税金・保険コラム

2018.06.26

社会保険の適用拡大(2)(労使合意による従業員500人以下の企業の短時間労働者の社会保険加入)

皆さん、こんにちは。
お勤めしている人が加入する社会保険(健康保険と厚生年金保険)ですが、短時間労働者(パート・アルバイト)の加入対象枠が広がっています。

【平成28年10月から】
社会保険に加入中の従業員501人以上の企業は、「特定適用事業所」となり、パート・アルバイトでも週20時間以上勤務等の要件を満たすと、社会保険(健康保険と厚生年金保険)に加入することになりました。

【平成29年4月1日から】
社会保険に加入中の従業員500人以下の企業でも、労働組合か労働者代表の同意、または社会保険加入中および週20時間以上勤務等の加入要件を満たす短時間労働者の1/2以上の同意があり、事業主との合意がなされれば、「特定適用事業所」となり、パート・アルバイトでも社会保険に加入できるようになりました。

とは言え、社会保険の保険料負担というのは、給与の約30%を労使で折半することになるので、利益が上がっていない企業にとっては大変大きな負担になります。法律的には加入しなくてもいいが事業主が任意で加入することに合意して「特定適用事業所」になるというのはなかなか難しいものです。
他方、パートさんから保険に加入したいという要望が多く、儲かっていて将来的にも安定的に発展が見込まれる企業であれば、短時間勤務でも社会保険完備という謳い文句で人を集め易くなれば、社会保険加入のメリットは大きいでしょう。
ここで、社会保険の加入対象者の原則と、適用拡大により加入することになった人を再度、おさらいすることにします。

1.社会保険加入対象者の原則

以下、3つの条件全てに当てはまる人

  • (1)法人の企業または個人事業(※)で常時5人以上従業員がいるところで働いている
  • (2)以下のいずれかに該当
    ①正社員や2カ月超の雇用契約のフルタイム労働者
    ②2カ月超の雇用契約で週の勤務時間及び1か月の勤務日数が正社員の3/4以上の短時間労働者
  • (3)75歳未満
    ※個人事業のうち農林水産業、旅館・飲食・接客・理美容業等のサービス業、士業の事務所、宗教業は従業員5人以上でも強制加入となっていないため、その事業所が任意加入の手続きを取っていれば加入対象となります。

2.平成28年10月以降の適用拡大により「特定適用事業所」で働いているため社会保険に加入しなければならなくなった人

以下、6つの条件全て当てはまる人は加入対象となります。

  • (1)週の所定労働時間が20時間以上
  • (2)雇用期間が1年以上見込まれる
  • (3)賃金月額が88,000円(年収106万円)以上
  • (4)昼間学生でない
  • (5)以下のいずれかに該当
    ①従業員が501人以上いる(社会保険加入者が501人以上かどうか)
    ②従業員が500人以下だが労使合意を行った企業に勤めている
  • (6)75歳未満

なお、(3)の賃金月額88,000円は、臨時に発生する残業代、通勤手当、家族手当、皆勤手当などの最低賃金に含まれない賃金は含めないものとされています。

勤め先から突然、「社会保険に加入してもらうことになったので、マイナンバーと基礎年金番号を提出してください。」とお達しが来ることもあるかもしれません。本当は扶養の範囲内で働くつもりだったという人にとっては、「そんなはずでは…」という予期せぬことになってしまうかもしれません。ですが、自分で国民健康保険と国民年金保険料(平成30年度月額16,340円)を払っている人については、勤め先の社会保険に加入することで保障が手厚くなり保険料が安くなる人もいるので、そういう人にとっては大変有り難い話でしょう。

今後平成31年10月からは、また社会保険の加入対象が変わってくるということも検討されていますので、今後の動向には注目したいところです。

おしまいに

東京オリンピックまであと2年。中国からの旅行者だけでなく欧米や各国からの外国人旅行者も大変増えてきて観光地はどこでも混雑。一時閑散としていた飲食店や繁華街は夜もとてもにぎやかですし、ずっと停滞していた景気が良くなってきて、業種や事業所によっては人手不足が深刻になりつつあります。
働き方改革を進める中、現在フルタイムで働いている人の残業は減らしていかなかなければならず、そうなれば、パートで働いている主婦の人や家に籠っている人、引退した人でも元気で働ける人であれば活躍できる環境が整っているのではないでしょうか。AIなどの発達で人の手があまりいらなくなる仕事も増える状況ではありますが、全体的にはやっぱり人が足りません。
5年後の日本、そして世界はだいぶ変わってそうです。どんなことになるやら想像が付かないですが、この時代の流れに乗って付いていかないとと思うこの頃です。

社会保険労務士
木村 晃子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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