税金・保険コラム

2013.09.04

労災保険の基礎知識(2)脳・心臓疾患の労災認定(過労死)

労災保険の基礎知識(1)うつ病等の労災認定(仕事が原因とされるとき)みなさま、こんにちは。
日々生き生きお過ごしでしょうか? 生活していれば楽しい気分のときばかりではないものですが、苦しいことや悩みごとを抱え込んだり、知らず知らずストレスを溜めてしまい、うつ病などの心の病に掛かってしまう人が今大変増えています。
心の病は、仕事上のストレスや私生活上のストレス(自分のこと・家族や親族のこと・人間関係・生活やお金のこと・事件、事故、災害に遭った等)と、そのストレスへの対応力の強さとの関係により発病に至ると考えられています。

 

世界保健機関WHOの国際疾病分類でいくと、うつ病はF3「気分(感情)障害」に分類されます。下のグラフは、近年の気分障害患者数の推移ですが、平成20年度の患者総数は何と104万人ということです。10年前と比較して2倍以上も増えていることかがわかります。

労災保険の基礎知識(1)うつ病等の労災認定(仕事が原因とされるとき)
※厚生労働省Webサイトより

そして昨今、仕事によるストレスが原因で心の病に掛かったとして、労災申請されるケースも増え、労働基準監督署が労災と認定する件数も増えています。比較すれば、私生活上の理由や要因が色々積み重なったために発病するケースが多いといえますが、仕事が起因したものとされ、労災認定されるのはどんなときなのか、厚生労働省から出ている認定基準を基にご説明します。

労災保険の基礎知識(1)うつ病等の労災認定(仕事が原因とされるとき)

  1. 精神疾患等とは、業務により精神障害を発症した事案(自殺を含む。)をいう。
  2. 請求件数は当該年度に請求されたものの合計であるが、支給決定件数は当該年度に請求されたものに限るものではない。

Ⅰ.心の病の労災認定要件

仕事が起因し心の病に掛かり労災と認定されるのは、以下の1から3全ての要件を満たした場合です。

  1. 認定基準の対象となる心の病を発病していること。
  2. 認定基準の対象となる心の病の発病前概ね6か月の間に、仕事による強い心理的負荷が認められ、同種の労働者が同じ状況にあったとしても発病するであろうと考えられること。
  3. 仕事以外の私生活上の心理的負荷や、アルコールや薬物依存、精神疾患の既往歴が要因で発病したとは認められないこと。

認定基準の対象となる心の病とは、仕事に起因して発病する可能性のある「うつ病等の気分障害」や「神経性障害」、「ストレス関連障害」などになります。

Ⅱ.仕事による強い心理的負荷とは?

以下の1、2の出来事があった場合またはこれ以外の出来事で負荷が強または中が複数あるといった場合に、仕事による強い心理的負荷が掛かったと認めることとなります。

  1. 心理的負荷が極度のもの
    • 仕事中に生死にかかわる業務上の病気やけがをした
    • 仕事に関連して他人を死亡させ、または生死にかかわる重大なけがを負わせた
    • 強姦や本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクハラを職場等で受けた
    • その他、上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの
  2. 極度の長時間労働
    • 発病直前の1か月に概ね160時間を超えるような労働密度が高い時間外労働を行った
    • 1か月に満たない期間に上記に準ずる同程度の時間外労働を行った

1、2以外で負荷の強度、組合せにより仕事が理由とされることがあるもの

  出来事の類型 具体的出来事 負荷
1 仕事中の事故や災害の体験 重度の病気やけがをした 強
2 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした 中
3 仕事の失敗、過重な責任の発生等 業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起こした 強
4 会社の経営に影響する重大な仕事上のミスをした 強
5 会社で起きた事故、事件について責任を問われた 中
6 自分の関係する仕事で多額の損失等が生じた 中
7 業務に関連し、違法行為を強要された 中
8 達成困難なノルマが課された 中
9 ノルマが達成できずペナルティーを課された 中
10 新規事業や会社の建て直し等、評価も責任も重い担当になった 中
11 顧客や取引先から無理な注文を受けた 中
12 顧客や取引先からクレームを受けた 中
13 仕事の量・質 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった 中
14 1か月に80時間以上の時間外労働を行った 中
15 2週間以上にわたって連続勤務を行った 中
16 役割・地位の変化等 退職を強要された 強
17 配置転換があった 中
18 転勤をした 中
19 複数名で担当していた業務を一人で担当するようになった 中
20 非正規社員であるとの理由等により仕事上の差別、不利益取り扱いを受けた 中
21 対人関係 ひどい嫌がらせ、いじめまたは暴行を受けた 強
22 上司とのトラブルがあった 中
23 同僚とのトラブルがあった 中
24 部下とのトラブルがあった 中
25 セクハラ セクシュアルハラスメントを受けた 中

※負荷は小中強とあり、小は省略しています。

心の病を発生させない為には

仕事を原因とする心の病を発生させない為には、長時間労働を抑制し、強い心理的負荷の掛かることをできる限り会社の中で抑える必要があるといえるでしょう。 心の病は一度掛かるとなかなか治らないという特性もありますので、発病しないよう、個人個人がストレスを発散させる方法を見つけたり、自分を追い込まず、いざというときに相談できる人を周りに作るといった環境作りも大切ですね。

社会保険労務士
木村 晃子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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