税金・保険コラム

2012.09.04

労災保険の基礎知識(1)うつ病等の労災認定(仕事が原因とされるとき)

労災保険の基礎知識(2)脳・心臓疾患の労災認定(過労死)

みなさま、こんにちは。
アベノミクスや円安の影響を受け、景気が何となく上向いてきた昨今。長きに渡る不況からやっと日本が抜け出せるのだとすれば、大変に喜ばしいことですよね。しかし、その一方で仕事が急に忙しくなってきた方も多いのではないでしょうか。こんなときに気を付けたいのが、長時間労働や仕事によるストレスが原因で、脳又は心臓に異常をきたし、最悪の場合、死に至る過労死。残される家族がいるならば、あまりにも悲しい出来事です。

過労死の原因となる脳・心臓疾患等の疾病が、業務上の事由により生じたのかどうかは、私傷病との境が難しいこともあり、簡単に認定される訳ではありません。業務が原因となって脳・心臓疾患が発生したと認定される基準について、今回はまとめてみたいと思います。

【脳・心臓疾患の労災認定基準】

業務による明らかな過重負荷がかかって、脳や心臓疾患が発症した原因となったとされることが要件となります。

1.具体的な病名

◆脳・心臓疾患の病名として、以下の疾病が対象とされます

脳血管疾患 虚血性心疾患等
・脳内出血(脳出血) ・心筋梗塞
・くも膜下出血 ・狭心症
・脳梗塞 ・心停止(心臓性突然死)
・高血圧性脳症 ・解離性大動脈瘤

2.労災認定される要件

◆仕事中において、以下の(1)(2)(3)のいずれかに該当することとされます。

(1)異常な出来事があった

期間:発症直前から前日
内容:以下①~③のいずれかの状況が業務上で発生した。
①精神的負荷(極度の緊張、興奮、恐怖、驚愕等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的又は予測困難な異常事態)
②身体的負荷(緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常な事態)
③作業環境の変化(急激で著しい作業環境の変化)

(2)短期間の過重業務

期間:発症前概ね1週間
内容:日常業務に比較して、特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせたと認められる業務を行っていた。

具体的な負担要因
①労働時間
②不規則な勤務
③拘束時間の長い勤務
④出張の多い業務
⑤交替制勤務・深夜勤務
⑥作業環境(温度環境・騒音・時差)
⑦精神的緊張を伴う業務

なお、特に過重な業務に従事したかの判断は、同種の業務を行っている同僚労働者にとっても重かったかどうかが重視されます。対象者と同じような労働条件で仕事をしていた人がいて、その人だけが病気になった場合、認定されないケースがあります。

(3)長期間の過重業務

期間:発症前概ね6ヵ月間
内容:長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務を行っていた。
   ※(2)短期間の過重業務の具体的な負担要因と同様

【評価基準】
①発症前1ヵ月ないし6ヵ月に渡って、1ヵ月あたり概ね45時間を超える時間外労働を毎月していない場合は業務と発症との関連は弱いと評価
②概ね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症の関連は強まると評価
③発症前1ヵ月間に概ね100時間又は発症前にわたって、もしくは1ヵ月あたり概ね80時間を超える時間外労働が2ヵ月以上6ヵ月間あった場合は、業務と発症の関連は高いと評価
そして、(2)と同様、同じ労働条件で働く同僚にとっても業務内容が重かったかどうかが判断基準となります。

労働基準監督署は・・・ 代表取締役等、経営だけを担う役員を除いて、すべての労働者の労働時間の把握をするように企業に指導を行っています。何らかの形で時間管理を行っていないと、このような事態が発生したところで、業務が原因となるのかどうかの判断が困難となってしまいます。 昨今、長時間労働等が原因となりうつ病等の精神疾患にかかる人も非常に増えおり、社会問題化しつつあることから必要な取り組みと認識しなければなりません。

 

【脳・心臓疾患等の疾病を業務上で発生させないためには・・・】

 

◆企業は…

恒常的な長時間労働をさせないように、できる限り配慮することが必要でしょう。
会社が命令した訳ではなく、本人が残業を自発的に行う状況というのは、よくあることですが、これを黙認したまま何か問題が発生した場合、会社に対して安全配慮義務違反が問われ、損害賠償請求されるような事態にも発展しかねません。
また、業務上突発的な何かが発生した場合は、協力体制を整えてその業務にあたる人に過大な負荷が掛からないように取り組むといったことも必要です。
なお、従業員が50人以上の事業場では、従業員が健康的に業務に取り組めるよう、衛生管理者等の選任や衛生委員会等を月1回開催することが必要ですが、配慮すべき状況などを見極めて危険は取り除くように委員会等をきちんと機能させる必要があるでしょう。
 

◆本人(働く人)は…

会社が無理なことをさせるという状況があったとしたら大変に不幸なことですが、何といってもその業務を行うのは働く人=本人ですよね。自分で仕事をし過ぎて無理をしていたり、具合が悪いことに気が付いたら、自分自身で歯止めを利かせることが必要でしょう。自分だけでは無理だと感じたら、会社や人事に業務改善等の提案をしたり、周りに助けを求めるなど、自分だけで仕事を抱え込まないようにしたほうがいいです。
また、何か趣味を持ったり、仕事以外のことに時間を使うことを意識的に行い、仕事だけに没頭してしまわない環境を作っておかないと、仕事以外何もできない「ワーカホリック(仕事中毒)」になったり、心が病んでしまうことがあります。

ある心の病のカウンセラーの方は、患者に対し、「なぜ、どうしてそうなったのか?」深く深く患者に自問自答させることで、心が病んでしまった原因を突き止めて、問題を取り除いていくという作業をするということを聞いたことがあります。
病気になるほど仕事をしてしまう。そういう極限状態に陥るのは、誰のせいでもない、本人がそれを選択してしまっていることもあるので、一生懸命仕事をするあまりに真面目すぎる性格の人こそ、自分のことをよく認識する必要があるのかもしれません。

おしまいに

私が昔お勤めをしていた頃、直属の上司が「疲れた。疲れた。疲労困憊…」と言っていたことを思い出します。(その上司が過労死した訳でも、病気になった訳でもありませんが)
今考えると、その上司は社内で異動があり、前に担当していた部署と一変し、大きなフロアーに上役が背中越しに何人もいるという職場環境に変化したことが原因だったかもしれません。
上司は当時ワープロで資料などを作る頭脳労働をされていて、何がどれだけ大変だったのかよくわかりませんでしたが、「疲れた」と、口に出して言っていただけまだよかったのかもしれません。その1年後には、また異動がありましたので…。

職場で、声、顔色、表情、動作、目等の体のどこかがSOSを発信している部下、同僚、上司がいたら、やはり「大丈夫?無理しないほうがいいよ。」「もう帰りなさい。間に合わないなら手伝うよ。」など、回りの人の手助けや気遣いが疾病の発症や死を食い止めることになると思うのです。
家族の人もそうですが、周りにそのような危険な状況に陥っている人がいたら、「大丈夫?」の一言をぜひ掛けていただきたいものです。

社会保険労務士
木村 晃子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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