年金コラム

2020.02.25

「れいこ先生のやさしい年金」(16)ちょっと耳寄りなこれからの年金改正

皆さまこんにちは!
例年にない暖冬のせいでしょうか、ここ数年花の数が少なかった梅が元気を取り戻しました。枝にたくさんの蕾をつけています。蕾が膨らんで、次々と開花し、馥郁たる香りが漂っています。元気な梅を身近にして、そんな些細な喜びの積み重ねが、人生を豊かにしてくれるのかなと感じています。

さて、突然ですが、現在65歳の人が90歳まで生きる確率をご存じでしょうか?
なんと男性は35%、女性は60%の人が、90歳を迎えることができます。
現状では、90歳で同窓会を開いても参加者は数名のみ・・と思われますが、将来は、男性は3割、女性は6割以上集まるにぎやかな同窓会が行われるかもしれません。そして今から35年先は、65歳の人が90歳まで生きる確率はさらに上昇し、男性は44%、女性は69%になると予想されています。このような寿命の延びに伴い、公的年金制度も長く働くことを応援する「人生100年型年金」への転換に向けた改正が行われる見通しです。

年金制度改定の検討事項

改正の項目は多岐にわたりますが、特に私達の年金生活に影響のある改正(上記【改正の主な内容】2.働く期間が長くなることによる年金の確保・充実)についてお知らせしたいと思います。

1.在職老齢年金の見直し

①退職改定の見直し
現行制度では、65歳以上の人は在職中(=厚生年金加入中)であっても老齢厚生年金の受給権を取得した後(原則65歳以後)の厚生年金の加入期間は、退職するか、70歳に到達して厚生年金の資格を喪失するまでは、年金額が改定されないことになっています。つまり、65歳以降は、保険料を支払っているにもかかわらず、資格を喪失しない限りは、年金額に反映しないまま厚生年金に加入しているということなのです。

退職改定の見直し表1

(出所)厚生労働省 社会保障審議会年金部会資料より

改正では、厚生年金の加入を続けていることによる年金額の増額効果を退職を待たずに早期に年金額に反映して、働く年金受給者の収入アップを図ることを目的に、65歳以上の人は在職中でも年金額の改定を毎年一回は行うことになる見込みです。

退職改定の見直し表2

(出所)厚生労働省 社会保障審議会年金部会資料より

ちなみに増加する年金額は、概算で次のようになリます。
退職改定の見直し表3

さらに、65歳時点で厚生年金の加入月数が480月未満の人は、480月に到達するまでの間、上記の増加額に加えて、経過的加算額として1年加入するごとに年間約2万円増加します。
(注)経過的加算額の増加については、2018.08.21「れいこ先生のやさしい年金」(10)「60歳以降働いて大きく年金額が増えるケースはこれ!!」参照

②65歳未満の在職老齢年金の「支給停止調整開始額」の引き上げ

在職老齢年金とは、老齢厚生年金の受給権者が厚生年金に加入している場合に年金が支給停止される制度です。支給停止は、「年金の月額+(給料月額+前年の賞与×1/12)」の額が、減額基準額(支給停止調整開始額)を超えると始まります。
現行の減額基準額は、65歳未満の間は28万円、65歳以上の間は47万円となっていますが、今回の改正では、65歳未満の減額基準額が28万円から47万円に引き上げられます。(65歳以上は現行のままです。)
この改正により、特別支給の老齢厚生年金の支給停止状況は、下記のようになる見込みです。

【65歳未満の老齢厚生年金が在職老齢年金の対象となっている受給権者の割合】
65歳未満の老齢厚生年金が在職老齢年金の対象となっている受給権者の割合

(出所)厚生労働省 社会保障審議会年金部会資料より

【参考】 在職老齢年金のしくみ
支給停止される年金額は、「基本月額」と「総報酬月額相当額」で決定されます。
在職老齢年金のしくみ

<現行の在職老齢年金の計算式>

● 65歳未満     改正後は、28万円47万円に変更されます。
現行の在職老齢年金の計算式の65歳未満の表

● 65歳以上
 基本月額+総報酬月額相当額≦47万円→ 全額支給
 基本月額+総報酬月額相当額>47万円→ 47万円を超えた額×1/2相額額が支給停止

(注)老齢基礎年金と経過的加算額は全額支給されます。

2. 繰上げ・繰下げ受給の改正

老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給開始は、現行では60歳から70歳までの間で、個人が希望する時期を自由に選ぶことができます。65歳より早く受け取りを開始することを「繰上げ受給」といい、1か月につき0.5%減額、最大60歳0か月まで繰上げると30%減額(0.5%×60月)となります。また、66歳以降に受け取りを開始することを「繰下げ受給」といい、1か月につき0.7%増額、最大70歳0か月まで繰下げると42%増額(0.7%×60月)となります。繰上げ請求も繰下げ請求も1か月単位で行うことができます。

今回の改正では、国民ひとりひとりの老後の生活設計に合わせた年金の受給スタイルが選択できるよう、繰上げ受給の減額率の緩和と、繰下げ受給の上限年齢を70歳から75歳に引き上げることの2点が挙げられています。

①繰上げ受給の減額率の引き下げ

繰上げ受給の減額率が、平均余命の延びに伴い、現行より引き下げられます。年金財政への中立を基本に、最新の生命表に基づき見直され、現行の1カ月当たり0.5%減額から、0.4%減額に変更される見込みです。
これにより、65歳から受給した年金累計額が繰上げ受給の年金累計額を上回る時期、いわゆる損益分岐点は、繰上げ受給請求時点から20年10か月後となります。ちなみに現行では、請求時点から16年8か月後です。

繰上げ受給率の比較
繰上げ受給率の比較の表

②繰下げ受給の上限年齢の引き上げ

現行では、70歳となっている繰下げ受給の上限年齢が、75歳に引き上げられる見込みです。引き上げにより、年金の受給開始時期は、60歳から75歳までの15年間での選択が可能になり、75歳での繰下げ受給の年金額は、184%(0.7%×120月)になります。
例えば、老齢厚生年金が月額13万円、老齢基礎年金が6万6000円の人が75歳まで繰下げると、老齢厚生年金は約24万円、老齢基礎年金は約12万円になります。老齢厚生年金と老齢基礎年金は、同時に繰下げることも、別々に繰下げることもできます。
なお、老齢厚生年金が在職老齢年金のために一部支給停止となる場合、支給される金額に相当する額だけが繰下げ受給の対象となります。13万円の老齢厚生年金が在職老齢年金で10万円支給停止の場合、繰下げることができるのは3万円のみで75歳時点での受給額は、10万円+3万円×1.84=15万5200円となります。

<繰下げ受給率の比較>
繰下げ受給率の比較の表

社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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