についてです。

第2回目 高年齢雇用継続基本給付金について

相談者 昭和24年5月生れ、現在59歳の男性、会社勤務40年、厚生年金加入、2009年5月末定年退職予定。その後の勤務(継続勤務か完全リタイア)は検討中です。

Q1:定年退職後、引き続き働く場合の「高年齢雇用継続給付金」について教えて下さい。

A1:高年齢雇用継続基本給付金とは?
会社にお勤めの方は、一般的には60歳でいったん定年退職となり、その後については新たな雇用契約のもとで働くことになるケースが多いですね。この場合年金が支給されるという前提があるからでしょうか、給料がほとんどのケースで60歳前に比べて大きく減ってしまいます。そこで、60歳以後の給料の減額を補うために「高年齢雇用継続基本給付金」(以下、「給付金」という。)が雇用保険制度から支給され、60歳以後働く方の生活をサポートすることとなっています。

【給付金の支給要件】

給付金を受給するためには、次の要件を満たしていることが必要です。

  1. 60歳以後の給料が、60歳前の給料よりも75%未満に減っていること。なお、60歳前の給料とは、60歳直前6か月間の給料(ボーナスは除く)の平均額です(以下、「従前の給料」という)。
  2. 60歳以後も雇用保険に加入して働いていること(厚生年金の加入の有無は問いません)。
  3. 基本手当を受給していないこと
  4. 60歳時点で雇用保険に継続して、5年以上加入していること

【給付金の支給】

  1. 勤務先が2か月に1回、直近2か月分の給料をハローワークに申請し、給付金の支給要件を満す月があれば、直接ご本人の口座に入金されます。
  2. 給付金の支給対象期間は、最長で60歳から65歳までの5年間です。
  3. 給付金の支給の有無は、各月単位で判断します。残業等で賃金が60歳時点の75%以上の月は、支給されません。

【給付金の額】

  1. 60歳以後の給料が、従前の給料(従前の給料が453,900円を超える場合は、453,900円とします。)と比較して、何%低下したかによって支給率が決まります。60歳以後の給料にその支給率をかけた金額が、給付金の支給額となります(図1)。低下率が61%未満になった場合は、最大の支給率となり、60歳以後の給料の15%が給付金として受給できます。たとえば、従前の給料が40万円、60歳以後の給料が20万円の月は、給付金は3万円(20万円×15%)です。
  2. 60歳以後の給料のダウンが75%以上の月、給付金の額が1,664円以下の月は、給付金を受給できません。また、給料と給付金の合計額が340,733円(支給限度額)を超える月は、超えた部分については、給付金を受給できません。
  3. 厚生年金・共済組合に加入している人が給付金を受給すると、特別支給の老齢厚生年金・特別支給の退職共済年金は、在職老齢年金のしくみによる支給停止以外に、給付金受給による支給停止がかかります。厚生年金に未加入の場合は、年金の停止はありません。
Q2:高年齢雇用継続給付を受けると年金はどうなるのですか 具体例で教えて下さい。

相談者 5月に60歳で定年退職。直ぐに再就職(厚生年金加入)予定です。現在の給料は40万円(年額480万円)、再就職後は20万円(年額240万円)の予定です

A2:あなたの再就職時の給料の低下率は61%未満となりますので、高年齢雇用継続基本給付金の支給率は15%となり、20万円×15%=3万円/月となります。60歳から65歳未満の間、受け取ることができます。一方の年金のカットですが、あなたが60歳以後、厚生年金に加入するか否かによって変わってきます。厚生年金に加入した場合は、在職老齢年金のしくみの仕組みによる年金のカットに加えて、給付金を受給したことによって、さらに1万2,000円(20万円×6%)分の年金が支給停止となります(図2)。

また、あなたが雇用保険のみに加入する場合は、同じく3万円の給付金が受け取れます。しかし、厚生年金には加入しませんので、年金はカットされずに全額支給されます(図3)。
つまり、雇用保険に加入していれば、給付金は支給対象となりますが、厚生年金に加入している場合は、在職老齢年金のしくみによる支給停止に加えて、給付金を受給することによる年金の支給停止があるということになります。

社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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