2008.08.20
健康保険の基礎知識 健康保険と海外旅行傷害保険(1)旅行や留学
皆さん、こんにちは。
今年平成20年夏は、北京オリンピックが開催され、大いに盛り上がっているところですね。今回は、海外旅行中(留学含む)の医療費について、健康保険よりも利用度の高い海外旅行傷害保険についてお話します。
海外旅行中に病気や怪我で病院に掛かる場合、健康保険証は日本国内の医療機関でしか通用しないので海外では使えません。保険が利く治療内容であれば健康保険自体を使うことはできるのですが、現地の病院に一旦治療費を全額支払い、日本に戻ってきてから、健康保険の「療養費支給申請書」に必要な書類を添えて払い戻しを受けるという手順になります。
海外での診療は、国によって日本よりも治療費が高額になることが多く、払い戻しは日本で治療した場合の基準で計算されるので、通常の自己負担割合を超えて治療費が掛かってしまうことや、その場で全額支払うことが困難な場合は、治療を受けられないことにもなりかねません。
そこで、海外旅行中は、海外旅行傷害保険に加入することが一般的です。海外旅行傷害保険に加入していれば、何か困ったことが起こったときのヘルプデスク等電話相談窓口を損害保険各社が設けており、現地で治療費を支払わなくて済む病院の紹介やどのようにしたらよいのか相談できるので、安心して旅行を楽しむことができます。
また、特約として現地で入院するような事態になってしまった場合に家族を呼び寄せる渡航費用の補償や、盗難にあったときの補償なども付いているので、万が一何かあったときのことを考えると、海外旅行には欠かせないものとなっています。
最近は、クレジットカードに海外旅行傷害保険が付帯されているものもあり、旅行に行くたびに加入手続きをしなくてもいいので、それで済ませてしまうかたも多いですね。 補償内容などは、各保険会社、クレジットカード会社、カードの種類などにより異なっていますので、日本を出発する前にしっかり確認しておきましょう。
注) クレジットカードに付帯する保険の補償対象は「集合から解散まで」が基本です。自宅と空港間の往復もカバーできる海外旅行傷害保険をおすすめします。
海外旅行傷害保険の支払い対象
保険に加入している人が、海外旅行中に「急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害や疾病を被ったときなど」ということになっています。旅行中とは、旅行の目的のために「住居を出発してから帰宅するまで」のことをいい、これは、国内旅行保険の場合も同様です。
なお、空港に行ってから海外旅行傷害保険の加入手続きを行った場合、自宅から空港に行く途中の間は、まだ保険に加入していないために対象外となります。海外旅行中に病気に掛かり症状が日本に帰ってきてから出たようなときは、海外旅行傷害保険の対象となります。
細かい補償内容は、保険会社や旅行会社から渡される被保険者ハンドブックや約款などで確認が必要です。
海外旅行傷害保険で全てカバーできるわけではないので、以下については健康保険やその他の保険への請求が必要になってきます。
1. 歯科治療は海外旅行傷害保険の対象外
虫歯などの歯科治療は、ごく一部の保険会社で特約や留学で一定の期間を補償対象としていますが、通常、海外旅行傷害保険の補償対象にはなっていません。旅行中、歯痛で歯科治療を受けざるを得ないときは、健康保険の出番です。
日本に戻ってきてから、払い戻し申請をすることになりますが、手続きに必要な書類は以下です。
(1)健康保険療養費支給申請書
(2)添付書類
- 現地の医師の診療内容明細書
- 現地の病院の領収明細書
- 翻訳文(自分で翻訳しても可)
なお、海外で病気や怪我で病院に掛かり健康保険を使う場合は、上記と同じ手続きになります。
2. 既往症・持病がある
人工透析や糖尿病など、既に掛かっている既往症・持病についての治療は海外旅行傷害保険の補償対象外です。但し、これを補償対象としている保険もあるので、持病のある方は、そのような保険を選択することがおすすめです。
3. 妊娠や出産、早産、流産、腰痛、むち打ち症
海外旅行傷害保険の補償対象外です。
4. 危険性が高いスポーツ(危険な運動)
スキューバダイビングやハングライダーなど危険を伴うスポーツは、海外旅行傷害保険の補償対象外となるので申込む前に確認が必要です。
備えあれば憂いなしで、何らかの海外旅行傷害保険には加入して出掛けたいものです。また、よくわからないときは、保険会社や旅行会社に聞いてみるのが一番です。
労災保険が関わってくる海外出張の場合の取り扱い等はまたの機会にご説明します。