税金・保険コラム

2008.06.09

労災保険の基礎知識(3)仕事中の自動車事故(事故を起こしてしまった場合)

皆さん、こんにちは。
6月1日から、自動車後部座席のシートベルトの着用が義務付けられましたね。

警察庁の発表によると、平成19年中に発生した全国の交通事故の発生件数は、832,454件で、前年比54,410件(-6.1%)減少。このうち、死者数は5,744人(事故発生から24時間以内の死亡)で、7年連続で減少、事故発生から30日以内死者数は、6,639人。そして、負傷者数は、1,034,445人で、前年比63,754人(-5.8%)減少しています。

この度の、後部座席シートベルト着用義務化で、更なる死傷者数の減少が望まれるところです。

一方、自動車台数は、平成20年2月末時点のもので、79,431,703台となっています。年々交通事故は減っているものの、年間で約100台に1台の割合で事故が起こっているということになります。

では、交通事故の事故原因は、どんなものが多いのでしょうか?

No 法令違反項目 事故件数 構成比
1 安全不確認 252,607 32.1%
2 脇見運転 129,343 16.4%
3 動静不注視 88,409 11.2%
4 運転操作 52,385 6.7%
5 漫然運転(ぼんやり運転) 52,256 6.7%

※警察庁交通局の平成19年中交通事故発生状況より出典

上記は、平成19年中の歩行者・自転車を除いた原付以上運転者による交通事故件数787,139件のうちの事故原因ベスト5ですが、これらは全て「安全運転義務違反」で安全運転義務違反が交通事故全体の75.4%を占めています。

更に、事故原因を死亡事故が多い順に並べるとどうなのでしょう?調査結果は、以下のとおりです。5位の最高速度違反による事故件数から算出した死亡事故率は10.92%で、非常に高い割合となっており、車道に速度測定器やカメラがたくさん設置されているのも、納得してしまうところです。

No 法令違反項目 事故件数 死亡事故 死亡事故率
1 漫然運転 52,256 807 1.54
2 脇見運転 129,343 736 0.57
3 安全不確認 252,607 544 0.22
4 運転操作 52,385 513 0.98
5 最高速度 4,112 449 10.92

※警察庁交通局の平成19年中交通事故発生状況より出典

例え、急いでいるとしても、スピード違反、信号無視、無理な追越などの危険運転や、運転中の携帯電話の使用などは重大事故につながります。絶対にやめましょう。

また、登下校途中の児童や幼児、道路脇を走っている自転車は、突然車道に飛び出さないとも限りません。このような状況では、速度を十分落とし、間隔を空けて追い越すといった配慮で、思わぬ事故を避けたいものです。

さて、前置きが長くなりましたが、今回の内容は、働く人が仕事中や通勤途中に交通事故を起こしてしまい、自分も負傷してしまったときの、対応手順、治療費等についてのご説明です。

1. 交通事故を起こしてしまったときの対応手順

前回(4月17日掲載分)とほぼ同様なので重複しますが、何よりも負傷者の手当が最優先です。自分が負傷してしまったり動ける状態でない場合は、周りの人に助けを求めましょう。

  1. 安全な場所へ移動
  2. 救急車119番を呼ぶ
  3. 後続車へ事故を知らせるため、発炎筒を焚く・非常停止板を置く、トランクを開けるなどして、二次被害を防止する
  4. 警察110番を呼ぶ
  5. 会社へ連絡する
  6. 相手方がいるときは双方確認をする
    • 相手方の氏名、住所、勤務先(学校名)、連絡先、(相手方が車の場合は、車両ナンバー等)
  7. 目撃者の情報確保(氏名、住所、連絡先等)
  8. 事故の経過を覚えておき、可能であれば現場の写真を撮る
  9. 保険会社への連絡
    • 通勤途中、自己車両で事故を起こしたときは、自分が加入している自動車保険(以下、「任意保険」とします)の保険会社へ連絡
    • 仕事中、会社車両を運転中に事故を起こしたときは、会社から保険会社へ連絡するか会社の指示により自分で保険会社に連絡
  10. 保険会社等への請求のため交通事故証明書をとる
    (最寄りの交通事故安全センター事務所へ申請。インターネット申請も可能です。)

2. 相手方を負傷させてしまった場合の補償はどうすればいい?

  1. 通勤途中の事故
    自分が加入している自賠責保険と任意保険で相手方への補償を行います。誠意をもって対応することが必要です。
  2. 仕事中の事故
    会社車両で事故を起こした場合は、その会社車両が加入する自賠責保険と任意保険を使うことになります。
    なお、1.、2.とも、保険会社は、相手方が負った損害額を限度として保険金を支払います。損害額が加入している保険の補償上限額を超えるような場合、その上限額が限度です。

3. 自分の怪我の治療費はどうなるの?

相手方が車両なら、過失割合によって相手方車両の自賠責保険や任意保険を使えることもあります。しかし、自分が加害者であることが明白な場合や自損事故の場合、自分の治療費は、通勤途中と仕事中、どちらの場合でも、勤務している会社の労働者災害補償保険(労災保険)を通常は使います。もしくは、その車両に付帯された任意保険の「搭乗者傷害保険」や「人身傷害保険」で補償を受けます。

仕事中の事故の場合は、会社の人事総務のご担当者のかたに相談してみてください。

なお、会社の社長や役員で、労働者でない人は、労災保険の特別加入制度を利用している場合を除き、労災保険は原則として使えません。健康保険か自動車の任意保険を使うことになります。

4. 労災保険を使うと会社の保険料が上がってしまう?

通勤途中の事故で労災保険を使っても、会社が支払う労災保険料が上がることはありません。また、仕事中の事故でも、休業補償給付以上の給付を多額に受けるような大怪我をし、かつ会社の労災保険料がメリット制により安くなっている場合を除いては、労災保険料が上がることはありません。

5. 任意の自動車保険の重要性

もし、重大な自動車事故を起こしてしまったら、自賠責保険の保険金だけでは到底足りず、任意保険の補償がなければ自らの責任で賠償に応じなければなりせん。場合によっては、生涯を被害者のために捧げることにもなりかねません。

自動車の任意保険の加入率は約85%だそうで、100台のうち15台は保険に入っていない計算になります。更に、小型バイクや原付には車検がないため、自賠責保険が切れていることが多いのだそうです。念のため、任意保険の期限が切れていないか、家族の車の任意保険やバイクの保険もどうなっているか確認してみてください。

なお、通勤に使用する車や会社の車両には、以下の補償以上の任意保険に加入することをおすすめします。

  • 対人賠償保険 無制限
  • 対物賠償保険 無制限
  • 搭乗者傷害保険 1,000万円以上
  • 人身傷害保険 5,000万円以上

おわりに……
通勤や仕事上、車を使う人は、常に健康に留意し、過労を防止するよう心掛けることも必要です。また、休み明けには事故が多いという統計結果が出ていますので、1週間の始まりは、気を引き締めたいものですね。

参考
社会保険労務士
小野 路子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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